「楽しいなんて感覚でやったことがなくて...」それでも大塚愛(39)が歌い続ける“本当の理由”《デビューから19年》

「楽しいなんて感覚でやったことがなくて...」それでも大塚愛(39)が歌い続ける“本当の理由”《デビューから19年》

  • 文春オンライン
  • 更新日:2022/01/16

「アイドルだと認識されて苦しかった」大塚愛(39)が明かす“デビュー直後の戸惑い”《『さくらんぼ』から19年》から続く

大ヒット曲『さくらんぼ』をはじめ、『SMILY』、『プラネタリウム』など、これまで数々の楽曲を世に生み出してきたシンガーソングライターの大塚 愛さん(39)。

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デビューから19年、常に第一線で活躍しつづけてきた大塚さんですが、「今もまだ目標は達成できてない」と言います。さらには、「基本、仕事は楽しくない」と語る意外な真意とは――。お話を聞きました。(全2回の2回目/前編から続く

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大塚 愛さん

◆ ◆ ◆

――前編では、自分では尖ったことをやっていたつもりなのに、デビュー直後はそれが「かわいい」と捉えられてしまったことに違和感を覚えていたと伺いました。では、今の大塚さんはどのカテゴリーにいると感じていますか?

大塚 何なんでしょう。よく分かんない人じゃないですかね(笑)。

――(笑)。デビューしてからは、ご自身の実力不足を感じる機会も多かったとのことですが、この19年間の活動を振り返ってみて、なかでも大変だったこと、失敗したなと思うことはありますか?

大塚 もう毎回と言ってもいいぐらいですね。ライブもテレビも、うまくいったなと思えるのはほんと5本の指に入るぐらいしかないから、ほぼ失敗みたいな。その中でもこれ、というのをあげるのは難しいんですけど……一番つらかったのは、『ポケット』というシングルを出したときに、テレビに出たんですよ。でも、本番になったらイヤモニの電池が切れていて、音が出なかったんです。

それでも、外で鳴ってる音を拾ってなんとか歌ったんですけど、自分の中でその楽曲への思い入れとか、一生懸命大事にしたいという気持ちが強すぎちゃって、そうしたトラブルがバッて起きたときに、どうしようってなってしまって。生放送だったし、もう怖くて、声も震えちゃって全然歌えなかったんですよね。それが本当にショックで、終わった後、楽屋ですごく号泣したのは覚えています。

「頑張って友達を作らなきゃ」とは思わない

――そんなことが……。そうした大変な経験をしたときに、例えば友達に愚痴をこぼしたり、弱音を吐いたりすることもあるんでしょうか?

大塚 もともと、自分から表に出て誰かに声を掛けるようなタイプじゃないんです。誘われたらいく、という感じで。

――ご家族に相談されることもあまりなかったですか?

大塚 親にも自分のことはほとんど喋らないので、私がこういうことで悩んでいた、みたいなことは知らないと思います。あんまり「お母さん!」ってタイプじゃないので(笑)。

――子供の頃から、人とのコミュニケーションは受け身な方だったんですか?

大塚 小学校の低学年くらいまでは、すごい強気な人だったんです。何でも一番がいいし、女の子のグループを引っ張ってるような、そんなタイプでした。でも、それが巡り巡って、1回いじめられたことがあって。それからは、グループで動くことに一切興味が無くなりました。色々な人と仲良くなるよりは、信頼できる1人か2人と一緒にいればいいんだと思って。

――そう思われたのが小学生の頃?

大塚 小学校の高学年くらいですね。なので、頑張って友達を作らなきゃと思ったことは、それからは全くないですね。さすがに子どもを産んでからは、いろんな人としゃべっていかなきゃいけないというのもあって、ちょっとずつ社交的になって、ここ数年でようやく自分から誘えるようになったぐらいです。でも基本的には、やっぱり少人数でいいかなと。

「基本、仕事は楽しくないです(笑)」

――まずは大変だったこと、つらかったことについて伺いましたが、反対にこの19年間で楽しかったことを挙げるとすると、何になりますか?

大塚 んー、もちろん楽しいこともたくさんあったと思うんですけど……、でも、仕事では基本、楽しいことはないかもしれないですね。打ち上げとか、そういう仕事とは関係ないところは楽しいんですけど、テレビとかライブに出ても、表から見えている絵が今どうなってるかを常に考えて、自分の中で審査しながら歌っているので、楽しいなんて感覚でやったことがなくて。

――曲を作っているときはどうですか?

大塚 最終的にミックスをやって、ああ、よくできたな、というときだけが唯一喜びを感じられる瞬間ですね。だから基本、仕事は楽しくないです(笑)。

――なるほど(笑)。でも、仕事が楽しくないとしたら、それでもデビューから19年間、ここまで活動を続けることができたのはなぜなんでしょうか?

