シリア侵攻で緊張高まる米・トルコ関係

シリア侵攻で緊張高まる米・トルコ関係

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  • 更新日:2018/02/15
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1月20日、トルコ軍は、シリアの反政府武装勢力「シリア自由軍」とともに、シリア北西部のアフリンへの軍事攻撃「オリーブの枝作戦」を開始した。アフリンは、シリアのクルド人武装組織YPG(人民防衛部隊)の拠点であり、YPGはトルコがテロ組織とみなすPKK(クルディスタン労働者党)と連携関係にある。今回の侵攻は、米国がシリアの北部のロジャヴァ地方にクルド人中心の3万人規模の国境警備隊を組織、配備することを表明したとの報道を受け、トルコがそれへの対抗として機先を制する形で開始したものである。

(iStock.com/audumbla/aliunlu/michalz86/MartaJonina/Fourleaflover)

米国はISISとの戦いでYPGを支援、連携してきたが、トルコはそれに強く反発してきた。今回の作戦が、米国とトルコの間の緊張関係をさらに高めることは間違いない。

この件をめぐり、1月24日、トランプ米大統領とトルコのエルドアン大統領は電話会談を行った。ホワイトハウスの発表によれば、概要は次の通りである。

トランプ大統領は、アフリンでの暴力のエスカレーションが我々のシリアにおける共通の目標をダメにすることへの懸念を伝えた。トルコに、事態の鎮静化、軍事行動の制限、文民犠牲者の回避等を求めた。両国軍の衝突につながるいかなる行動も避けるよう、自制を促した。両国はISIS打倒の共通の目的のためにすべての当事者に焦点を当てなければならない。両大統領は、10万人以上のシリア難民の帰還を歓迎し、シリア難民の帰国支援において協力を続けることを約束した。

トランプ大統領は、トルコの正当な安全保障上の懸念に対処するためのより緊密な二国間協力を提案した。両首脳は、トルコを含む近隣国に脅威を与えない統一シリアを安定させる必要性につき協議した。トランプ大統領は、トルコの破壊的で誤ったレトリック、長期化する非常事態宣言下での米国民および現地雇用者の拘留にも懸念を表明した。両首脳は、米国とトルコの戦略的パートナーシップの改善を約束した。特に、地域の安定、PKK、アルカイダ、イランが支援するテロを含む、あらゆる形態のテロとの戦いの強化である。

“Readout of President Donald J. Trump’s Call with President Recep Tayyip Erdogan of Turkey”(White House, January 24, 2017)

一方、トルコ国営放送は、電話会談でエルドアンは「テロとの戦いにおいて、分離主義テロ組織PKKのシリアにおける派生組織PYDおよびYPGへのアメリカからの武器支援は終わらなければならない」と述べた、と報じている。

エルドアンは、電話会談後も攻撃の手を緩めることなく、アフリンの次はシリア北部、アフリン東方のマンビジュに対する攻撃も明言した。マンビジュは、クルド人主体のシリア民主軍と米国の軍事顧問の拠点である。これが実行されるようなことがあれば、ともにNATO加盟国である米国とトルコとの武力衝突が現実のものとなりかねない。

一方、米国は、ティラーソン国務長官が1月17日にスタンフォード大学・フーバー研究所で行った講演の中で、シリアへの軍事的、外交的プレゼンスを継続すると明言した。その目的について、ISISの打倒をより確実にすること、国連主導でアサド後の統一シリアを実現すること、シリアにおけるイランの影響力を低下させ所謂「シーア派の回廊」を阻止すること、などを挙げている。シリアではクルド人がISIS打倒に役立ってきた。今後のシリア政策においても、特に対イランの観点から有用と思われ、米国がシリアのクルド人を俄かに見捨てるとは考え難い。シリア民主軍がロシアへの接近を試みているとの指摘もあるが、クルド人をめぐる米国とトルコとの対立の火種は残り続けるとみられる。

ただ、クルド人がトルコに脅威を与えないことを、米国が保証することができれば、両国間の緊張が緩和される可能性はあると思われるし、そうする必要がある。トルコ、米国、クルドの間での話し合いが望まれる。

なお、今回ティラーソンが明確にしたシリア政策について、ワシントン・ポスト紙は1月22日付で“Tillerson tells the truth about Syria”(ティラーソンはシリアにつき真実を語った)と題する社説を掲載してこれを強く歓迎し、ニューヨーク・タイムズ紙は1月19日付けで“Syria Is Now Mr. Trump’s War”(シリアは今やトランプの戦争)と題する社説を掲載し、終わりのない戦争になるなどと批判している。後者は敗北主義的、孤立主義的な主張であり、前者の評価が妥当であろう。

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