性教育ドラマ『17.3』に撃ち抜かれる。アセクシャルって何?新時代の性常識に取り残されるな

性教育ドラマ『17.3』に撃ち抜かれる。アセクシャルって何?新時代の性常識に取り残されるな

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  • 更新日:2020/10/19
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「人と違うのが変? 変って誰が決めるの?」新時代の性教育ドラマ『17.3 about a sex』が攻めている、今なら配信中の7話で追いつける。ドラマを愛するライター大山くまおの緊急報告。

「17.3」は「初体験」の世界平均年齢

今、日本での性教育のあり方が問われている。
もともと日本の小中学校では性行為や避妊はほとんど扱われていない。「性教育はセックスについて教えるもの」という誤解がはびこり、性教育そのものを否定する人たちもいる。一方で、性に関する情報は氾濫し、望まない妊娠や性被害、性暴力の問題はあとを絶たない。足立区議の発言に代表されるような性的マイノリティに対する差別や偏見も根強い。

そんななか、注目を集めているのがAbemaTVで配信中のオリジナルドラマ『17.3 about a sex』だ。タイトルの「17.3」は「初体験」の世界平均年齢のこと。ありていに言ってしまえば、女子高生たちを主役にした「性教育ドラマ」である。

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世界平均年齢「17.3」を発見して驚く女子高生たち(1話)『17.3 about a sex』(C)AbemaTV

とはいえ、性教育の名をかたってセクシャルな話題や場面で目を惹こうとする内容ではなく、真正面から現在の若者が抱える性の問題に取り組んでいる。それでいて堅苦しさはなく、エンタテインメントとしてしっかり楽しめるのがポイント。

なんでそんなに男子に合わせるの?

主人公の女子高生3人組を演じるのは、雑誌『Seventeen』専属モデルで女優の永瀬莉子、田鍋梨々花、秋田汐梨。彼女たちの学生生活を通じて、恋愛とセックスに揺れるリアルな心情を描く。データに基づく正しい知識とフラットな視線、ポジティブな態度が特徴だ。

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左から、原紬(田鍋梨々花)、皆川祐奈(秋田汐梨)、清野咲良(永瀬莉子)(3話)『17.3 about a sex』(C)AbemaTV

第1話では、ピュアな主人公の清野咲良(永瀬)が、初体験を焦った挙げ句、同級生の恋人に誘われて部屋を訪れるが、ひたすら身体を求めてくる男への拒否感で部屋から飛び出してしまう。すると翌日、学校で身体についての噂を広められ、さらに男が仲間たちと「ヤレるかヤレないか」を賭けていたことが露見する。最低だ。

悔しさで涙を流す咲良に「あいつらバカだよね」と声をかけるのが生物部の朝日悠(水沢林太郎)。「あいつらのセックスの知識ってAVからしか来てないし、あの中に出てくるのって男が都合よく作り上げた女性像に過ぎないからね」とさらっと言ってのける。「でも、女子も、なんでそんなに男子に合わせるの?」という問いかけも忘れない。

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初体験を意識して真剣に下着を選ぶ咲良(1話)『17.3 about a sex』(C)AbemaTV

女子とのセックスを賭けの対象にして喜んでいる男子たちが古い男の価値観に縛られているのに対して、朝日の発言はとても今っぽい。ホモソーシャルな笑いに対する「お笑い第七世代」のような感覚かも。咲良は初体験を焦っていた自分を恥じ、性について学んでいこうと決心したところで第1話は終わる。

新ドラマ【17.3 about a sex1話フル】

第2話ではアセクシャル(無性愛)の原紬(田鍋)にスポットが当たる。幼なじみから告白されてデートするが、帰り道にキスされると嘔吐してしまう紬。同級生たちと異なり、恋愛にもセックスにも興味が持てない自分をつまらない人間だと悩む紬だったが、ジェンダー学に詳しい生物学教師・城山奈緒(ソニン)の「人と違うのが変? 変って誰が決めるの?」というアドバイスで心を落ち着かせる。

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幼なじみにキスされて、紬は違和感を覚える(2話)『17.3 about a sex』(C)AbemaTV

パンセクシャルって何?

