『FORTNITE』の「初心者のフリ問題」で怒った母と中学生の息子の言い分

『FORTNITE』の「初心者のフリ問題」で怒った母と中学生の息子の言い分

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/01/13
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息子も大ハマりしているゲーム『FORTNITE』

小中学生男子に大人気のゲームといえば『FORTNITE』だ。

2017年に正式公開されるやいなや、世界中で大ヒット。2020年5月には、登録ユーザーが3億5000万人を突破し「eスポーツ」の代表格となっているオンラインゲームだ。優勝賞金3000万ドル(約31億2400万円!)という世界大会が行われたり、米津玄師や人気ラッパーのトラヴィス・スコットなど、若者に人気の有名アーティストがFORTNITE内でバーチャルライブを開催するなど話題性も盛りだくさん。

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2020年4月末に開催されたトラヴィス・スコットのAstronomicalイベント。このときゲームに接続したプレイヤー数は1230万人以上にだったという。photo/Getty Images

パソコン、スマホ、PS4、Switchなどいろいろな端末でプレイでき、バトルだけではなく、かっこいいコスチュームやエモート(ダンス:BTSの『Dynamite』の振り付けなどもある)で自己表現できるのも、多くのプレイヤーの心を惹きつける。またバトルロイヤル以外にも、仲間でチームを組んで参戦したり、相手を選んで「タイマン勝負」ができるほか、MAPやルールを自由に設定できたり、鬼ごっこやかくれんぼ、謎解きなどが楽しめるモードもある。

我が家の中2の息子もご多分に漏れず、小6のころからFORTNITEを始め、現在もドはまり中だ。一応、15歳以上対象のゲームではあるものの、それ以下の年齢の子供もたくさん登録している。

今回、本腰を入れて調べてみるとバトル系ゲームが苦手な私も「へえ、おもしろそう」と感じる仕掛けや演出が盛りだくさんの、魅力的なゲームである。が、しかし……。

子供には大人気。でも、母親からは不満の声も

実はこの『FORTNITE』、私の周りの親、とくに母親からはとにかく評判が悪い。例えば、「あつ森」こと『あつまれ どうぶつの森』が親子で楽しめると好意的に受け止められているのとは対照的だ。

息子と同世代の男子を持つお母さんと会うたびにFORTNITEへの不満を耳にする。「ハマりすぎて、全然勉強しない」「親戚中から集めたお年玉を全額、課金していた」「朝方までやっているから常に寝不足」などなど。

でもこれらの弊害は、FORTNITEに限ったことではない。初代ファミコン時代から今までゲームを楽しんでいる私やもう少し若い世代の親たちも、ゲーム好きなら自分自身が同じことを親に言われ通った道だからだ。

それでもなお、親世代からFORTNITEが目の敵にされる最大の原因は、仲間や対戦相手と会話する「ボイスチャット機能」にある。子供たちはヘッドセットをつけてボイスチャットをしながらゲームをするのだが、プレイ中の我が子の言葉は親にもまる聞こえ。これがひどい。聞くに堪えないのだ。

バトルゲームに興奮した子供たちは、「マジやべえーー!」、「キエーーーッ!」などと奇声を上げ、「ぶっ倒せ!とどめだ!」「ど下手、ジャマすんな!」「ボコボコにすんぞ!」といった物騒なセリフまで音量MAXで絶叫する。

さらに「厨二病」絶賛発症中の我が息子たちは、これに絶妙にネガティブなセリフも織り交ぜる。「あーつまんね、誰のせいかね~」「そんな汚いことして、人生楽しい?」など、周囲で聞いていると思わず不快になるフレーズも盛りだくさんだ。

延々これを聞かされ続ける外野の母のイライラはハンパない。我が家のようにリビングでしかネットに繋げない仕様にしていると、子供がゲームをやっている間中、こうした罵声や怒声を間近で浴びながら家事などの作業をこなすことになる。

