横浜のバス「激セマ・急坂区間」5選 ゆずも歌った地元の難所 380万市民を支える運転テク

横浜のバス「激セマ・急坂区間」5選 ゆずも歌った地元の難所 380万市民を支える運転テク

  • 乗りものニュース
  • 更新日:2021/06/11

380万人の市民を支える「坂の街の路線バス」

横浜市は総面積にして400平方キロメートル以上。その市域の8割弱は丘陵地や山岳部が占め、すんなり鉄道や広い道路を整備できない地域を細かくカバーするために、路線バスが欠かせません。

なかには道が狭く、かつ急坂で、ドライバーのテクニックが光る路線も少なくありません。人口約380万人を擁する日本一の「坂の街」、横浜の狭隘・急坂バス路線を見てみましょう。

【磯子区】岡村町・天神前付近:「ゆず」の地元は難所だらけ?

・経由するバス:横浜市営バス9系統(横浜駅前など~滝頭)、78系統(根岸駅前~磯子駅前)ほか

小高い丘の上に切り拓かれた磯子区の岡村地区は、横浜が生んだフォークデュオ「ゆず」の地元として知られます。北側に鎌倉街道(神奈川県道21号線)、南側に横須賀街道(国道16号)が通り、抜け道としてもよく使われることから、時間帯を問わず車通りが絶えない地域です。

そのなかでも交通量が集中する「岡村中学校前」交差点(「古泉」バス停付近)は、狭い交差点を車幅2.5mの大型路線バスが大きなカーブを描いて曲がっていくポイント。バス通行のために交差点の停止線はかなり後方に引かれていますが、たまに事情を知らない車が白線を越えて停車すると、クルマ数台を巻き込む大規模なバックを余儀なくされるほどです。

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岡村中学校前交差点を右折する市営バス78系統(宮武和多哉撮影)。

また岡村天満宮(「天神前」バス停付近)近辺では、まるでスラロームのように道路はカーブが続き、バスは常にセンターラインいっぱいに幅をとって走り抜けていきます。この区間のバスはおおむね10分に1本。運転手の方は対向車にも歩行者にも神経を使うといいます。

こうした状況は「ゆず」の曲中でも、「なんでこんな狭い道がバス通りなんだろう」(「四間道路」)や、「バスがやたら走るのは近くに駅がないからさ」(「岡村ムラムラブギウギ」)などと歌われています。岡村町は「ゆずっ子」ことゆずファンにはとても知られており、街の中を少し歩いただけでも、ライブなどで着用していた「岡中ジャージ」を販売する「オリオンスポーツ」や、PVが撮影された岡村天満宮など、ファンなら訪れたくなるスポットがたくさんです。

京急と神奈中の名物「狭隘」路線!

ほぼ全線が狭隘区間という名物バス路線もあります。

【港南区】上大岡駅~南高校前:え、そこ曲るの…?

・経由するバス:京浜急行バス「上1」(上大岡駅~南高校前)

京急線と横浜市営地下鉄ブルーラインが乗り入れる上大岡駅は、丘陵地帯に挟まれた谷底にあり、周囲の傾斜地に向かう約50系統ものバスのために、12番線までの乗り場を擁する巨大なバスターミナルが整備されています。その中でも1番線から発車する京急バス「上1」系統は運行距離およそ1.4km、所要時間にして10分ほどですが、坂道が連続するためか通勤・通学利用が双方向で多く、平日朝方には1時間10本ほどのバスが運行されています。

この路線が経由する大久保地区は狭い道路が複雑に入り組み、バスは往路と復路でルートが異なるため、土地勘がないと「どの筋にどの方面のバス通が来るのか」見分けがつかないことも。また途中の「大久保池跡」バス停近辺では、車内から眺めていても「え、曲がるのそっち?」と驚くような路地に入り、商店の正面看板をかすめるように進んでいきます。

ちなみに、南高校前の近くでは、月見ヶ丘団地、港南区総合庁舎前などを経由する神奈中バス「上202」系統などのバス路線も、かなりの勾配を走り抜けています。

【中区・南区】港の見える丘公園前~中村橋:「フランス山」を上り山岳区間へ

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神奈中バス11系統。バス専用信号にしたがい、石川小学校前~唐沢間で対向便と交換する(宮武和多哉撮影)。

