「性別を変えることに関しては何も」天才IT相オードリー・タンが語る、幼少期最大のジレンマ

「性別を変えることに関しては何も」天才IT相オードリー・タンが語る、幼少期最大のジレンマ

  • 文春オンライン
  • 更新日:2020/10/17

台湾のデジタル担当大臣として知られるオードリー・タン政務委員。トランスジェンダーであることを公表し、天才プログラマーであり、コロナ禍においては、国民全員にマスクが行きわたるシステムを構築、台湾におけるコロナ感染拡大を防いだことで話題となりました。

そこで、彼女の考えていることを知りたい! と我らが岡村ちゃんがオンラインで緊急取材。オードリーさんのユニークな人間像に迫りました。(2020年8月取材)

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台湾のエンタメ業界はすべて通常開催に

岡村 こんにちは、はじめまして。今日はよろしくお願いします。

オードリー こちらこそ。お会いできて光栄です。

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オードリー・タン (C)Audrey Tang

岡村 僕はエンタテインメントの世界にいるのですが、今、日本のエンタメ界は深刻なフェーズに直面しているんです。コロナの影響で音楽イベントが軒並み中止となり、コロナがいつ収束するのかもわからないので、再開のめども立たず、業界全体が混乱し、前に進めなくなっているんです。台湾のエンタメはどうですか? コンサートやイベントはいまだできない状況は続いているんですか?

オードリー 今、市中感染がない状態なので、スポーツやエンタメを含むすべてのイベントは通常開催になっているんです。

岡村 そうなんですか。すっかり元にもどってる感じですか?

オードリー もちろん、入場のときの検温、手指消毒、マスク着用は、基本中の基本で、そういった対策をとった上で、です。キャバクラやクラブのような夜の街の店も、存在を抹殺する必要はありません。これまでのような濃厚接触はできないですが、営業しています。お客さんは記名制ですが実名でなくてもいい。その代わり連絡先は残してもらっていますね。

岡村 コンサート会場には、お客さんは普通に入っていますか?

オードリー 入っています。室内では、席を1つ空けて。そうじゃない場合は、マスク着用で満席にすることもあります。アウトドアの場合は、1mのソーシャルディスタンスを守っていれば制限なし。まったく元通りではありませんが、エンタメ業界の被害はだんだん少なくなっています。

「顔と顔を合わせると情が3倍湧く」という台湾のことわざ

岡村 オードリーさんの活躍のおかげですね。日本とは全然ちがう。

オードリー 日本のようにまだ市中感染が見られる状況ではイベントを開催するのは厳しいと思います。でも、テクノロジーで解決できることもあると思っていて。台湾は今、国内全域どこでもWi-Fiを無料で使えるので、国民のインターネット環境がもっと充実すれば、バーチャル・リモート・イベントもできるかもしれない。

岡村 新しいカタチのエンタテインメント、ということですか?

オードリー そうです。「XRスペース」という、誰でも簡単にバーチャルの空間づくりができるようなソフトがあって、それが普及すれば、これまでイベントができなかったような、山や海辺、川辺でも娯楽が生まれるかもしれない。

台湾には、「顔と顔を合わせると情が3倍湧く」ということわざがあるんです。ただ、マスクをつけたりリモートやオンラインになると、3倍どころか1倍にもならなくて、情がどんどん隔離されてしまう。

テクノロジーの進化で、どれだけその情を補えるのか、2倍、2.5倍と、もともとの3倍までどう近づけるかという工夫を考えていかなければなりません。

岡村 ちなみにオードリーさんには、コロナの収束のシナリオみたいなものは見えているでしょうか。

オードリー 長い目でみなければと思っています。台湾には、「国家チーム」という概念があるんですね。国民は台湾というチームの一員という考え方ですが、これからは「マスク国家チーム」なのだと言っています。

国民全員が、いつマスクを外せるのかという考え方を捨て、ニューライフスタイルを、新しい日常を心に刻まなければならないと。これからの私たちはマスクをつけ、生きていくんだという考え方に変わらなければならないということなんです。

岡村 オードリーさんはさまざまなインタビューで、カナダのソングライターで詩人でもあるレナード・コーエンの歌「Anthem」の一節をよく引用されていますよね。「すべてのものはひび割れている。しかし、そこのひび割れからは光が差すだろう」と。今、光が見えている感じはしますか?