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対戦中の会話もこのゲームの魅力なのだが、叫び声や言葉にイライラを感じる親は少なくない。photo/Getty Images

何度も注意するが、ゲームに夢中で大音量のヘッドホンをつけている息子は、全く気が付かない。家の外にまで聞こえる大声で何度も怒鳴ってやっと「え?何?」と面倒臭そうに手を止めて振り返る息子の態度は、私の怒りの火に油を注ぎこむ。

よそのご家庭も似たようなものらしく、先週はA君がパソコンを取り上げられ、今週はB君がSwitch1ヵ月使用禁止になった、という具合に、息子の仲間うちでも順繰りに親がブチ切れ「実力行使」となる事態が続いている。

「初心者のフリ」で、息子と本気で話し合い

先日、ついに私が本格的にブチ切れる事件が起こった。
息子は「あ、はじめまして。僕、このゲーム始めたばっかりなんですよ。いろいろ教えてくださいね」といつもとは全く別の口調でゲームを始めたのだ。なぬ?いつもやっているくせに初めてとは?

瞬時に私の頭に浮かんだのは先日偶然、YouTubeで見かけた「FORTNITEで初心者のフリして、イキってるガキをボコボコにしたった」系の動画だ。

FORTNITEのプレイを動画配信しているプロ級の腕前の人気YouTuberが初心者を装い、「俺、アジア1位だから」などと嘘をついているプレイヤー(多分、中身は小学生男子)と1対1で対戦。最初はわざと下手なプレイをして相手を調子づかせた後、一転して相手を完膚なきまでにボコボコに叩きのめすという内容の動画である。

イキっていた子供は最初、相手を絶好調で攻撃し、調子づいて驚くほど豊富な暴言を吐き散らかす。だがボコボコにされ始めると超音波系の奇声を発しはじめ、最後は「ヤメテ~」「なんだよサイテー!」と本気でギャン泣き。初心者のふりをした配信者自身の音声は入っていないものの、画面下のテロップには「アジア1位はどうした」「ガキ、泣き出しやがった(笑)」などと悪意を感じる文章が延々と流れる。

中にはやらせ動画もあるようだが、この手の「ガキボコ系FORTNITE動画」は山ほどあるうえに、300万回以上の視聴回数を記録するものまである「人気コンテンツ」なのである。

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中には明らかにやらせ動画もあるが、生意気なゲーマーをボコる動画が大量に出回っている。photo/Getty Images

「息子もあれと同じことをしようとしているのか」と思った瞬間、私は頭に血が上ってしまった。「初心者のフリして子供泣かせるのが楽しいの? もうこんなゲームやめな! アカウント、今すぐ削除!」

鬼の形相の私に、息子は口を半開きにしたままフリーズ。マイクを通して私の怒声が聞こえたらしい友人の「お、おい、どうした? 大丈夫か?」という声が小さく聞こえてきた。

「ご、誤解だって。ボコボコになんかしない。だって仲間のチームの子だから……」
必死で言い訳する息子。

きちんと話すために、翌日クールダウンしてから話し合うことにした。

イキっていたら、フルボッコはOK!?

まずは息子に『FORTNITE』についての思いを聞いてみた。

「今、リアルでは友達と会って遊べないから、友達とやるFORTNITEは一番の楽しみ。めっちゃ弱いところから何度も負けまくって育てた自分のキャラは、『もう一人の自分』というか、今の僕の半分くらいを占める大事な存在。だからアカウントを消されるのはマジで困るし辛いんで、ホントに勘弁してください」と息子は言う。

そして昨日の「初心者のフリ」は、相手をボコって楽しむ目的ではないとも言う。

「配信動画みたいにボコられるのは、Twitterとかで『かかってこいや!』と煽って、自分のアカウント名をさらしてる子。僕はTwitterで友達としか絡まないし、そもそも超強くはない僕は、ああいうのと戦ったらホントにボコボコにされちゃうかもしれないから絶対、やらない。

