アイドルにバレエ挑戦...たどり着いたプロレス 中野たむが目指す「電車の中吊り広告」

アイドルにバレエ挑戦...たどり着いたプロレス 中野たむが目指す「電車の中吊り広告」

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  • 更新日:2022/05/14
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コズエンでのグラビアが目標と語った中野たむ【写真:新井宏】

リングで向き合って見えるもの「試合を通じて人生があらわになる」

スターダムの中野たむが電車の中吊り広告に登場。団体の親会社ブシロードのトレーディングカードゲームのPRで、メインキャラクターに抜てきされたのだ。中野は先に自伝「白の聖典」(彩図社)を出版。ブシロード体制になったときに電車の中で広告を見つけたときの驚きを記述している。

「当時は、ブシロードが電車に広告を出すくらいすごい会社だなんてまったく知らなかったです。広告が偶然目に入ったとき、スターダムがブシロードになるんだったら、もしかしたらスターダムも山手線に広告が出ちゃったりするのかな? とちょっと考えましたね。でもまさか、そんなわけないよなって思いながら、電車を降りました」

ところが2年半後、その「まさか」が現実となる。しかも中野の“ソロ”ではないか。

「私、中野たむがババ―ンと出てます(笑)。これって出る前に一切連絡とかなくて、友人から『たむちゃんが電車にいたよ!』みたいな感じで写真が送られてきたんですよ。もうビックリして。それを見て初めて知ったんです。いつの間にか撮影された写真が使われてて、会社からも連絡はなく。そういうもんなんですかね(苦笑)」

とはいえ、これは夢がかなった瞬間でもあった。まさか自分が車内広告で多くの人の目に留まろうとは思いもしなかった。

「出ちゃった、どうしよう、世界中の人にたむちゃんが見つかっちゃう(笑)。正直、最近は夢にも思わなかったことが現実になるんだなっていうことの連続です」

中野は幼いころから人前でパフォーマンスする仕事に憧れを抱いていた。バレエ、ミュージカルダンサー、アイドル。しかし、どれも陽の目を見ず、屈辱を味わうことの方が圧倒的に多かったという。そしてさまざまな偶然が重なり、たどり着いたプロレス。レスラーデビューは2016年7月18日、アクトレスガールズでの安納サオリ戦。ここで中野は、いままでの道がすべてプロレスにつながっていたと実感する。

「全然歯が立たなくて太刀打ちできなくて、苦しくて、逆エビ固めを決められて、ホントに苦しくて何度もギブアップしそうになる。それでも藁にもすがる思いでロープをつかむ。でもまたやられてしまう。必死な思いで立ち上がるんだけど、またやられる。苦しい。でもギブアップしたくない、続けたい、勝ちたい。なんかこれって、諦めたくなくて立ち上がり続けてきた、いままでの私の人生そのものだなって感じたんです。最後の最後でつかんだプロレス。そこで初めて、プロレスって人生なのかなと思いました」

自伝「白の聖典」には彼女のプロレス観が記されている。デビュー戦の気づきから闘っていくうちに対戦相手の人生も見えてきた。

「試合を通じて人生があらわになる。選手の経験してきた挫折、葛藤、未来への覚悟が如実に反映されますよね」

必ずしもレスラー志望者同士とは限らない。本来なら出会うはずのないような境遇の人たちがリングで向き合い、それぞれの人生をぶつけ合って闘う。それがまた、プロレスでもある。

「対戦相手の人生もリングで試合をしていくことで垣間見えるんですよね。たとえば、この人は生真面目な闘い方から、すっごい生真面目な人生を送ってきたんだろうなと闘ってて感じたり。いい加減な人生送ってきた人はいい加減なプロレスします、ホントに。それでも強い人はもちろんいるけど。また、この選手とは手が合う合わないというのも、その人の人生と共鳴しますね。ジュリアなんかはまったく違う人生を歩んできたけど、紆余曲折の人生をお互いに歩んできて、まったく違う人生が共鳴するというんですかね、まったく知らなかった人生をリングで知れるのもプロレスですね」

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リング上でポーズを決める中野たむ【写真提供:スターダム】

