EVは欧州車メーカーの救世主にならず

EVは欧州車メーカーの救世主にならず

  • WSJ日本版
  • 更新日:2017/09/15
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欧州でディーゼル車の販売台数が急落するなか、ディーゼル技術に巨額を投資してきた欧州自動車メーカーは減少分を急いで補おうとしている。

業界の未来とうたわれる電気自動車(EV)は解決策にはならない。少なくとも現時点では無理だ。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が欧州自動車メーカーを対象に行った調査で、EVは依然として需要が小さく、ディーゼル車にすぐに取って代わることはないと各社がみていることが明らかになった。全ての企業がEVに投資しているが、当面はガソリン車の生産やディーゼルエンジンの排ガス対策技術に力を入れていくとしている。

販売台数で世界最大の自動車メーカーであるフォルクスワーゲン(VW)で2年前、ディーゼルエンジンの排ガス試験を巡る不正が発覚して以来、ディーゼル車の販売台数は急激に減少している。

例えば、ディーゼル車への依存度が高いドイツでは、政治家がディーゼル車の販売禁止を示唆したことで、顧客離れが進んでいる。同国の自動車当局によると、8月のディーゼル車の新車販売台数は前年同月比14%減少した。一方、8月のガソリン車の販売台数は15%増加している。

調査会社LMCオートモーティブによると、ディーゼル車の最大市場である欧州におけるディーゼル車の市場シェアは今年、不正発覚前の53%から約45%に減少する可能性がある。一方、欧州のEVとハイブリッド車(HV)のシェアは今年、不正発覚前の2.3%から4%に増加する見通しだ。

EVの高価格、充電ステーションの不足や使い勝手の悪さ、長距離走行に不向きな点に消費者は二の足を踏んでいる。自動車メーカーも長年、EV開発には消極的で、ディーゼル車から消費者を奪うほど魅力的な車種をほとんど販売していない。

フォード・モーターの欧州市場の責任者スティーブ・アームストロング氏は、今週ドイツで開かれているフランクフルト自動車モーターショーで取材に応じ、「単純に家族向けの多くのセグメントにEVがない」と述べた。

フランクフルト自動車ショーでは、メーカー各社が将来に向けた大規模なプランを発表した。VWは2025年までに販売するEVの車種を当初予定していた30種類から80種類に増やし、2030年までには全300車種でEVモデルを提供する計画を明らかにした。

BMWは2025年までにEV・HVの25の新車種を提供する方針を発表し、ダイムラーは2022年までに全車種でEVモデルを発売する計画を明らかにした。

EVの利益率は半分程度

しかし、メーカーはEVですぐに利益を上げられるとは考えていない。ダイムラーの幹部は11日、投資家に対し、EVの利益率は置き換えられる車種の半分になるとの見通しを示した。

PSAのカルロス・タバレス最高経営責任者(CEO)は今週、「それ(EV)がうまくいき、会社に利益が出れば、いいことだ。しかし市場で受け入れられなければ、業界、従業員、政治家など皆にとって大問題だ」と述べた。

PSAは2019~21年に7車種のHVと5車種の完全EVを発売する計画だが、今はフランスで一部ガソリン車の生産を倍増するため準備を急いでいる。その理由について広報担当者は「需要増加に対応するため」と説明した。

他の自動車メーカーは、欧州でのディーゼル車の販売減少はエンジン工場の生産や雇用にほとんど、または全く影響しないとしている。大半の車種について、既にディーゼルとガソリンの両オプションを用意しているためだという。つまり、ガソリン車の需要が増えれば、メーカーは単にその生産を増やすだけのことだ。

もっと大きな問題は、EV技術の開発費用をどう負担するかだ。従来の内燃エンジンは世界中で相次いで規制されている。

フランスと英国は、ガソリン車とディーゼル車の販売を2040年以降は禁止する方針を発表した。HVは規制から外される可能性があるが、完全EVを推進することが狙いだ。

ドイツではVW、BMW、ダイムラー傘下メルセデス・ベンツの3社がディーゼル車を必死で擁護している。欧州連合(EU)の意欲的な地球温暖化ガス削減目標を達成するためにはディーゼル車が必要だというのが彼らの主張だ。ディーゼル車はガソリン車よりも二酸化炭素の排出量が少ない。その半面、死亡や呼吸器疾患の原因となる有毒な酸化窒素を排出するというデメリットもある。

ドイツのメーカー各社は数百万ドルかけて最新のディーゼル車の一部を自主的に回収し、中核のエンジンソフトを更新することで有毒ガスの排出削減を図っている。また、最大1万ユーロ(約130万円)の奨励金を提供し、古いディーゼル車をエンジンタイプを問わず新車に買い替えるよう顧客に促している。

ディーゼル車の存続には大きな利害が関係していることから、自動車メーカーが「技術的解決策としてのディーゼルの有効性を維持」できるかどうかを見極めようと、業界全体がドイツの行方を見守っている。フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)のセルジオ・マルキオンネCEOは最近そう語った。

さらに「こうした取り組みがどういう結果を生むにせよ、ディーゼルの立場ははるかに弱まると感じている」と述べた。

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