
近い将来、ロボットのサッカー選手が世界を熱狂させるかもしれない。
ナイキのシューズがよく似合うそのサッカー選手は「アルテミス(ARTEMIS)」という。カリフォルニア工科大学ロサンゼルス校のエンジニアによって開発された世界最速の汎用人型ロボットで、不安定な路面でも走れる優れたバランス感覚が自慢だ。
そんなアルテミスは、その抜群の身体能力を見せつけるべく、今年7月にフランスのボルドーで開催される世界最大のロボット・AIコンペ「2023 RoboCup」のサッカー部門に出場するのである。
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世界最速の人型ロボット「アルテミス」
アルテミス(ARTEMIS)の名は、「Advanced Robotic Technology for Enhanced Mobility and Improved Stability」の頭文字をとったもの。
身長142センチ、体重38.5キロと人間に近いボディサイズながら、荒れた不安定な路面で歩くだけでなく、走ったりジャンプしたりすることができる。
非常に優れたバランス感覚があり、どんと押されたりしても倒れたりはしない。
研究室での試験では、秒速2.1メートルの速さで歩くことに成功。これは二足歩行人型ロボット、いわゆるヒューマノイドとしては、現時点での世界最速記録だ。
ARTEMIS: Advanced Robotic Technology for Enhanced Mobility and Improved Stability
まるで筋肉のようなエネルギーを動きに変える装置
アルテミスの大きな特徴は、アクチュエーター(エネルギーを動きに変える装置)がまるで生物の筋肉のように動くことだ。
一般的なロボットのアクチュエーターが硬直した位置制御しかできないのに対し、アルテミスのものはバネのように力を制御することができる。
アルテミスを開発したロボット工学・メカニズム研究所(RoMeLa)の所長であるデニス・ホン教授によれば、これこそがデコボコとした路面でも優れたバランスを発揮する秘訣なのだそう。
私たちが走れば、両足が地面から浮いている瞬間もある。アルテミスはそれと同じことやってのける「世界で初めてのロボット」なのだと、同教授はプレスリリースで説明する。
アルテミスのもう1つ凄いところは、アクチュエーターが油圧式ではなく、電動制御であることだ。そのおかげで動作時のノイズが少なく、油圧の欠点である液もれに悩まされることもない。
アルテミスが不整路面にうまく対応できるのは、センサーとアクチュエーターで構成されたシステムのおかげだ。
両足には専用設計の力覚センサーが内蔵されており、これが移動中のバランス崩れを防ぐ。また頭部の位置確認装置とカメラで、周囲の状況を把握することもできる。

いよいよ強化訓練が始まった!
RoboCupでの試合に備えるため、これまでアルテミスは大学キャンパス内を散歩してテストを重ねてきた。
だが今後は、ランニングやサッカーのテストも始まるとのこと。

その際には、ただの移動性能だけでなく、転んでしまった後で立ち上がる能力や、物を運ぶ能力などもチェックされることになる。

ちなみに20年以上ヒト型ロボットの研究開発を続けてきたロボット工学・メカニズム研究所は、RoboCupで5度の優勝経験がある強豪なのだとか。
今、研究チームは6度目の優勝トロフィーをその手にすべく、アルテミスの調整に余念がない。
References:ARTEMIS – UCLA’s most advanced humanoid robot – gets ready for action | UCLA/ written by hiroching / edited by /parumo
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