ヤクルトは阪神、巨人に食らいつけるか  “大番狂わせ”を起こすカギは?【燕軍戦記】

ヤクルトは阪神、巨人に食らいつけるか “大番狂わせ”を起こすカギは?【燕軍戦記】

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  • 更新日:2021/07/21
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ヤクルト・高津臣吾監督 (c)朝日新聞社

「順位が気にならないと言ったらもちろん嘘にはなりますが、まだ(シーズンも)半分なので深くは考えてないです。もちろん終わった時に『一番上』に立てるように、1つでも上(の順位)に行けるようにとはずっと考えてますけども、まだまだこれからいろんなことがあるでしょうし、まだまだ嬉しいことも悔しいこともたくさん待ってるでしょうし……。まあ、一喜一憂しちゃいかんのかもしれないですし、目の前の試合をしっかり勝たなきゃいけないという気持ちと、ちょっと矛盾したところがありますけども『順位はそれほど気にしてない。ただ、気にはしてる』というような感じです」

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今季前半戦、本拠地の神宮では最後の試合になるはずだった7月11日の広島戦を雨で流すと、ヤクルトの高津臣吾監督はそう胸の内を明かした。その後、1日置いて行われた2位・巨人との2連戦(東京ドーム)に連勝し、3位のヤクルトは42勝32敗9引き分けの貯金10でシーズン前半を終了。貯金を持ったままペナントレースを折り返すのは、小川淳司監督(現GM)の下で終盤まで首位を独走した2011年以来、10年ぶりのこととなる。

一昨年、昨年と2年連続で最下位に沈んでいたことを考えれば、ここまでの戦いには「あっぱれ!」をあげたいところだが、まだ早い。東京五輪開催による約1カ月の中断を経て迎えるシーズン後半戦を前に、2位・巨人と0.5ゲーム差、首位・阪神とも2.5ゲーム差と、逆転優勝も十分に狙える位置にいるからだ。

では後半戦、2015年以来6年ぶりの優勝を目指す上で、カギになりそうなものとは? まずはチーム打率こそリーグ3位の.255ながら、同2位の87本塁打、そして1位の1試合平均4.4得点を挙げている打線から見てみよう。

前半戦、ヤクルトにとって大きな“補強”になったのが新外国人のホセ・オスナとドミンゴ・サンタナだ。2人は共に4月下旬に一軍に合流し、試行錯誤を経て昨年は打線の“泣きどころ”だった五番にオスナが座ると、打率.315、9本塁打、さらにチーム3位の33打点をマーク。「恐怖の七番」サンタナも打率.290、7本塁打、28打点に加え、得点圏打率では.315とオスナを上回る。そんな2人の働きを、高津監督も「ランナーを置いたところでのバッティングをすごく期待してるので、今はその期待に非常に応えてくれてると思います」と高く評価している。

開幕直後に自打球で離脱した坂口智隆(現在は二軍調整中)を除き、ここまで主力に長期の離脱がないのも大きい。思えば前回優勝の2015年も、野手ではウラディミール・バレンティン(現ソフトバンク)以外、主力に大きなケガはなかった。高津監督も「過保護にするわけじゃないですけど、やっぱりこの状態をキープして試合に出させるというのも、こちらの大きな役割の1つだと思うので、そういうところは気を使っていきたいなと思います」と話しているように、後半戦もいかに故障者を出さなく乗り切ることができるかが重要になる。

もっとも「(前半戦で)大きな連敗をしなかったっていうのは、打線はもちろんですけど、先発が長いイニングを投げてゲームを作るとか引っ張るとかっていうところが、誰かが週の6試合の1人でもできるようになってきてるのかなっていう感じはしますね」と高津監督が言うように、打線以上に光ったのは投手陣、特に先発ピッチャーといっても過言ではないだろう。

昨年は先発が序盤から試合を壊すことも多く、QS(先発が6回以上投げ、自責点3以下に抑えた試合)率はリーグでも圧倒的に低い30.8%だったが、今季前半戦は41.0%。リーグでは下から数えて2番目の数字ではあるが、先発が“試合をつくる”確率は前半戦が終わりに近づくにつれて上がっていった。6月11日以降の9カードで見ると、6月25日~27日の巨人戦(神宮)を除けば1カードに1度は先発がQSを達成していて、この間のQS率は50%を超える。

