
(©玉梨ネコ・TOブックス/©『DOLL』製作委員会)
西葉瑞希が出演する舞台<DOLL>が、6月1日(木)〜5日(月)に渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール、6月16日(金)~6月18日(日)に京都劇場にて上演される。本記事では、オフィシャル稽古場レポートをお届けする。
取材&文:小野寺悦子
撮影:立川賢一
舞台<DOLL>は、『リタイヤした人形師のMMO機巧叙事詩』は、小説から始まり、コミカライズ、さらにニコニコ漫画で100万回再生を果たすなど、メディアの枠を超え幅広い支持を集める人気作。今回初の舞台化にあたり、脚本を『ウルトラマン』『プリキュア』シリーズをはじめ特撮やアニメ、ノベライズで活躍する小林雄次、演出を劇団エムキチビート主宰の元吉庸泰が手がけ、小説を原作にまた新たな世界を作り出している。
冒頭くり広げられたのは、人形師世界一を決めるワールドカップ。世界一に選ばれたのは、室町時代から続く人形師の16代目・佐倉いろは。天才人形師だった祖父の薫陶を受け、将来を嘱望される若き人形師だ。しかし、いろはの成功を快く思わない者もいた。
主人公の佐倉いろはを演じるのは林翔太。何者かによる放火による火事で人形師として致命的なケガを負ってしまう。VRマシンで現実世界を離れVR世界に誘われ飛び込んだ先で、人形制作に改めて向き合い、ドールを完成させ、数々の冒険とバトルを経て、人形師としての自身の在り方を見つめ直すことになっていく。
林の舞台人としてのキャリアは長く、これまでミュージカルからストレートプレイまで数々の作品で主演を務めてきた。しかしここまで役者として直球の芝居を求められる演劇作品はそうはないだろう。現実世界ではケガに絶望する若き人形師に扮し、VR世界では仮の姿で改めて人形と対峙する、その演じ分けも必要だ。林が演じるいろはは、繊細で心優しく、世界での戸惑いを精妙に表現。それでいて物語とともに徐々に逞しさを宿し、キャラクターに奥行きを与えている。
松本幸大が演じるのは、VR世界でいろはと対決する人形師・ズィーク。林と松本はジャニーズ事務所に入所した頃から切磋琢磨してきた間柄。今回久しぶりの共演だというが、作中はいろはとズィークの闘いがくり広げられ、そこでの熱演、演技バトルも見所の1つ。ズィークはなぜかいろはに執着し執拗に追う、いろはの敵役。松本自身“今まで演じたことのない役への挑戦”と言う通り、笑顔のイメージが強い素顔とは一転、ふてぶてしくも大胆に憎まれ役を体現。狂気の面持ちで自身のドールをぞんざいに扱い、同時に内に抱える闇と苦悩を滲ませている。

(©玉梨ネコ・TOブックス/©『DOLL』製作委員会)
いろはがついに完成させたドール・ミコト役の西葉瑞希とズィークに使役するドール・9号役の搗宮姫奈が激しく戦闘するシーンにも注目していただきたい。いろはとズィークとの戦いは彼女たちドールを使う戦いでもあり、彼女たちがアクションへの果敢な挑戦をしつつ、現実世界ではまた違った顔を披露している。VR世界に飛び込んだいろはを導くナビドール役の山下朱梨は、丁寧に場を展開しつつも時にズィークの暴走に対し、冷静に場を動かす役割を果たし、戦闘シーンを盛り上げている。
いろはが親近感をもっているドール工房の主人・レトロ役の陰山泰は、彼らの戦闘を見守りながらも“人形つくりとは何か”を問いかけ諭し、やがては癒しをもたらす重要な役割を担っており、ベテランらしい安心感と放つ台詞が心に響く。
可憐さと高飛車な少女・サラ役の岩田陽葵は、いろはやズィークを見守りながらも、自身もドールとともに戦闘に参戦。声優やアーティストとしても活躍する彼女の可憐さも目を惹くものがある。そして、VR世界で最強プレイヤーのディアベル、現実世界では刑事を演じる藤田玲が重要な場面で登場し、芝居に厚みを加えている。
