
親と会話して「話のつじつまが合わない」「最近、怒りっぽい?」などの異変を感じたら、認知症かもしれません。今回は、そんな場合の相談先、支援制度を紹介します。
厚生労働省の「認知症の人の将来推計について」によると、65歳以上の認知症患者数は2025年には約675万人(有病率18.5%)にのぼり、約5人に1人が認知症になると予測されています。親と会話して「話のつじつまが合わない」「最近、怒りっぽい?」などの異変を感じたら、認知症かもしれません。
今回は、そんな場合の相談先、支援制度を紹介します。
認知症の有病率は80歳以上から上昇し始め、90歳以上になれば約6割を占める
高齢化の進展とともに、認知症患者数が増加しています。
厚生労働省の「認知症施策の動向」の中にある資料「認知症の年齢階級別の有病率」によれば、認知症の有病率は、80歳以上の約2割、85歳以上は約4割、90歳以上は約6割と上昇していることがわかります。

出典:厚生労働省「認知症施策の動向」
親が80歳以上になったら、認知症の初期サイン・症状を見逃さないようにしましょう。
認知症の主な初期サイン・症状の例
・朝ごはんを食べたこと自体を忘れてしまうような物忘れ
・簡単なリモコン操作、慣れた洗濯機の操作などに手間取る
・何かをしようという意欲がなくなり、趣味をやめた
・怒りっぽくなったり、疑い深くなったりしてきたなど
症状に気がついたら、どこに相談する? 主な相談先は3つ
これらの症状に気がついたら、早めに専門機関で相談しましょう。相談先は次の3つです。
相談先1:地域包括支援センターに相談
地域包括支援センターは、地域ごとに設置されていて、対象エリアに住んでいる65歳以上の高齢者、またはその支援者向けの相談窓口です。高齢者が抱える問題に対して幅広く相談に応じ、解決につながるサポートを行います。認知症に詳しい認知症疾患医療センターや認知症初期支援チームなどの関係機関とも連携しながら、適切な保健福祉サービス、制度の利用につながるようさまざまな支援を行っています。
相談先2:かかりつけ医に相談
親にちょっとした体調不良のときに通える「かかりつけ医」がいれば、認知症の疑いについて相談してみるとよいでしょう。
もし、かかりつけ医が認知症の診断ができない場合も、適宜、適した病院を紹介してくれるはずです。
相談先3:医療機関の「物忘れ外来」に相談
物忘れ外来では、気になっている症状が、「加齢による単なる物忘れ」なのか「認知症によるもの」なのか「他の病気による症状」なのかを診断します。
問診だけでなく、認知症テスト、CTやMRIなどで脳の萎縮や脳梗塞がないかを調べます。さらに、必要に応じて、脳の血流、脳波の乱れなどの検査を行います。
親が認知症になったとき利用できる支援
認知症の方や、そのご家族が利用できる主な支援制度を解説します。
制度1:介護保険制度
介護保険制度とは、介護を必要とする人に費用を給付し、適切なサービスを受けられるようにサポートする保険制度です。介護保険の対象になるのは、65歳以上の第1号被保険者と、40~64歳までの第2号被保険者です。
認知症は介護を必要とするため、介護保険制度の利用が欠かせません。まずは、その人にどの程度の介護が必要かを審査する「要介護認定」を受けて、訪問介護や通所介護、施設入所などの中から適した介護サービスを選びます。
介護保険の相談窓口は、市区町村役場の介護保険の担当課、もしくは地域包括支援センターです。
制度2:日常生活自立支援事業
日常生活自立支援事業は、認知症高齢者などが、地域において自立した生活が送れるよう、福祉サービスの利用援助等を行います。
認知症高齢者もしくはその家族が、地域包括支援センター、もしくは社会福祉協議会に申請(相談)することで、福祉サービス、医療サービスの情報提供や利用相談をはじめとした、さまざまなサポートが受けられます。
民間の生命保険に加入している場合は、「高度障害特約」が適用されることも
民間の生命保険に加入している方が認知症になった場合、その状態によって「高度障害特約」が適用される場合があり、そうなれば保険金が支払われます。高度障害特約に該当するかどうかは、加入している生命保険会社に問い合わせしましょう。
文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)
3匹の保護猫と暮らすファイナンシャルプランナー。会計事務所、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として勤務後、FPとして独立。人と比較しない自分に合ったお金との付き合い方、心豊かに暮らすための情報を発信しています。
(文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー))
舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)