なかでも、5試合以上先発した投手の中で最も高いQS率60%を記録しているのが、ドラフト1位で入団して2年目の奥川恭伸だ。今年は開幕から一軍で常に10日以上の登板間隔を空けながらも、チームでは田口麗斗、小川泰弘に次ぐ10試合に先発して4勝2敗、防御率4.19。年齢の近い古賀優大と初めてバッテリーを組んだ5月5日以降は、先発7試合中QS6試合と、この間のQS率は85.7%に達する。

この奥川に次いで開幕投手の小川がQS率57.1%、開幕前の電撃トレードで獲得した左腕の田口が同53.3%、そして来日3年目のアルバート・スアレスは同50.0%。今季前半戦でいえば、先発投手がQSを達成した試合は.786と高い勝率を誇るだけに、後半戦も先発投手がどれだけ試合をつくれるかがポイントになりそうだ。

そういう意味で期待がかかるのが6年目の左腕、高橋奎二である。今年1月にはタレントの板野友美さんとの結婚が話題となったが、開幕後はなかなか一軍での登板機会がなかった。ところが6月13日のソフトバンク戦(PayPayドーム)でおよそ1年ぶりの勝利を挙げると、この試合も含め4度の先発で2勝0敗、防御率2.66。うち3試合がQSだった。

もちろん、リーグ2位の救援防御率3.30を誇るブルペンの働きも忘れることはできない。楽天から移籍1年目にして22試合に登板し、防御率0.96と抜群の成績を残していた近藤弘樹が右肩の肉離れで離脱し、守護神の石山泰稚が不調のために二軍落ちするという不測の事態がありながらも、巧みなやりくりでチーム全体ではいずれもリーグトップの27セーブ、82ホールドを挙げているのは、さすがというほかない。

ただし、前半戦終盤は救援陣が打たれて追いつかれ、落とす試合も目に付くようになった。高津監督も「特にリリーフはちょっと疲れが出てきてるのかなっていう感じもします」と語っていたが、例年なら後半に向け、その影響が懸念されるところだろう。だが、今年は東京五輪開催による中断期間が1カ月近くある。その間、いかに疲れを癒し、コンディションを整えていくかも、後半戦に向けてのカギを握ることになりそうだ。

そしてもう1つ、高津監督が後半戦に向けての課題として挙げているのが、上位を行く巨人、阪神との戦いである。

「(前半戦は)上位のタイガースとジャイアンツには分が悪くて、何とか3位に食らいついてる状況で、他(下位)の3チームから貯金をしてるような感じなのでね。ぜひ後半は上位にも食らいついて、ほかの3チームともしっかり戦えるように整えていきたいなと思います」

前半戦は巨人に対して最後の2連戦に連勝したものの、対戦成績は4勝7敗1引き分け。阪神には開幕戦から6連敗を喫するなど、3勝10敗2引き分けと大きく負け越している。4位以下の3チームからは合わせて18の貯金を荒稼ぎしているが(他に交流戦で貯金2)、巨人と13試合、阪神とも10試合残っている直接対決でどれだけ勝ち越せるかが、後半戦の行方を左右しそうだ。

「すべては8月14日のベイスターズ戦(に向けて)だと思ってます。そこに100%の状態で、これはベテランであろうが外国人であろうが若手だろうが関係ないんですけれども、そこに向けてどうやってこの丸々1カ月を過ごし、そこに向けて調整していくかだと思います。誰も体験したことのないシーズン中の1カ月のお休みというところで、すごく大事な1カ月だと思ってます」

高津監督がそう話すペナントレース中断期間。「誰も体験したことのない」この1カ月をどう過ごすかが、さらに熱い戦いになりそうな後半戦に向けての、最大のカギになるのかもしれない。(文・菊田康彦)

●プロフィール

菊田康彦

1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004~08年『スカパーMLBライブ』、16~17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。

菊田康彦

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