「コズエンで名実ともに一番をめざしたい」

そんな思いを確信したのは、星輝ありさ(引退)と闘うようになってからだという。スターダム旗揚げメンバーの星輝は12年6月に引退も、6年半のブランクを経て復帰、パートナーに同じく1期生の岩谷麻優を選んだ。これが当時、岩谷と組んでいた中野のジェラシーを駆り立てた。星輝とは感情爆発の対戦を経て、タッグも組むようになった。

「星輝とはお互いの人生を背負って闘いたいと思ったんですよね。コイツの人生に中野たむっていう選手を刻みつけたいってホントに思った相手でした」

そこから生まれたワンダー・オブ・スターダム王座、通称・白いベルトへの執念。星輝引退後は彼女の思いも背負ってベルトへの執着心をあらわにした。やがてスターダムに参戦したジュリアにジェラシーを抱きながら、ベルトを懸けた3度目のシングルで白いベルト初戴冠。21年3月3日、スターダム初進出の日本武道館、そのメインでジュリアの髪を切り、勝利を飾ったのが中野だった。

以来、中野は白いベルトを「呪いのベルト」と呼び、挑戦者との人間ドラマを紡いできた。なつぽいとはアクトレスガールズ退団時の因縁、上谷沙弥とはアイドル志望者をプロレスに引き込んでしまったという罪悪感。岩谷とは「アイコンの座」をめぐる争い。また、中野率いるCOSMIC ANGELS(コズミックエンジェルズ=コズエン)のウナギ・サヤカ、白川未奈とも同門ならではの感情ドラマがあった。

これらの闘いを通じ、中野は白いベルトを独自の色に染め上げた。最高峰とされるワールド・オブ・スターダム王座、いわゆる赤いベルトとの差別化を確立させたのだ。現在、白いベルトは“全力王者”上谷に引き継がれている。中野が抱いた罪悪感は完全に払拭されたと言っていい。これもまた、2人がたどり着いたプロレスによって映し出された人間ドラマだった。

4・29大田区では、突如、COLOR’S(カラーズ)の4人(SAKI、清水ひかり、櫻井裕子、網倉理奈)が登場、コズエンとの対戦をアピールした。カラーズはアクトレスガールズのブランドがプロレス活動停止とともに独立した形で、団体は中野の古巣でもある。とくに清水は、デビュー当初の中野が大ベテラン伊藤薫にやられる姿を見てレスラーになろうと決意した。立ち上がり向かっていく姿勢に感銘を受けたのだ(「週末は女子プロレス♯44参照」)。

「それはうれしいですね。ひかりもダンスやボーカルグループで挫折を繰り返してきた人生だと思うから、私の人生に共感してくれたのかなとは思います。最近のことはまったく知らないけど、ひかりとは正面から向き合いたいですね。ただ、カラーズって(ジュリアとの因縁からスターダムにやってきた)プロミネンスとは違って、すごく明るいユニットですよね。『(軽いノリで)対戦させてくださぁ~い』って。そこは正直、ちょっと物足りないかな。だってここは闘う場所だし、スターダムって全員が敵だから、浮ついてたらすぐにつぶれちゃう。カラーズの4人には覚悟をしっかり見せてほしいなってところがあります」

過去のいきさつがあるからこそ、カラーズとのドラマにも期待を寄せる中野。SAKIらとの対戦をいい意味で利用し、コズエンをより発展させていくつもりだ。

「コズエンで名実ともに一番をめざしたいです。たとえばメンバー全員がベルトホルダーになる。そこからコズエンにしかできないことって何かと考えたときに、ベルトホルダー全員でグラビアしたいって思いがあります。(全員のベルト姿で)写真集を出して、ラッピングカー出して、電車に中吊り広告も出したい(笑)。個人的には白いベルトという一番の夢を達成したけど、まだ取れてない、どうしても欲しかったベルトがあるんですよ。赤いベルトももちろん取りたいけど、これは赤ではない、欲しかったベルト。狙っていきたいと思ってます。諦めてまった夢を回収するのが中野たむですから!」

新井宏/Hiroshi Arai

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