ちょっと落ち着きませんか? キャンプブームと多忙な人に染みる言葉

ちょっと落ち着きませんか? キャンプブームと多忙な人に染みる言葉

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2020/11/21
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コロナ禍で多くの業界が悲鳴を上げるなか、アウトドア・キャンプ業界はいち早く持ち直している。第一次キャンプブームと言われる90年代の頃とは違い、この10年でじっくりと堅調に成長してきた市場は、「3密回避」という観点で新たな層も流入した。その傾向は日本のみならず世界的な流れとなっており、ニューノーマル時代の大切な楽しみのひとつになっているようだ。

長らく日本のキャンプ市場を牽引してきたコールマン ジャパンは、現在のキャンプ人気をどう見ているか。代表である中里豊に話を聞いた。

自粛期間中もテントは売れていた

──コロナ禍の今年、多くの業界が厳しい状況におかれる中、アウトドア・キャンプ業界は堅調に見えます。

コロナ禍以前からマーケットは上向きでした。とくにここ4、5年はキャンプ市場の裾野が広がり、業界として着実に成長しています。とはいえ、春先の自粛期間は、店舗のみならずキャンプ場も閉鎖していたので、弊社も売り上げは昨年に比べれば厳しい状態でした。

──自粛期間中、キャンプギアをECで購入した人は多かったようですね。在宅勤務用の椅子やテーブルをキャンプ兼用とするなど新たな動きも多かったようですが、どのような傾向がありましたか。

自粛に合った独特の傾向が現在の売り上げの半分近くを補っている形でした。おっしゃる通り、ファニチャー関連は3月から5月にかけて需要が高まりました。また、通年で好調なのがテントで自粛期間中もテントは売れ続けていたんです。

一方、なぜか寝袋が売れなかった。私たちの経験則ではテントが売れたら寝袋も動くものなんです。おそらくですが、皆さん自粛しながらキャンプへの思いを馳せていたのではないでしょうか。まずは大きな買い物であるテントを購入され、楽しみにしているのかな、と。

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中里豊 コールマン ジャパン アジアパシフィック・リージョン 代表取締役社長|「つい先週も友人とキャンプに行ってきました」長らく日本のキャンプ市場を牽引してきた彼は、季節を問わずプライベートでキャンプを楽しむ根っからのキャンパーだ。

──テントはどのサイズが売れたのでしょうか?

コールマンのメインターゲットはファミリー層なので、そこが販売面でもボリュームゾーンになります。加えて、ツーリングなどで使われるソロ用のテントがこの2年余りずっと売れ続けています。ソロキャンプ向けのギアはこの4、5年よく売れているのですが、とくにこの2年はほぼ毎月昨対比を上回っています。ですので、必ず、状況は好転すると考えていました。

──想定通り、自粛期間の解除後、いまや人気のキャンプ場では予約が取れないほどの人気です。

そうですね。キャンプ場が再開されてからは健常な市場に戻りました。皆さん自粛期間中にストレスを抱えられていたんだと思います。また、コロナ禍がなければキャンプに興味を示さなかったであろうライトユーザーなど広い層が来場されています。海外旅行には行けない、国内旅行も白い目で見られるという状況でしたから。8、9月の盛り上がりはバブルに近かったと思います。

特に新規参入者が増えていますね。キャンプギアも昨今はクールで多彩、そして値頃感も良いことから入りやすいのだと思います。さらに、ひとりあたりの年間キャンプ回数も増えています。日本のキャンプ人口は30代、40代のファミリー層がメインです。ここに10代や、シニア層が加わってくると、もっと強い市場になると考えています。ただ、これが何年継続するかは、これからの状況によるでしょう。

海外のアウトドア市場も同様に堅調

──キャンプの本場であるアメリカ、ヨーロッパ、アジアの動向はいかがでしょうか?

マクロでは世界的に同じ傾向にあって、アウトドア志向は非常に強いです。各国それぞれ空間の制限があるので、結果的にレジャーの選択肢はどこも似てきます。キャンプは家族で楽しめるので、コロナ禍において立派なオプションになっています。

──アメリカでは、キャンプ・アウトドア関連の需要が一時期落ち込みを見せながらも、ここ数年は日本と同じくじわじわと盛り上がりを見せていると聞いています。

まさにそうです。もともとアウトドア市場が大きいアメリカは、コロナ禍で一気に需要が増えました。日本と同様ですね。店頭ではアウトドア製品が無くなりつつあるようです。

コールマンUSAチームが言うには、これまで店舗から本社に「テント3000張り、チェア5万脚を」というオーダーのところ、最近はとにかく在庫の無いものが多いため、「何がある?」(なんでもいいから今何が手に入る?)と聞いてくる(笑)。そういう品薄な状況です。日本では、気候に合わせ最適化された日本企画の商品が7割ほどありますが、それでも需要に追いつくのは大変なほどですね。

製品のディティールにこだわる日本人

──日本の市場は、近年デザイン性に優れたものが求められています。アメリカで求められる商品との違いはどこにありますか?

