「収益不動産の購入」「持株会の設立」...株式移転コストを抑える事業承継術【税理士が解説】

「収益不動産の購入」「持株会の設立」...株式移転コストを抑える事業承継術【税理士が解説】

  • 幻冬舎ゴールドオンライン
  • 更新日:2021/11/25
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事業承継では、自社株の評価額を下げることにより、株式移転コストが抑えられます。収益不動産の購入や持株会を活用した株式数の調整など、自社株の評価額を一時的に下げるための方法と注意点を詳しくみていきましょう。

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収益不動産を購入して「純資産の圧縮効果」を期待

会社の規模などによって、自社株式の評価方法として純資産価額方式のみが適用される場合は、利益や配当金が変動しても類似業種比準方式と比べて、株価に大きな影響を与えません。

では、純資産価額方式が用いられる場合で、株価が変動するのはどんなタイミングかというと、資産の内容や相続税評価額が変動するタイミングです。

その典型的な例が、現預金(場合によっては融資も)を使って収益不動産を購入したことによる資産評価額(=純資産価額)の変動です。

会社が保有する不動産は、その購入から3年を経過すると相続税評価額で評価されます。ご存じの読者も多いでしょうが、土地の相続税評価は原則として「路線価」での評価となり、時価(市場で売買される実勢価格)の0.8倍程度とされるのが一般的です。

また、建物の相続税評価額については固定資産税評価額となります。これは地域によっても異なりますが、時価の60%程度の評価額になることが多いでしょう。

仮に2億円を現金として持っていれば「2億円」として評価され、それが純資産価額に反映されるのに対し、1億円の土地を購入して1億円の建物を建てた場合、それぞれ8000万円、6000万円と評価されるので、相続税評価額が6000万円下がるというわけです。

さらに、収益不動産として賃貸する場合は、土地は「貸家建付地」として評価が下がり、また建物も「貸家」としての評価減がなされます。細かくなるので計算は省きますが、ざっくりいって現金での保有に比べ、半分程度の評価額になります。

さらに、この収益不動産物件の購入に際して、融資を利用して、保有現金以上の価格の物件を購入すれば、純資産の圧縮効果はより大きくなります。結果として、純資産価額が数分の1から、場合によっては10分の1以下にまで下がるでしょう(簡便化のため、賃貸事業による収益は無視します)。

ただし、保有不動産が相続税評価額で評価されるのは、不動産購入後3年経過後以降である点にはくれぐれも注意が必要です。購入後3年以内に株式の移転があった場合は、時価(≒購入価格)で評価されるため、効果はほとんどありません。

また、収益物件自体には、事業リスクがある点も忘れてはいけません。特に融資を受けて物件購入をした場合には、予定どおりに賃貸収入が入らなければキャッシュフローが悪化し、経営に悪影響を及ぼすような本末転倒の事態にもなりかねません。

従業員持株会の活用で株式数を減らす

株式の移転コストを減らすためには、ここまでに説明してきたような、「株価が下がるタイミングを見計らい、そのタイミングで株式の移転を実行する」という考え方のほかに、「移転する株式の数を減らすことで移転コスト総額を減らす」という考え方もあります。

以前は、後者の考え方に基づいて、後継者以外の家族や親戚などにも株式を相続や贈与するなどして後継者が承継する株式を減らすことが、事業承継対策としてよく行われていた時代がありました。

しかし、先にもご説明したとおり、株式は財産権だけではなく経営権をも表すものであり、経営権を分散させることは経営の不安定化をもたらします。

そこで、現在はなるべく株式は後継者に集中させるほうがよいという考えが主流ですが、その例外となるのが従業員持株会の活用です。

やり方は、まず従業員持株会を結成し、オーナーが保有する株式の一部(例えば30%)を従業員持株会に譲渡します。その後で後継者へ株式を移転すれば、株価が変わらないとしても移転コストの総額は元の70%で済むことになります。

一方、オーナーの保有株を譲渡する際の株価は、買い手となる従業員がオーナー同族以外の少数株主であるため、配当還元方式をベースとして評価されることになります。

一般的に配当還元方式での株価は、他の方式での評価に比べて非常に低いものとなります。従業員が低額で自社の株式を購入できて、場合によっては株主として業績に応じた配当も受け取れるとなれば、従業員の経営参加意識が高まり、業績向上に結びつく効果もあるでしょう。

また、従業員持株会は、親族などを少数株主にするケースと異なり、経営不安定化の要因にならないメリットがあります。従業員持株会の株式にも株主総会での議決権が付与されていますが、従業員持株会(実際的には持株会の理事長)がオーナー経営者の意向に反する意思表明をするということは、常識的には考えられないためです。

従業員持株会組成に際しては、まず規約をつくります。その規約においては、従業員が退職後も株主のままでいられると困ったことになるので、退職時は譲り渡してもらう条項を必ず設けておくことがポイントです。

社員数が数名から十数名規模と小規模な会社では、持株会の結成は難しいかもしれません。しかし、ある程度の社員規模となった中堅企業、特に将来の株式公開を目指している会社の場合は、ぜひ活用を検討したい方法です。

税理士法人 チェスター

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