リュックと添い寝ごはん 様々な“出会い”のなかで急成長を遂げた彼らが辿り着いた、バンド史上最大キャパ・恵比寿 LIQUIDROOM公演を観た

リュックと添い寝ごはん 様々な“出会い”のなかで急成長を遂げた彼らが辿り着いた、バンド史上最大キャパ・恵比寿 LIQUIDROOM公演を観た

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  • 更新日:2021/11/25
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リュックと添い寝ごはん 東京少女リリースツアー"girl" 2021.11.21 恵比寿 LIQUIDROOM

「今年は“出会い”という目標を掲げてやってきました」。本編のラストナンバー「ほたるのうた」の直前に、松本ユウ(Vo/Gt)はギターを爪弾きながら語りかけた。松本が言う「出会い」とは、対人(ひと)だけではない。新しい音楽、出たかったイベント、いままで知らなかった自分自身。そういういくつもの出会いを大切に、2021年のリュックと添い寝ごはんは駆け抜けてきた。昨年12月のメジャーデビューからは1年弱。様々な「出会い」のなかで急成長を遂げたリュクソが辿り着いた、バンド史上最大キャパとなる東京・恵比寿 LIQUIDROOMのツアーファイナルだ。

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今回はリュクソが11月2日にリリースした初のシングル「東京少女」を引っ提げた東名阪ワンマンツアーということで、会場のBGMには、ENJOY MUSIC CLUBの「東京で考え中」、Laura day romanceの「東京の夜」、MONO NO AWAREの「Tokyo」など、メンバーが好きそうなアーティストの、かつ「東京」をテーマにした楽曲が流れていた。定刻。BGMが切り替わり、SAKEROCKの「One Tone」のSEにのせて、堂免英敬(Ba)、宮澤あかり(Dr)、松本の3人がステージに現れた。ドラムセットの前でこぶしを合わせる。「自由に楽しんで!」という松本の言葉を合図に「くだらないまま」からライブは幕を開けた。宮澤が刻む軽やかなリズム、堂免によるふくよかなベースラインと、松本の朴訥としたボーカルが紡ぐ懐かしいメロディ。リュクソが作り上げる雰囲気は、どこまでも穏やかだが、そこに託されたメッセージは「生きること」の核心を鋭く突いてくる。

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宮澤のドラムのテンポが上がり、演奏を途切れさせずに「青春日記」になだれ込むと、フロアからは一斉に腕が上がった。サポートギター・ぬんの切り裂くようなソロがその熱気に拍車をかける。ベースとドラムの陽気なかけ合いが心踊る「PLAY」のあと、いきなり披露された未発表の新曲「会社員」は斬新だった。ソーラン節を思わせる生命力に満ちたビートを、2020年代のポップスとして聴かせるトリッキーなアプローチは間違いなくバンドの新機軸だ。リュックと添い寝ごはんの音楽には、メンバーが生まれる前の、80年代、90年代の日本のポップスの美学が受け継がれるが、それらを自分たちのやり方で丁寧に咀嚼されているからこそ瑞々しくてユニークな味わいがある。

ステージがブルーに染まり、透明な光が降り注いだ「海を越えて」と、途中で急激にテンポチェンジする「渚とサンダルと」をセッションでつなぎ、爽やかな海の曲が続いた。MCでは、「めっちゃ人がいる。うれしい!」と素直に喜びを口にする松本に、「初めてじゃない? この人数」と同意する堂免。ソールドアウトした最大キャパのライブに宮澤は少し緊張気味だという。飾らない会話でお客さんを和ませつつ、口笛のイントロが脱力感を生んだ「ふたり暮らし」、一体感のあるハンドクラップに揺れた「ホリデイ」から、ライブは後半戦へと向かった。松本が上着を脱ぎ、じんわりと歌い出した「手と手」では、途中から宮澤のドラムがスピーディーなエイトビートへと変わった。激しく明滅する照明の光。「手拍子できますか?」と呼びかける松本の声も熱を帯びていく。