オードリー 今、私に照らされている光は、ノートブックパソコンの画面の光と、机の上にあるライト、という状態です(笑)。

性別は「無」。IQ180は身長でしょ

岡村 ここからは、オードリーさんご自身のことをいろいろお伺いしたいと思います。まず、子どもの頃のことについて聞かせてください。オードリーさんは、生後8カ月で言葉を話し始め、小学1年生で連立方程式を解き、8歳でコンピューターのプログラミングをマスター、14歳で中学校を中退、アメリカの大学教授たちとインターネットで直接やりとりされるようになった、と聞いています。

同年代の周りの人たちと理解し合えない、話が合わない、そういった苦悩もあったんじゃないかと想像するのですが、どうでしたか?

オードリー 悩むことはなかったですね。IQ180と言われることも、それは身長のことでしょって(笑)。人よりも身長が高いことのほうがIQよりもはっきりしていますから。

岡村 そして、トランスジェンダーでいらっしゃる。20歳のときにホルモン検査を受け、自分は男女の中間にいることがわかったと。ご両親にそれを伝えることに躊躇はあったりしましたか?

オードリー ありませんでした。本当に普通に、今までとは違う性別でもう一度やり直します、と伝えただけです。その頃はもう成人していましたし、男性として生まれ、男性として成人していたわけですけれど、今度はオードリーという女性としての思春期を、これからもう一回経験しますと。

-ー編集部からも質問をしていいでしょうか。ご両親は新聞記者出身で、「男はこうあるべき、女はこうあるべき」という教育をされてこなかったそうですが、そういった影響も大きいでしょうか?

オードリー 親が教えてくれたことは、「右利きになったほうが便利だよ」ということだけで(笑)。小1の頃、私は左利きだったんですが、親が学校の先生から「右手でも書けるようにしてください」と言われたんです。

当時、左利きに対するイメージがあまりいいものではなかったし、パソコンを含め、あらゆる道具が右利きに向けて作られている。「左利きだけでやっていくと損をするよ」と親にすごく言われたんです。「そうか、私は右手も使わないとダメなんだ」と一生懸命練習して。それに関してはジレンマがすごく強かったので、今でもはっきりと覚えているんです。

でも、トランスジェンダーであることに関しては、親から何も言われていませんし、普通にサポートしてくれています。そこに関するジレンマはあまりなかった気がしますね。

-ーもう一つ。オードリーさんは、女性か男性かのチェックを入れるところにいつも「無」と入れている、と聞いています。それは、性別はない、ということですか? それとも、男女両方持っている、という意味なんでしょうか?

オードリー 前者ですね。性別欄は「無」、何でも「無」です。ジェンダーは男女だけではなく、「両方」も存在しないんです。例えば、台湾には、中国国民党と民主進歩党の二大政党がありますが、政党はそれだけではないんです。台湾維新党、時代力量、そのほかいろんな政党があり選択肢がある。いちばん勢力を持つ2つがすべてではないのです。

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インタビュー後半では、オードリーさんがリモート会議に感じるロマン、約40年にわたって政治弾圧が続いた「白色テロ」の影響、日本人と「すごく話が合う」と感じる理由などが語られます。続きは発売中の『週刊文春WOMAN 2020秋号』でご覧ください。

オードリー・タン/1981年台北生まれ。両親は元新聞記者。生まれつきの心臓疾患で死と隣り合わせの日々だったが、12歳で手術に成功。IQ180超で、14歳で中学を中退。プログラミング言語「パール6」の開発に大きな役割を果たし、19歳でシリコンバレーで起業。35歳で台湾政府のデジタル担当大臣に就任。

おかむらやすゆき/1965年兵庫県生まれ。音楽家。86年デビュー。4年ぶりの新作アルバム『』が好評発売中。11月23日にNHKラジオ第一で13:05から「岡村靖幸のカモンエブリバディ」第7弾が放送(NHKFMで11月24日18:00から再放送)

text:Izumi Karashima
hair&make-up:Harumi Masuda(Okamura)

(「週刊文春WOMAN」編集部/週刊文春WOMAN 2020 秋号)

「週刊文春WOMAN」編集部

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