“HSVの未来”と認められた20歳FW伊藤 「あれ以上の賛辞はない」拍手が送られた理由とは

“HSVの未来”と認められた20歳FW伊藤 「あれ以上の賛辞はない」拍手が送られた理由とは

  • Football ZONE web
  • 更新日:2017/10/13
No image

ブレーメン戦に先発し本拠地デビュー 交代時にサポーターが拍手を送る

9月30日のブンデスリーガ第7節ブレーメン戦(0-0)で突如スタメン出場を飾ったハンブルガーSV(HSV)のFW伊藤達哉。日本メディアにとって全くのノーマークな存在であり、ドイツメディアにとっても驚きの起用となった。

試合では序盤からキレ味鋭い動きを見せ、後半8分に途中交代でピッチを後にする際には本拠地のスタジアムに詰めかけたファンから拍手が送られた。GKクリスティアン・マテニアが「あれ以上の賛辞はないだろうね」と語るように、ホームデビュー戦でしっかりとファンの心を奪ったようだ。

ではなぜファンは、あそこまでの拍手を20歳のアタッカー伊藤に送ったのだろうか。

HSVはドイツで古豪、名門と称されている。かつてはUEFAチャンピオンズリーグ(CL)に出場した経験もあり、何より「ブンデスリーガ創設以来、唯一2部リーグに落ちたことがない」という事実が彼ら最大の誇りだ。

だがここ数年は常に残留争いが定位置。毎年のように“迷子”になったかのように下位に沈み、なんとかギリギリのところで粘って残留という形の繰り返しだ。あそこまで追い込まれながらも踏ん張りきることは凄いが、それは何度も「復興・再生」のチャンスを逃してきたことの裏返しでもある。

岐路に立つ名門、育成型クラブへの転換点

近年のHSVは、喉元を過ぎた熱さをころっと忘れてしまうのだ。クラブのためにいつでも投資をしてくれるクラウス=ミヒャエル・キューネという大富豪の財布に甘えてしまい、「どうすればブンデスリーガで生き残り、長期的に継続して成功することができるのか」というクラブとしてのあり方を真剣に論じない。それでいて監督には華々しい成果だけを期待するから、チーム作りは常に困難を極め、困ったらまたキューネに泣きつく。昨シーズンも冬にMFワラシ、DFキリアコス・パパドプーロス、DFメルギム・マフライの補強があったからこそ、なんとかなったという背景もある。

だから選手を育てることができない。将来性を見ないから、才能があってもすぐに他クラブへ放出してしまう。

最近でのその最たる例が、ドイツ代表MFケレム・デミルバイだろう。一度もちゃんとしたチャンスを与えられないままに昨シーズン、ホッフェンハイムへ完全移籍すると、ユリアン・ナーゲルスマン監督の下で目覚ましい活躍を見せ、ドイツ代表にまで上り詰めた。

そんないつも変わらぬHSVが、本気で変わらなければならない事態に局面している。9月に、そのキューネが手を引くことを発表したのだ。もう場当たり的な補強もできない。今だけではなく、将来を見据えたクラブ哲学を明確なものとし、健全な取り組みをしていかなければ、クラブ存続さえも危うくなってしまう。

だからこそマルクス・ギスドル監督は、ユース育ちの選手に白羽の矢を立てた。自前の若手選手を大切に育て、中軸を担ってもらう選手へと成長を促し、クラブの未来を託す。

伊藤を含む3人の若手が起用された意味

ブレーメン戦では伊藤のほかに、U-17ドイツ代表FWジャンフィエテ・アルプ、ボランチのU-20スイス代表MFバスリジェ・ヤニチッチの3人がピッチに立ち、ギスドル監督は「イトウ、アルプ、ヤニチッチはクラブの将来とならなければならない」と試合後に語ったと、「ビルト」紙が報じていた。

ファンはこの選手起用から自分たちのこれからの歩みを改めて認識し、受け止めたのだろう。伊藤は「将来性のある選手」としてだけで拍手を受けたのではない。ファンの思いを託されたのだ。伊藤だけではなく、アルプ、ヤニチッチという3人の若手起用は、クラブの将来への大きな、大きな一歩だった。

その先にある、クラブ再建に向けての象徴として――。

【了】

中野吉之伴●文 text by Kichinosuke Nakano

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

海外サッカーカテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
モウリーニョとコンテが舌戦!「泣いてばかり」発言に「自分のチームのことを考えろ」と反論
希望・小池代表に怒号!国政じゃなくて都政だろ!「百合子コール」なし
C・ロナウド息子の芸術的ミドルが話題沸騰 「この父にしてこの子有り」「次の革命者」
カシージャス 美人妻でも完敗
ミス美尻 ヌードでメッシ激励
  • このエントリーをはてなブックマークに追加