アパートに残された怒りっぽい猫 生活保護の老人が入院した

アパートに残された怒りっぽい猫 生活保護の老人が入院した

  • sippo
  • 更新日:2019/06/21

生活保護を受けていたおじいさんが入院した。無人になったアパートに、1匹の猫が残されていた。ケアマネージャーから依頼を受けて、猫を保護することになった。

(末尾に写真特集があります)

その日も電話が鳴った。

「ひと月がんばったんですけど、飼ってくれる人が見つからなかったので、お願いできないでしょうか?」

「すみません。どんなご相談だったでしょうか?」

猫の保護活動をしていると、毎日何件もの相談を受ける。そのため、どんな相談だったか、すぐに思い出せないこともある。

「生活保護を受けていたおじいさんが入院して、もう戻ってこられないアパートに猫が1匹残されているんです。それで、引き取ってくれませんかと、前にご相談した者です。ひと月は自分たちで引き取り先探しをするようにと、その時、言われました。それでひと月がんばったんですけど、ダメでした」

「ケアマネージャーの方でしたでしょうか?」

「はい、そうです」

「ひと月の間、ご飯をあげに通って、がんばってもらったんですよね。分かりました。引き取りにうかがいます」

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キャリーケースに入れた猫

怒りっぽい猫

ひと月以上も前、おじいさんがいなくなった部屋で待ち合わせをした。

「かなり凶暴な猫なんです。ケアマネージャーとして6年も通っていたんですけど、機嫌が悪いと、飛びかかってきて。おじいさんもしょっちゅうひっかかれていました。おばあちゃん猫で、16歳と聞いています」

「そうですか。とりあえず捕まえてみます」

「どうやって捕まえるんですか? 猫を飼っている同僚も、あの猫は捕まえられないよと話していて」

部屋に入ってみると、その猫は、飼い猫とは思えないほどのうなり声をあげた。

「おじいちゃん、もう帰って来られないんだって。隠れていないで、一緒に行こう」

話しかけると、猫はうなり声をあげて飛びかかってきた。飼い猫だから簡単に捕まると思い、保護に必要な道具を一切持ってきていなかった。部屋を見渡して使えそうなものを探し、バスタオルをつかんで、猫も自分も怪我をしないように慎重に保護を試みた。なんとかキャリーケースの中に入れることができた。

「子猫のときから飼っていたんですよね? なんでこんなに怒りっぽいのでしょうか? 虐待されていたとか?」

ケアマネージャーさんに事情を尋ねた。

「いえ、それはないです。『この子は俺のかわいい娘なんだ』って、腕をひっかかれても、いつも嬉しそうに自慢していました。倒れて入院したときも、最初に口から出たのは猫のことでした。『大丈夫か、大丈夫か』って、今もずっと猫の心配ばかりしています」

飾り気のない部屋に、猫の写真がかけてあった。

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壁にかけられていた猫の写真

子どもの代わりに猫を飼う

「奥さんがいらっしゃるんですけど、今は認知症で施設に入っているんです。ご夫婦に子どもはいません。でも、どうしても子どもが欲しくて、若いころずっと不妊治療をしていたって話していました。その不妊治療が大変だったみたいで、奥さまは精神を病んでしまったそうなんです。それでお医者さんが、猫を飼うことをすすめたんだそうです。2人はかわいそうな子をもらってこようと、殺処分になる見込みの子猫を譲り受けたそうです」

猫を譲り受けたときの、嬉しそうなご夫婦の写真もあった。

「『自慢の娘ができた! 自慢の娘ができた!』って、とっても大事にされていたんです。生活保護費が入ると、『買えなくなったら大変だからな』って、猫のご飯だけは買いだめしていました。『このキャットフードが好きなんだけど、近くで売ってないんだよ』。そう言って、隣町のホームセンターまで電動車いすで買いに行っていたんです」

「半日はかかりますよね」

「『俺の方が先に逝くことになるなんて考えていなかった』。そうずっと話しているんです」

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シェルターにやって来た「サリー」

高齢者が犬猫を飼うこと

保護してきた猫をシェルターに入れ、この日、はじめての食事をとった。猫は相変わらずケージの中でうなっていた。その猫を見ていて、ふと頭をよぎった。「高齢者への譲渡がいけなかったんだというのは簡単だけどな……」

その猫には「サリー」と名前を付けた。その後しばらくしてから、心を許してくれるようになった。しかし、今は病気にかかり、闘病生活を送っている。

サリーのためにも、サリーを託さざるを得なかったおじいさんのためにも、一日も早く病気を治して、新しい飼い主のもとへ送り出してあげたい。それが保護した者の務めだと思う。

高齢化社会になり、飼い主との死別や飼育放棄などが増えている。高齢者は犬や猫を飼ってはいけないと、簡単に言い切れる問題ではない。解決には高齢者福祉の専門部署との連携も必要になっている。

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保護猫カフェ「ねこかつ」

住所:埼玉県川越市新富町1-17-6 3階
営業時間:12:00〜20:00、月曜定休(月曜日は祝日の場合は営業)
電話:070-5029-8392
HP:http://www.nekokatsu.info/index.html

保護犬・保護猫譲渡会@IKEA港北

日時:6月29日12:00~15:00(雨天中止)
場所:IKEA(イケア)港北 (横浜市都筑区折本町201-1)
事務局:保護猫カフェ「ねこかつ」

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