YouTubeが日本に与える経済的、文化的、社会的影響とは? パリーグTVやポニーキャニオンの事例も

YouTubeが日本に与える経済的、文化的、社会的影響とは? パリーグTVやポニーキャニオンの事例も

  • Real Sound
  • 更新日:2021/11/25
No image

YouTubeの発表資料

11月11日、YouTubeの日本における経済的、文化的、社会的影響の結果が発表された。英国の独立系コンサルタント会社・Oxford Economicsによる調査「YouTube Impact Report」によるもので、昨年2020年は日本のGDP(国内総生産)で2390億円の貢献、フルタイム雇用で75970人を創出している。

本調査では影響の全体像を把握するための定性的・定量的な分析において、ユーザー4000人超、クリエイター1080人以上、事業者500以上を対象として匿名調査を3回実施。そこで得られたデータと公式統計を用いて、YouTubeのクリエイターエコシステムの経済的な影響を、雇用やGDPへの貢献度の観点から分析した結果となっている。

参考:【動画】パリーグTV、躍進のきっかけとなった「確信歩き」

■経済効果は被雇用者や国内サプライチェーン全体に波及

YouTubeクリエイターはYouTubeを介して直接生み出される収入(広告収入やライセンス料など)から収益を得ることができるが、その収益でクリエイターとして生計を立てている「クリエイティブ起業家」、メディア企業、音楽業界などを問わず、その経済効果はクリエイターの収入だけに留まるものではない。

なお本件においてクリエイティブ起業家とは、YouTubeからの直接収入またはYouTubeを起点に動画以外の分野で収入を得ている者、自身のチャンネル運営をサポートする正規社員を雇用している者、自身のチャンネル登録者数が1万人以上いる者と定義されている。

DIYや料理動画を制作するYouTubeクリエイターであれば、撮影のために材料や備品などを調達し、ほかにも撮影機材・音響機材の購入や、編集・制作スタッフの雇用も必要になってくる。このようにクリエイターは国内企業からYouTube動画の制作に必要なものを購入しているため、その経済効果は広範囲に波及することになる。さらにはサプライチェーンにおけるクリエイターや被雇用者による消費が、経済や地域社会にも影響を与えていく。

またYouTubeは、クリエイターがYouTube以外でも収益を上げるきっかけを創出している。クリエイティブ起業家であればブランドとの提携や、YouTubeでの活躍をもとに自身のグッズを販売できたりする。こうした「プラットフォーム外」での収益によってクリエイター自身、被雇用者、国内サプライチェーン全体に経済効果がもたらされていく。

■クリエイターだけでなく中小企業にとっても重要なツールに

クリエイティブ起業家はYouTubeが提供する誰しもが発信できる柔軟性と機会を活用してプラットフォーム内外で商業的成功を収めており、調査結果にもこのようにクリエイターの存在が明確に反映されている。

10万人以上の登録者を持つチャンネルが5500以上と前年比で45%増加し(YouTube調べ)、クリエイティブ起業家の69%が「YouTubeがビジネスの目標達成にプラスの影響を与えた」、同じく64%が「YouTubeによって、自分のニーズに合った方法で仕事をする機会が得られた」と考えている。2021年6月時点では、日本国内で100万円以上の収益を上げているYouTubeチャンネル数が前年同期比で50%増加した(YouTube調べ)。

企業は顧客とつながり、競争力を高めるためにYouTubeを活用している。自社のチャンネルを通じた戦略的な広告出稿や、YouTubeでビジネスに役立つ情報の収集などで売り上げを伸ばした。YouTubeチャンネルを持つ中小企業の51%が「ビジネスの成長を促進するうえで、YouTubeが戦略的パートナーになっている」、同じく58%が「YouTubeは顧客に関する理解を深めることに役立った」と考えている。また54%が「YouTubeで簡単に情報にアクセスできることで、従業員の生産性が向上した」、52%が「YouTubeは世界中の新しい視聴者にリーチすることに役立っている」と考えている。

■誰でもクリエイターとして日本の文化を世界に発信

日本のクリエイターはYouTubeを介して、海外の視聴者に向けて文化を発信できるようになった。地元の声を伝え、地元で制作したコンテンツを宣伝し、日本らしさを世界に広めている。クリエイターの70%が「YouTubeによってさまざまな国の視聴者にコンテンツを届けることができる」と考えている。日本国内のチャンネルで作成されたコンテンツの総再生時間のうち、10%以上が海外からの視聴となっている(YouTube調べ)。

YouTubeでは世界各地のさまざまな経歴や年齢のクリエイターに対し、従来のメディア業界では実現が困難だったコンテンツを公開する機会を提供している。このオープンなカルチャーのおかげで、YouTubeは今では多種多様なコンテンツを扱う一種のコンテンツライブラリーとなった。こうしたコンテンツは社会に対話を生み出し、新しいコミュニティーを構築し、社会の変化を促進する可能性を秘めている。ユーザーの74%が「YouTubeは幅広いコンテンツが集まっている場所である」、マイノリティーを自認するクリエイターの72%が「多様性と革新性に優れたコンテンツを作成するようYouTubeコミュニティーに応援されている」と考えている。

■学習方法やコロナ禍の影響に関する興味深い調査結果

日本のユーザーはプライベートと仕事の両方において、YouTubeから資格取得や転職などの幅広いスキルと知識を習得できるようになった。ユーザーの83%が「情報や知識を集めるためにYouTubeを使用している」、同じく68%が「実践的なスキルを磨くために YouTubeを使用している」と回答。YouTubeを使用する子どもを持つ親の60%が「YouTube(子どもが13歳未満の場合はYouTube Kids)により、子ども達が自分に合う柔軟なペースで学習できている」と考えている。またYouTube を使用する学生の50%が「課題や個人的な学習を補助するためにYouTubeを使用している」と回答した。