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3人の技術が底上げしたことで、バンド全体が格段に成長していることが1曲1曲の演奏からひしひしと感じられる。そんなライブのなかでも、いまのリュクソの挑戦と進化がいちばん詰まっていたのが、今回のツアーの主役とも言える「東京少女」だった。一瞬で心を鷲掴みにするイントロのユニゾン。終盤にかけて、ダイナミックに加速する宮澤のドラムと、さりげなく主旋律に寄り添う堂免のハモリ。やわらかなメロディの奥でマグマのように滾る、自分らしく生きたいという渇望、そして、きっと夢を掴んでいくんだという情熱が、音源で聴くよりも何倍も生々しく、力強く伝わってきた。

フロアの体感温度がぐっと上がったまま、クライマックスに向けてアップテンポな楽曲を次々に畳みかけていった。疾走感あふれる「ノーマル」のあと、「生活」では、松本と堂免が全身をくの字に折り曲げながら激しくギター、ベースを掻き鳴らす。「あたらしい朝」では、真っすぐにフロアのほうを向いて歌を届ける松本の後ろで、ドラムの宮澤の周りに堂免とぬんがじわじわと集まって演奏していた。ステージ上の「楽しい」が、そのままフロアへと伝播していく。

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ラスト1曲を残したところで、松本がこれまでの歩みを振り返った。「僕らが本格的に活動をしはじめたのが去年の3月でした」と。高1でバンドを結成し、高校時代から注目を集めてきた彼らが、高校を卒業したタイミング。それがコロナ禍と重なった。だからこそ、「いろいろな選択があったし、すごく悩んだ1年でしたけど」と前置きをすると、「こうやって恵比寿リキッドルームにみんなで集合できたのが本当にうれしいです。また声を出したり、歌えたりする時期もくると思うので。そうなったら、もっと大きいステージにみんなで集合しましょう」と再会の約束を交わして、最後の1曲「ほたるのうた」に結んだ。メジャーデビューアルバム『neo neo』の最後に収録されたこの曲は、アルバムのツアーでは松本が弾き語りで届けたが、今回はバンド編成だ。6/8拍子で刻むゆったりとしたグルーヴのなかで揺蕩うフォーキーなメロディ。そこには<出会い、別れ、つなぐほたるは 大切な道標>というフレーズがある。世界は<つながり>によって回っていくということ。その人生は決して独りではないということ。そんなことを伝える1曲は、「出会い」をテーマに様々なつながりを結んできた1年の集大成となるこの日のライブに相応しい締めくくりだった。

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アンコールでは、それぞれがツアーファイナルを迎えた心境を語った。「新たな挑戦が込められたツアーでした。そういうのが実を結んで、みなさんが集まってくれたのは……嬉しすぎて嬉しいです」という堂免に「語彙力がやばい(笑)」と、すかさずつっこむ松本。大阪や名古屋では各地の名物グルメの話をしてきたという宮澤は、「東京はご飯トークができないから困るよね(笑)」と言うと、「名物トークがないってことは故郷ってことだからね」(松本)、「それっていいことだよね」(堂免)と相槌を打つふたり。その流れで、まさに「故郷」をテーマにした新曲「home」へ。「“おかえり”というテーマのもと、心温まる曲になりました」。そんなふうに松本が紹介した「home」は、クリスマスソングのような親しみやすいメロディが紡がれていくアットホームなナンバーだった。ラストは、再びアップナンバー「グッバイトレイン」で終演。悲しみも、よろこびも、一緒に「この先」へと引き連れていくような晴れやかな別れの歌で全17曲のライブが幕を閉じた。

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メジャーデビュー当時のリュクソは、どこか高校時代の軽音部の延長のようなノリとゆるさでライブをすることもあったように思う。そこに親しみやすさも覚えたが、いまのリュクソのライブから感じるのは、もはやインディーズバンドではないという自覚と、もっともっと良い音楽を届けていくという貪欲な向上心だ。間もなくメンバー全員が20歳を迎えるリュックと添い寝ごはんのアーティスト人生はここからが本番だ。まだまだ彼らの成長は止まりそうにない。

文=秦理絵 撮影=Momo Angela

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