昨日は、一緒に戦うチームにランダムに入ってきた人に『初心者なんです』って言っただけ。まだ始めたばっかりなのに、そこそこ強いと『上手ですね』ってホメてくれるのがうれしくて。いつも一緒にやってる仲間は、僕よりうまい子もいっぱいいるし、少しうまくなったくらいじゃホメてくれないから。たまには自分の成長を確認してみたいなって軽い気持ちで、つい初心者のフリしちゃったんだよね」

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ド派手にワールドカップが開催されるほど人気の『FORTNITE』。写真は2019年のワールドカップのファイナルの現場。photo/Getty Images

ふむ……。「ボコって楽しむつもりだった」というのは、私の誤解だったので、早とちりしたことは息子に謝罪した。でもそれって、リアルな世界で例えれば、中2の息子が小学生のフリをして小学生とかけっこして勝つ的な、卑怯な行為な気もする……。

「でもさ、テレビでもお爺さんに変装したプロ野球選手が、草野球に飛び入り参加して特大ホームラン打つ、みたいなドッキリってやってるじゃない? 騙された人にネタばらししたあと、みんなびっくりするけど笑って喜んでるし。僕的には、ああいう感覚だったんだけど」

ぐぬぬ。でも何かすっきりしない……。では、動画サイトに上がっている「ガキボコ系動画」について息子はどう考えているのだろう。ひとまず一緒に、例の動画を見てみることにする。

「あ、こういうの前にも見たことある。確かに、ボッコボコにしてるけど、そもそも相手は『アジア1位』って嘘ついて、自分から対戦相手を募集してんだし。しかもめっちゃイキって、暴言吐いてるじゃん? それにさ、バトルゲームなんだから相手をボコって何がいけないの?」

検索サイトよりも動画サイトやSNSへの信頼度

そういう息子に私はこう尋ねてみた。

「確かに、バトルゲームは相手に勝つのが目的だもんね。でもさ、さっきFORTNITEのキャラは、半分の自分って言ったよね? たぶん動画で泣かされてるおバカな小学生もそれは同じだと思うんだけど、その大事なキャラがボコボコにされるところをドッキリ動画にされて、300万人にさらされたら、絶望的な気持ちにならない? だって半分の自分が公開処刑されちゃうんだよ。

いくら知識も技もある神配信者でも、それってやっていいことなのかな? eスポーツをオリンピック競技に、なんて話もあるけど、例えばリアルなオリンピック選手がイキってる素人をボコボコにした様子を動画にあげたりしたら、選手生命、終わると思うよ?」

「うーん、確かに公開処刑は……キツいと思う。でもキャラが大事ならTwitterでイキったりすんなって思うよ。それにこの動画が本当にヤバいんだったらYouTubeがバン(削除)するはずでしょ? なのに削除もされずにたくさん上がってることは、超絶悪いってわけじゃないと思うよ。この配信者の人たちは、マジで神強くてバトルの参考になる動画もいっぱいあげてるし……」

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複雑な技も多く、他の人の技を見ることもスキルアップにもなり、またそれ自体も楽しみになっている。photo/Getty Images

せっかくなので息子のゲーム仲間にも、息子のゲームチャットを借りて、少々話を聞いてみた。

「うちの母は、バトルゲーム自体を『こんなのやってると暴力的な人間になる』って嫌がるけど、小学生だってゲームと現実が同じだなんて全然思ってないっすよ。あくまでゲームはゲームで、リアルのストレスを発散するところなんです。

それに僕らの中にも一応、やっていいこととヤバいことの線引きはあって、動画にさらされるイキがってる子はそのラインを超えちゃってるから。動画配信してる人気YouTuberは、そういうルール無視の奴らを迷惑してる僕らに代わって成敗してくれてる感じかな。配信者の討伐プレイは本当にうまいから倒し方もかっこいいし、正直、見てるとスカッとする」