・経由するバス:神奈中バス11系統(桜木町駅~保土ヶ谷駅)

桜木町駅から保土ヶ谷駅へ、最短距離のバスなら20~30分ほど走る区間を、「YAMATE LINER」の愛称がついたこの路線は、じっくり50分以上かけて走破します。神奈川県庁や山下公園の近辺でこそ幹線道路を通るものの、唐突に右折して「フランス山」をのぼり始めると、その光景は一変して山岳路線に。アップダウンが多く、両脇に住宅がびっしり張り付く山手本通りを、バスは慎重に進んでいきます。もし時間があれば「港の見える丘公園」バス停で途中下車し、潮風に吹かれながら横浜港や、ランドマークタワーといえる横浜ベイブリッジなどの眺めを楽しむのも良いでしょう。

また沿道は、バスどうしがすれ違える場所が限られています。要所要所で無線連絡をとり、バス専用信号に従いながら車幅ギリギリで抜けていく運転手さんのテクニックは、車内から眺めているだけでも息を飲むほどです。

たった1.3km、10分の路線が「超黒字路線」

アップダウンのきつさは、バスの利用にもつながっているようです。

【旭区・保土ヶ谷区】介護施設くぬぎ台~鶴ヶ峰駅南口:坂道が生んだ「超黒字」路線

・経由するバス:横浜市営バス75系統(介護施設くぬぎ台~鶴ヶ峰駅南口)

保土ヶ谷区の「くぬぎ台団地」と相鉄の鶴ヶ峰駅を結ぶ横浜市営バス75系統(くぬぎ台線)は、営業係数51.4(100円稼ぐ経費が51.4円。2019年度)という、市営バスでナンバーワンの高収益路線として知られています。

その秘密は、わずか200mほどで10m以上の高低差を行き来する、鶴ヶ峰駅南東の坂道にあります。駅側では見下ろしていた新幹線の高架を数秒後にくぐり抜けるほどの坂道ですが、横にある歩道はこの区間だけ50段近い石段となっており、近距離にもかかわらず徒歩や自転車ではなくバスを利用する人々が多いのも、確かにうなづけます。バスはその後、丘の上にある「くぬぎ台団地」まで登り、その先の谷底にある「介護施設くぬぎ台」まで下って終点となります。

ここまで全長約1.6km、終点まで乗車しても9分程度で、本数の多いくぬぎ台団地止まりの区間便だと1km少々。運賃は均一料金(220円)がベースのため、「最小限(短距離)の営業経費で正規運賃」を稼げることが、黒字を生んでいると推測されます。

【保土ヶ谷区・西区】聖隷横浜病院入口・元久保町付近:丘の上の病院へ

・経由するバス:相鉄バス「浜4」(横浜駅西口~保土ヶ谷駅東口)、「旭4」(美立橋~桜木町駅)、横浜市営バス32系統(保土ヶ谷車庫前~関内駅北口)など

これらの路線は、JR保土ヶ谷駅南東の丘陵地に位置する聖隷横浜病院の輸送を担います。たとえば相鉄バスの「浜4」の場合、「浜松町」から「岩井町坂上」バス停まで2kmほどの区間で、こんもり盛り上がった丘陵の上を走り、両端ではU字型のカーブを描いて台地を上り下りします。

聖隷横浜病院の前後はいずれの路線も、中型のバスがようやくすれ違える程度の2車線道路を通ります。市街地に近いにもかかわらず、冬場には坂道が凍結することもあるそうです。

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岩井町坂上付近を行く相鉄バス浜4系統(宮武和多哉撮影)。

※ ※ ※

横浜市域をカバーするバス路線は、山岳部の長時間走行も多いものの、均一運賃がベースとなることから、前出した神奈中11系統のように、乗客が多いにも関わらず厳しい経営状況に置かれる場合もあります。運転手の不足も相まって「必要とされても減便」が当たり前となる中で、眺めが良くちょっとしたスリルもある横浜のバス路線を、「走る展望台」のつもりで乗車してみてはいかがでしょうか。

※一部修正しました(6月11日11時50分)。

宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)

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