YouTubeは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響下において貴重な情報源ともなり、社会に孤立や混乱が生じる時期に人々や企業の貴重な情報源として活用されている。ユーザーの64%が「COVID-19 拡大が始まって以来、YouTube が役に立っている」と考えている。

ここまでの「YouTube Impact Report」は、オックスフォード・エコノミクスの長井滋人(在日代表)が解説。終盤の学習に関しては、160万人以上が登録しているチャンネル「とある男が授業をしてみた」を運営する葉一が、自身の例で軽く補足するかたちになった。

■「確信歩き」で確信 球場への集客機能を持ったプラットフォーム

続いてパシフィックリーグマーケティングの園部健二(執行役員)が事例を語った。

パシフィックリーグマーケティングは、2007年にパ・リーグ6球団が共同出資して設立した、パリーグ全体のファンを増やすことを目的とした会社。6球団での取り組みを実施し、個々の球団の企業努力と役割分担のもとでファン数の獲得のため動いている。そうした中で2012年に「パ・リーグTV」という有料配信サービスを運営するなか、新しいファンを増やすためにYouTubeを活用。2014年から片手間でやっていたが、2017年に「確信歩き」という今までやっていなかったコンテンツを出して、初めて100万再生に到達した。

これをきっかけに、もっと企画の切り口やサムネイルやタイトルを深堀りしていけば、視聴数もファンも増えていくことが判明。この「確信歩き」から登録者数も右肩上がりに伸び、今では登録者数が80万人を超えた。ファンの反応もSNSで良く、昨年の夏に株式会社Bitstarが発表したインフルエンサーランキングでは名だたるYouTuberと並んで「パリーグTV」が3位にランクインした。

選手からの反応もよく、千賀(滉大)投手が新しい球種を開発した際に自身のInstagramで「パ・リーグTVで取り上げてほしい」と要望を寄せたり、源田(壮亮)選手がファインプレーした時にベンチから「今のはパ・リーグTV行きだな」とか掛け声があったりなど、「パ・リーグTV」で取り上げることがブランドになるところまでチャンネルが成長した。

あわせてパ・リーグのファン数右肩上がりで伸びており、2020年の独自調査では2600万人のファンを獲得。2019年と比べ130万人の増加を確認しており、これにはYouTubeが大きく寄与していると考えている。収益面でも非常にインパクトが大きく、本格的に始めた2017年、2018年以降から大きく貢献している。

パリーグの来場者と視聴者の属性は、10代から30代が約70%を占めている。まさに新しいファンを獲得するという必要不可欠なプラットフォームになったコロナ禍前は1試合あたり来場者数が27000人で成長していたところ、現在は入場者数制限をつけた上で運営しているので、集客数が一気に低下。喫緊の課題として球場の集客をどうにかしなければというのがあるが、パ・リーグTVのMAU(月間アクティブユーザー)が1000万人まで伸びてきており、来場者の属性と照らし合わせると、来場への潜在ニーズは高いと考えている。

今後はYouTubeやGoogleの機能を使って、視聴者を来場につなげるイベントを積極的に行っていき、々にとってYouTubeは単なる配信プラットフォームではなく、球場への集客機能を持ったマーケティングプラットフォームとして活用できるものだと信じていると締めくくった。

■UGCでもマネタイズ SVODとAVODの拡大傾向で海外にも

最後はポニーキャニオンの今井一成(執行役員/マーケティングクリエイティブ本部・本部長)による事例。

アーティストの育成やヒット曲の制作繰り返す中で映像を使ったプロモーションは、レコードやCDの全盛期においても非常に大きかった。色んな歌番組などテレビメディアで成長してきていたが、スマホで音楽を楽しむ時代になってからは、YouTubeとの関わり方が非常に大きくなっているとのこと。

YouTubeと音楽業界の関係性はスタート時は必ずしもいいものではなかった。「TUBEFIRE」というYouTube上の音源を無料でダウンロードすることができるサイトの存在が悩ましく、レコード会社が集まって訴訟を起こす事例も過去にわ存在も。2014年に和解はしたものの、2014年から2018年の間は、MVを見せすぎるとCDが売れない、ダウンロードやストリーミングの数が伸びないなど、ネガティブな期間だったことを明かす。

しかし、2018年に日本でも、海外では先行していたYouTube MusicやYouTube Premiumといった有料サービスが発表された。これによりレコード会社の視点として、YouTubeがプロモーションのメディアから、マネタイズもできるメディアに移り変わっていった。

YouTubeは、アルバムの収録曲でMVがないものでも、アートトラックビデオというジャケット写真を載せるサービスも提供。UGC(ユーザー生成コンテンツ)では「踊ってみた」など、ユーザーが独自に制作した映像でもマネタイズできるようになっている。

YouTubeではAVOD(広告配信)が従来の形だったところ、SVOD(サブスク配信)で収益を確保できるようになった。それにより、例えばOfficial髭男dismは最大限にYouTubeを活用しており、松原みきはデータトラッキングからYouTubeでの動きを加速させた。またチェッカーズはカタログをアートトラックで公開するなどアーティスト単位でYouTubeの機能を最大限に活用した事例が増えている。

これまで収益はAVODに偏っていたが、YouTube Premiumの好調により全体的に伸長している。無料で見せる媒体だったものが、2020年、2021年の直近で見てもSVODが伸びている。広告の収益が上がる構造になってきて、収益のインパクトが大きくなった。それからUGCで収益が上がるのが30%程度。SVODとAVODで拡大傾向にあり、YouTubeを使って海外展開に持っていけるところに状況は変化している。

(文=真狩祐志)

真狩祐志

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加