息子たちの価値判断のすごく高い位置にYouTubeがあり、そこにアップされていて(どんなに過激でも削除されず)多くの視聴回数を稼いでいるものは、「正解」であり「正義」なのだ。

ネット上の半分の自分がどう生きるか

話し合っても、いまひとつピンときていない感じの息子に私のモヤモヤは消えない。子供を持たない同世代の友人にそのことをグチると、意外な答えが返ってきた。

「初心者のフリしてホメられたいっていう気持ちは、共感できるかも。例えばカラオケで『あんまり歌には自信がなくて……』と言いつつ、一番自信がある曲を歌って、へぇ~とか驚愕されると心の中でガッツポーズ、みたいな感じ? 確かに泣かすまでは、やりすぎだし、いじめの要素が見えてモヤるけど。でも、私たちも昔ゲームの中でたくさんのボスキャラ倒すことに血道をあげて、ゲーム上で残酷なこともしてきたよね。でも、こういうことに疑問を感じる大人になっているじゃない?あなたも子供がいないときはもっと単純にゲームを見てたのと違う?」

確かに、母という肩書を取っ払った私自身だけでいうなら、ゲームは純粋に楽しむもので、そこに教育的配慮だの正しさなんて考えもつかないだろう。そして「初心者のフリ問題」「やりすぎ問題」は『FORTNITE』に限ったことではなく、『荒野行動』『PUPG』『マインクラフト』など多くの人気ゲームにも見られることでもある。

もとはといえば勘違いがきっかけて息子を猛烈に叱りつけたことに、少々反省した。
内心お詫びの気持ちも込めて休日、息子に「母さんも一度やってみようかな」と言ってみたら、なぜか息子は喜んでレクチャーしてくれた。私が普段するRPGやパズル系ゲームに比べて、とにかく動きが速く、たくさんのボタンを連打する最新バトルゲームは、ちっとも操作を覚えられない。

隣の息子の熱血指導を受けつつ丸一日しごかれて、なんとかキャラがノタノタとは動かせるようになった。確かに自分のキャラが撃たれれば「いてっ!」と思うし、プレイがうまくいってエモートで踊るのは楽しい。10代の頃、友達と一緒にやっていたらたぶん、どっぷりハマっただろう。でもこの年になると画面を凝視しすぎて目はシバシバするし、ぐるぐる動きまくる背景で3D酔いするしで、とてもついていけそうにない。

そして、あれこれ悪くいってきたものの、このコロナ禍で、密かに『FORTNITE』というゲームに「母として」感謝するところも多大にあったことも思い出した。

学校が全体未聞の長期休校になった期間のこと。息子は通常のFORTNITEのバトルに飽きると、友達と『半分の自分』を使い、ゲーム内でコスチュームを次々に変えてはダサさを競って爆笑し、地元の公園で集えない代わりにゲームの中で鬼ごっこやかくれんぼをして無邪気にはしゃいでいた。

その間、ボイスチャットではくっだらない、けれどかけがいのない『友達とのいつもの世間話』が飛び交っており、心からリラックスした様子の息子を見て、大真面目にFORTNITEに感謝した。ひとりっこで寂しがりの息子が3か月も友達と会えないという状況の中、どうにか心のバランスを崩さずに生き抜いていられたのはこのゲームのおかげ、ともいえるのだ。

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『FORTNITE』も単なる対戦の枠を超え、2020年7月には「We The People」と人種差別問題への理解を深めるトークイベントも開催されている。photo/Getty Images

だからこそ「半分の自分」が住んでいる、大好きなネットの世界を現実世界同様に大切に、後悔なく生きてほしいと願ってしまう。ネットでトラブルになるような行為を「自分はやらない」というだけでなく、ネットの世界ならではの「充実した生き方」や「他者へのさりげない思いやり」も同時にそこで育ててほしい、と考えるのは望みすぎなのだろうか。

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