同作の演出も面白い。VR世界の物語というと、映像やCGといった最新技術を駆使した演出がまず思い浮かぶだろうが、いい意味で裏切るものになっている。同作の演出は技術の類に一切頼らず、ダンスとアクション、パントマイムなど、身体表現を最大限に駆使し人形たちの世界を描き、場面転換はアンサンブルが手持ちで額縁を操り、表現の自由度も高いステージングとなっている。額縁はときに現実世界とVR世界を行き交う扉に、ときに心象風景を切り取る窓となり、舞台の景色をさまざまに変え、観る者のイマジネーションをかき立てていく。
なぜズィークはいろはに執着し、憎むのか。戦いを経て、いろはとズィークはこの先何を選択していくのか。そしていろはの背負う真の現実とは? 謎がすべて解けたとき、彼らの想いが胸にグッと迫りくる。人形作りにかける人形師たちと、それにかける役者たち、彼らの行方を見届けてみたい。
舞台<DOLL>
■ストーリー
人形師の家系に育ち将来を期待されている佐倉いろは(林翔太)。最高傑作の人形を完成させ、人形師の日本一を競う品評会で優勝し、高く評価された矢先、いろはのアトリエは何者かの放火を受け全焼。一命を取り留めたものの腕に大火傷を負い2度と人形が作れない腕になってしまう。そんなある日、謎の差出人から「Dギア」というVRマシンがいろはに届く。
『DOLL’S ORDER』というVR(仮想)世界で人形を戦わせ、最高の“DOLL”を目指すというものだった。なぜか執拗にいろはを狙うズィーク(松本幸大)という男が現れ、戦いに躊躇いながらも、自身のドール・ミコト(西葉瑞希)とともに、ズィークの戦闘ドール・9号(搗宮姫奈)との戦いに次第にのめり込んでいく。
VR世界でいろはを導くナビドール(山下朱梨)、ドール工房の主であるレトロ(陰山泰)、カフェで出会った高飛車な少女・サラ(岩田陽葵)、最強のプレイヤーであるディアベル(藤田玲)、人々との出会いと戦い、VR世界と現実世界、リンクする2つの世界で反目し合ういろはとズィーク。
その先に待つのは闇か、希望か――。
原案:玉梨ネコ『リタイヤした人形師の MMO 機巧叙事詩』(TOブックス刊)
脚本:小林雄次
演出:元吉庸泰
【出演】
林翔太 松本幸大/西葉瑞希/搗宮姫奈/陰山泰/岩田陽葵 藤田玲
(アンサンブルキャスト)大澤信児 小熊 樹 郡司敦史/川村理沙 渡邊彩乃 明部桃子 神目聖奈 野田冴音
【スタッフ】
音楽:栗山 梢
美術:土岐研一
照明:萱嶋亜希子
音響効果:天野高志(RESON)
映像:O-beron inc.
衣装:桃木春香
ヘアメイク:成谷充未
振付:西川卓
殺陣:市瀬秀和
演出助手:櫻井真優
舞台監督:岩淵吉能(ステージワークURAK)
宣伝美術:前山陽子
宣伝:ディップス・プラネット
制作進行:アプル
票券:サンライズプロモーション東京/リバティ・コンサーツ
企画協力:伊藤高史
主催:『DOLL』製作委員会
【東京公演】
開催日:2023年6月1日(木)~6月5日(月)(東京公演)
会場:渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール(東京都渋谷区桜丘町 23-21)
チケット料金:全席¥9,800
一般発売日:東京公演 2023年5月13日(土)10:00~
【京都公演】
開催日:2023年6月16日(金)~6月18日(日)
会場:京都劇場(京都府京都市下京区東塩小路町901京都駅ビル)
チケット料金:全席¥9,800
一般発売日:東京公演 2023年5月13日(土)10:00~
■チケット取り扱い
チケットぴあ(東京公演Pコード:518-634 京都公演Pコード:518-832)
イープラス(ファミリーマート店頭)
ローソンチケット(ローソン、ミニストップ店内「Loppi」(Lコード:31671)
CNプレイガイド(京都公演のみ取り扱い)
■チケットに関するお問合せ
東京公演:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12:00~15:00)
京都公演:キョードーインフォメーション 0570-200-888(平日・土曜11:00~18:00)
■公演に関するお問合せ
東映ビデオカスタマーセンター 0120-1081-46
©『DOLL』製作委員会
Pop'n'Roll 編集部