西郷隆盛に影響を与えた『言志四録』とは?

西郷隆盛に影響を与えた『言志四録』とは?

  • ライフハッカー[日本版]
  • 更新日:2017/12/07

平成30年(2018年)は、「明治維新150周年」という節目の年。NHK大河ドラマも西郷隆盛を主人公とする『西郷(せご)どん』に決まり、“西郷さんブーム”が訪れそうな気配です。

ところで西郷さんが、江戸時代の儒学者である佐藤一斎(以下、「一斎先生」)の著作『言志四録(げんししろく)』を生涯愛読し、人生哲学の核としていたことをご存知でしょうか?

4つの書物の集合体である『言志四録』の全1133条を熟読し、特に心に残った101条を選出。それらを書きとめ、常に傍に置いて繰り返し読み返し、西南戦争で明治政府と戦ったときも持ち歩いていたというのです。

ちなみに西郷さんが西南戦争に敗れて自決したのち、その101条は明治21年(1888年)に『西郷南洲手抄言志録』として世に出ることになりました。きょうご紹介する『超訳「言志四録」西郷隆盛を支えた101の言葉』(濱田浩一郎著、すばる舎)は、そんな『手抄言志録』を“超訳”し、解説を加えたものです。

平成13年(2001)には、当時の小泉純一郎首相が、衆議院の教育関連法案の審議中に『言志四録』の一節を引用しました。

「少(わか)くして学べば、即ち壮にして為すこと有り。壮にして学べば、則ち老いて衰えず、老にして学べば、則ち死して朽ちず」(子供のころからしっかり勉強しておけば、大人になって重要な仕事をすることができる。大人になってからも、さらに学び続ければ、老年になってもその力は衰えることがない。老年になってからも、なお学ぶことを止めなければ、死んだ後も自分の業績は残り、次代の人々にも引き継がれていく)

このことで、『言志四録』は一層「指導者のバイブル」としての地位を確固たるものにしました。(「はじめに」より)

そんな本書のなかから、ビジネスパーソンに役立ちそうないくつかを引き出してみたいと思います。

成功する人のマインド

何かを成し遂げたいと思うなら、

「天」に仕える心を持つことが大切である。

人に自慢したいなどと考えてはならない。

凡そ事を作すには、須らく天に事うるの心有るを要すべし。

人に示すの念有るを要せず。

—『言志録』第3条—

『南洲翁遺訓』(以下、『遺訓』)という書物は、西郷さんがこの世を去ったのちの明治23年(1890年)、彼に恩義のあった旧庄内藩の藩士たちが刊行した西郷さんの名言集。そのなかにも、「人を相手にしないで、天を相手にするようにせよ。天を相手にして自分の誠をつくし、人の非をとがめるような事をせず、自分の真心の足らない事を反省せよ」(第25条)との言葉があるそうです。これについて著者は、一斎先生の影響を受けた言葉だろうと推測しています。

では、一斎先生のいう「天」とはなんなのでしょうか? 直訳すれば「神や仏」、ひいては「大自然」と読むことができるでしょうが、一斎先生は「心はすなわち天である。身体がつくられて天が肉体に宿るのである」(『言志録』第97条)と述べているのだといいます。人の心は、そのまま天であるという考え方です。

つまり、他人の評価などの雑音に惑わされず、自分の心に宿っている、自然な、正直な心と向き合ってこそ、人は成長し、なにかを成し遂げられるということです。(18ページより)

人から信用されるには

人から信用されることは、難しい。

いくらうまいことを言っても、

人は言葉ではなく、行動を信じるからだ。

もっと言えば行動ではなく、

心を見ているのだ。

信を人に取ることは難し、人は口を進ぜずして射を信じ、

射を信ぜずして心を信ず。是を以て難し。

—『言志録』第148条—

人の信用を得るのは難しく、いちばん信用されないのは、口ばかりうまくて行動が伴わない人。そして、人は最終的には行動ではなく、心を見ているものだと一斎先生はいいます。すなわち、行動に心がこもっているかということ。

たしかに行動に心が伴うのであれば理想的でしょうが、それはなかなか難しくもあります。「言われたから仕方なく」「嫌われたくないから仕方なく」行動することも少なくないわけです。しかし、それでも行動しないよりはマシなのではないかというのが著者の見解。なぜなら、行動を重ねることによって、生まれてくる真心もあるはずだから。(54ページより)

仕事は上下の2人が大切

上司と部下双方からの信頼を得られれば、

この世にできないことなど、何もない。

信、上下に孚すれば、天下甚だ処し難き事無し。

—『言志録』第150条—

儒学の祖として知られる孔子の『論語』のなかに、弟子の子貢が「政治を執り行ううえで、重要な事柄はなんでしょうか?」と師匠に尋ねるくだりがあるそうです。孔子の答えは、「食料を豊かにし、軍備を充実させ、民衆から信頼を得ることだ」というもの。

子貢がさらに「やむなく捨てなければならないとしたら、3つのうち、どれを捨てますかと聞くと、返ってきたのは「兵(軍備)を捨てよう」という答え。

そして子貢が「どうしても、やむを得ず一つだけ残さなければならないとしたら?」と聞くと、孔子は「ならば、食料を捨てよう。食の有無にかかわらず、人は皆いつか死ぬものだ。しかし人を信じる心がなければ社会は成り立たない」と断言したというのです。孔子はそれほど、人と人との信頼関係を重視していたということ。

これは会社についてもいえることだと著者は主張します。いくら資本金があって福利厚生が充実していたとしても、社長や上司が社員からまったく信頼されていなければ、ビジネスは成り立たないからです。その信頼を得るためには、問題が発生した際、逃げずに決然とその解決に努めなければならないということ。(58ページより)

弓を引くときは充分に引き絞れ

弓を引くとき、十分に引き絞ってから、

的に当てれば、無駄な矢はない。

人の仕事も何よりも準備が肝要である。

満を引いて度に中れば、発して空箭無し。人事宜しく射の如く然るべし。

—『言志晩録』第87条—

ここで一斎先生が説いているのは、弓を充分に引き絞ってから放つ矢のように、なにごとも準備を万端にして臨めば成功するということ。たしかに受験や採用試験においても、過去問題の研究や想定問答などを準備せず、行き当たりばったりで臨んでもうまくいくはずはありません。

しかし、事前に学校や会社の歴史や特徴を調べておき、それを踏まえた回答を用意しておくだけで合格の確率はぐっと上がるもの。事前の徹底した準備が自信を生み、「自分本来の実力」を引き出すということです。

なお深読みすれば、このくだりは「若いうちに経験を積むことが大切」とも読めると著者は指摘しています。

感性がみずみずしく、大きく成長できる若いころに経験を積んでおけば、壮年期になってからもそれを糧として飛躍できるという考え方。たとえば維新の志士たちのなかに、明治時代になってから政治家として、あるいは軍人として飛躍する人が多かったのも、平和な時代では経験しないような修羅場を幕末期にくぐってきたことが大きかったのではないか。著者はそうも記しています。

“超訳”については賛否両論があるかもしれませんが、少なくとも自分自身にとっての「入口」としてそれを活用することは無駄ではないはず。しかも、そもそも『言志四録』は実生活で役立てることを念頭に置いて書かれたものなので、応用する余地は少なくないはず。肩の力を抜いて読んでみれば、ビジネスに活かせるヒントを見つけ出せるかもしれません。

Photo: 印南敦史

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