大きく3つあります。ひとつは単純に気候や生活様式の違い。アメリカは寝袋のサイズが長いとか、日本は湿気や雨量も多いなど、必然的な仕様の違いですね。もうひとつは、デザイン性やミニマルさなどディティールに日本人はこだわる傾向がある。そしてアメリカは「価格」と「楽さ」が重要で使い倒す傾向があり、実用性にウェートがあります。明らかに方向性が違いますね。

──キャンプに対する気軽さが違うんでしょうね。そして、日本はジャンルを問わず製品のディティールにこだわる。

収納の仕方やサイズ、ほかのギアとのコンビネーションなど、日本人は細部にこだわりを見いだします。キリがないほどです(笑)。私たちもニーズは取り入れますが、アメリカらしさやコールマンらしさが消えないように考えますね。

恒例のキャンプイベントを開催した理由

──今年も、恒例の『The Coleman Camp』(2020年11月21日~23日)を開催されることが決まりました。キャンプは「3密」になりにくいとはいえ、リアルイベントを企業として開催するのは賛否、不安も大きいと思います。開催に至った経緯や思いを教えてください。

多くのキャンプファンから望まれている恒例のイベントですが、さすがに今年はいろいろと議論がありました。ただ、「やりたかった」という強い思いがすべてを前向きにさせました。

今年はできなかった、というのは簡単です。しかし議論の早い段階から、「できるためにはどうするか?」と意識が変わっていったのです。最後は、やっぱりやろう!という私たちの情熱ですよね。それと、この半年で新型コロナに対する「知見」が溜まったことも大きい。だからこそ「どうしたらできるか」という議論になったと思うんです。

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2019年に妻恋で行われたColeman Camp 2019の様子

──最も気を付けているところはどこですか?

空間的な制限をどれだけ設けるかということですね。もちろんガイドラインは作成していますが、衛生面に関してはすでにどこのキャンプ場にも注意書きがありますし、キャンパーは皆さん意識が高いと信じていますのであまり心配していません。イベントのコンテンツやワークショップ、ライブなどは、打てる対策は万全を講じて実施します。

──お客さんにコロナ禍での開催をいかに意識をさせないか、本当の意味で、自然とのふれあいを楽しめるかを重視しているわけですね。

初心者の方も増えていますので、「グッドキャンパーの心得」というものも作成しました。ただ、誤解を恐れずに言えば、本心としてはキャンプ場に行ったら好きに楽しんで欲しいんです。毎日見えないストレスを抱えているわけですから。とはいえ、最低限他人に迷惑をかけないなど、そういう心得のようなものは、末長くキャンプを楽しんでいただくために必要だろうということです。

「変わること」より「変わらないこと」にも目を向けていきたい

──コロナ禍に収束の兆しはなく、また、ニューノーマルなど新しい発想で生活する時代になりましたが、キャンプが人気の理由をどう解釈されますか。

正直、わからないです。ただ、あまりにもみんなが「どう変わるべきか」を議論しすぎている気もします。それよりも、「変わらないこと」「変わるべきではないこと」にも目を向けていきたい。

キャンプの楽しみ方は人それぞれですが、キャンプの魅力は普遍ですよね。「友人や家族とキャンプに行ってリラックスしたい」、これは素朴な感情であり、ちょっと前までは当たり前のようにできたことです。コロナ禍に関係なく、社会は高速に複雑に動きながら流動化もしています。もちろん、ビジネスではそこを察知することも重要ですけどね。

──「変わらない人間はダメ」という情報が多いですよね。

人間の心の機微や変化に目を向けることを忘れて「変わらないといけない」とか「変わるべき」とかが目的の議論ばかりしている人には、コールマンの椅子を差し出して「ちょっと落ち着きませんか?」と言いたいですよ(笑)。

それよりも、地球環境の変化のほうが怖い。私たちは、これからもキャンプを楽しむことができる環境を守りながら、キャンプをすることで、皆さんが自然や時間の流れ、そういうことを考えるきっかけになればいいなと思っています。

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