第3話では、運命の人を求めて男性経験を繰り返す皆川祐奈(秋田汐梨)が、マッチングアプリで知り合った男とセックスして性感染症にかかってしまうというエピソード。婦人科医(安藤聖)の助言もあり、新しい恋人にふたりで性病検査を受けようと明るく提案する。

どれもお説教臭くなく、何より主人公の3人がお互いに支え合いながら、性について学んでいく姿が爽快だ。第3話に顕著だが、悩み、迷う女子たちを上から目線で「教育」しようとせず、彼女たちの成長に寄り添い、肯定してあげるドラマの作りが心地よい。第4話では母親(藤原紀香)のバイブを見つけて嫌悪感を抱く咲良が女性のマスタベーションについて学び、第5話では生物部の悠がインスタライブを使って堂々とパンセクシャル(全性愛)であることを公言。「僕はただ人として惹かれた人を好きになる、それだけ」という悠のセリフはパンセクシャルの考え方として知られている。

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母娘が性の問題を乗り越えて和解する(4話)『17.3 about a sex』(C)AbemaTV

女として生きるにはこの社会は地獄

エピソードが進むにつれ、取り上げるテーマは核心に近づいていく。第7話では、スピーチコンテストに臨んだ紬が、「私にとって、この社会は地獄のような場所です。とりわけ、私のような人間が女として生きるには」と声を上げる。

「痴漢大国」と呼ばれ、男性のみならず女性もそれを当然のように受け入れている地獄。女性はいつか結婚して子供を持たなければいけないという押しつけも地獄だし、性的マイノリティに対する差別的な視線がはびこっているのも地獄。ただ、紬を助け、理解する人が少なからずいるのも事実であり、そこに希望を見出すラストだった。

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アセクシャルでもパンセクシャルでもヘテロセクシャルでも理解し合えば世界は広がる(5話)『17.3 about a sex』(C)AbemaTV

10月22日配信の第8話では、妊娠すると女子生徒だけが退学しなければいけない学校の理不尽極まりないルールに切り込む。予告では「避妊ぐらいしろよ」という女性へのアンフェアな言葉も取り上げられていた。

脚本は劇団「贅沢貧乏」主宰の山田由梨。日常にある小さな違和感を拾って作品にすることが多いという。過去のインタビューでは〈演劇は考えたい問題を、自分なりに考えるためのツール〉とも語っている(『Girl’s PARTY!』2019年11月22日)。演出は『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』などの金井紘。数多くのアーティストのMVの撮影を行ってきたナカムラユーキによる映像が、画面全体に奥行きと瑞々しさを与えている。

なお、制作サイドによると、出演キャストのオファーや撮影場所の許可申請などの企画段階から作品宣伝の際の表現に至るまで、関係各所からNGが続出。日本で性教育がタブー視されている現状を常に感じていたという。

そもそも性教育とはセックスの仕方を教えるものではない。早期からの性教育を行うフランスでは、「成人としての人生に備え、平等・寛容・自他の尊重という価値観の基盤を養うのが、性に関する教育である」と定義し、人生におけるリスク削減と予防(若年での望まない妊娠、強制結婚、性感染症など)、性犯罪・性差別・同性愛差別言動への対策、男女平等の促進という3つの観点から性教育は国家政策として取り組まれている(『プレジデントオンライン』2019年7月2日)。『17.3 about a sex』の内容もこれらのことを間違いなく参照しているだろう。

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祐奈のおかしな様子に「妊娠?」と心配する咲良(2話)『17.3 about a sex』(C)AbemaTV

日本でも来年4月より「生命(いのち)の安全教育」と題された授業を小中学校などで段階的に導入していく予定になっており、現在も議論のまっただ中だという。しかし、性の問題は10代だけの問題ではない。今、改めて『17.3 about a sex』は性教育の当事者ならずとも必見のドラマだと思う。

大山くまお

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