大塚 目標が達成できてないから、ということだと思います。

自信を持って「好き」と言ってもらいたい

――目標とは?

大塚 やっぱり自分自身が満足できるレベルになることと、それが世間のイメージともイコールになることですね。自分でも自分のことをすごく好きだって言いきれて、ほかの人たちにも自信を持って、「大塚愛好きなんだよね」って言ってもらえるようなアーティストになりたい。だから、それは今も達成できてないんです。

――しかし、大塚さんのファンもかなり多いと思うのですが。

大塚 誰かから「どのアーティストが好き?」って聞かれた時に、本当は好きでいてくれていても、やっぱり「大塚愛!」とは言いにくいところがあるのは、自分の中でもわかっているんです。そこで私の名前を出したら、「へぇー……」ってなっちゃう雰囲気というか。最近は時代も変わって、今の若い人たちはそういうのを気にせずに言えるようになってるというのも、何となく認識はしてるんですけど。

――そういう空気があるとすれば、それはなぜだと思われますか?

大塚 何なんでしょうね。でもやっぱり、歌唱力がすごいとか、サウンドがもうめちゃくちゃかっこいいとか、そういうアーティストのことを好きって言うと、ああ、そうだよねって共感を得られると思うんです。だから、かっこいいの定義もよくわからないんですけど、みんなが「すごくいい曲だよね」というものを出したときに、初めて「大塚愛とは恥ずかしくて言えない」みたいなものが取っ払われるのかなという気がします。

「楽曲提供の人」になろうと思っていた

――「かっこいい」というイメージが自分にはまだ足りない、ということでしょうか?

大塚 やっぱり声の印象が強いのかな、とは感じていまして。音楽を聞いて、それがかっこいいのか、かわいいのか、何なのかとカテゴライズするときに、まず判断材料になるのは歌声だと思うんです。でも、私の声を聞いてかっこいいって言う人は、たぶんいないんですよね。

――自分の声は好きですか?

大塚 もともと、声の魅力は皆無だなって思ってます。ボイトレもやってみたものの、凄い歌唱力が必要な歌を歌えるかっていうとそうでもなくて。そもそも、私が普通に歌うときの声って、リリースしている声とは全然違うんですよ。そういう普通の歌声が全然魅力的じゃないというところから始まって、これじゃあダメだな、歌手はちょっとないなと。まぁいいか、それなら楽曲提供の人になろうと思ったんです。

じゃあ売れそうな曲を作ろうってなったときに、でも楽曲提供するにしても仮歌が必要だと。ただ、アッパーな曲を書いても、自分の普段の歌声では合わなすぎるから、曲に合わせて声の出し方を変えてみたんです。そうしたら今みたいな歌声になったという。

――思わぬところから、今の歌声に繋がったんですね。

大塚 本来はパワフル系が好きなんですけどね。ちょっとしゃがれてるとか、ハスキーなもの、ファンキーな曲が好きなんです。でも、自分の声ではどうしてもそこに辿り着けない。私は正直好きじゃないんですけど、でも好きじゃないとか言ってられないというか、自分の持ったものをいかに生かせられるか、この声をどう良くしていけるかというところに、デビュー前から振り切った感じです。

新しい世代にも曲は広まっていく

――そうして生まれた大塚さんの楽曲は、今も様々な世代の人に広まり続けています。新しい曲はもちろん、過去の曲に再びスポットライトが当たることも多いですよね。例えば『さくらんぼ』は、芸人さんのコントやバラエティ番組で使われている場面もよく見ます。

大塚 そうですね。もう19年も前の曲なんですけど、時間が経っても、誰かがそうやって使ってくれることでまた広まって、当時を知らなかった子どもたちとか、私を知らない世代の子たちが知ってくれる機会にもなるので、それはすごくラッキーでありがたいことだなって思ってます。

――確かに、そうしたとき番組で初めて『さくらんぼ』を聞く、という世代もいるかもしれないですね。

大塚 どの曲にもやっぱり思い入れがあるので、これからも色んな機会を通じて、皆さんに私の曲を聞いていただくことができたら、それはすごく嬉しいです。

大塚 愛(おおつか・あい)

82年大阪府生まれ。シンガーソングライター。『さくらんぼ』『プラネタリウム』など多数のヒット曲を手がけるほか、楽曲提供や絵本制作、イラストレーション、さらには、初めての小説『開けちゃいけないんだよ』を「小説現代」(2020年9月号、講談社)に寄稿するなどマルチに活躍。2021年12月8日にオリジナルとしては約4年ぶりとなる9thアルバム『LOVE POP』をリリース。

(松永 怜)

松永 怜

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