100億円のF-35が数万円のドローンに負ける日 ISの自爆ドローン戦術に自衛隊が学ぶべきこと

100億円のF-35が数万円のドローンに負ける日 ISの自爆ドローン戦術に自衛隊が学ぶべきこと

  • JBpress
  • 更新日:2016/10/20
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米国防総省のDARPAが今年8月に公開した将来の対自爆ドローン戦闘図

爆弾を積載した「自爆ドローン兵器」を使った戦術が、夏頃からIS(イスラム国)によって開始された。武装組織がついにドローン兵器を使い始め、有志連合軍に死傷者が出たことに米軍は大きな衝撃を受けている。

10月12日、米海兵隊向け軍事誌「Marine Corps Times」は「イスラム国の『空飛ぶIED』により米軍は新たな脅威に直面」と題する記事を掲載した。まずは、その内容を要約して紹介しよう。

ISも、アルカイダの一派も

10月上旬、C-4プラスチック爆弾を積載したイスラム国のドローンは、イラクのエルビルにて、2名のクルド民兵を戦死させ、2名のフランス特殊部隊兵士を負傷させた。これは武装組織が使用する自爆ドローンによる初の犠牲者である。このドローンは撃墜され調査しようとしたところで爆発し、被害を与えた。

米空軍のスポークスマンが12日に語ったところによれば、米軍は既にイスラム国によるいくつかの自爆等のドローンの戦術活用を確認し、トロイの木馬方式と呼んでいるという。実際、ニューヨークタイムズによれば、少なくとも先月に2回、イスラム国が自爆ドローンを活用した例がある。

ドローン戦をしている武装勢力は、ISだけではない。アルカイダの一派であるジュンド・アル・アクサは、最近公開した動画で、シリア軍の兵舎に着陸するドローンの様子を映していた。

また、イランが支援するシーア派武装勢力ヒズボラが公開した動画では、彼らがアレッポのヌスラ戦線に対して、ドローンによる爆弾攻撃を行っている様子が映っていた。これらは武装組織による初のドローン戦のデモンストレーションである。

米空軍のスポークスマンは、米国率いる有志連合がイラクで敵のドローン戦に対処することに活発に取り組んでいることを強調し、「我々は、わが軍と同盟国およびパートナーの軍隊を脅かす能力を放置することはない」と豪語した。その根拠としては、ドローン撃破のための「先進システム」(詳細は明らかではない)に加えて、ドローンを電波ジャックして撃墜するライフル「ドローンディフェンダー」の配備を挙げている。

この問題に関してIRIS独立研究所代表のレベッカ・グラント氏は、「米軍でのこれまでの議論、ウォーゲーム、演習から導かれた多数派の結論は、おそらくレーダー監視に基づくレーザー兵器による撃墜だろう」と述べている――。

米国が衝撃を受けた理由

以上が「Marine Corps Times」の報道である。イスラム国の自爆ドローンはワシントンポストやニューヨークタイムズ等の主要紙でも取り上げられており、米国社会が衝撃を持って受け止めている様子が伝わってくる。

この背景には、たかだか数万円で簡単に手に入る市販品のドローンで、先進国の兵士が一方的に殺害されかねない(それも西側発の技術による製品で)ことへの衝撃がある。しかも、これまで米兵の多くを殺傷し、もしくは重度の障害者にさせた「IED(路肩仕掛け爆弾)」の記憶が生々しいことも衝撃を倍加させことは間違いない(上記の記事のタイトルは「空飛ぶIED」という表現であった)。

加えて、上記の空軍スポークスマンの豪語とは裏腹に、米軍の体制が整っていないことも大きい。国防総省の技術研究プロジェクト「NextTec」の責任者であり、ロボット兵器問題の権威であるピーター・シンガーは「我々は自爆ドローン攻撃への準備ができていなければならなかった。しかし、そうではなかった」と指摘している。

実際に、国防総省の対応はこれからという段階である。国防総省は、国防高等研究計画局(DARPA)による「革新的な対小型ドローン防御方法」についての公募を今年8月に開始したばかりである。また、ファニング陸軍長官がドローン防衛のための特別室を設置したのもつい最近だ。

日々進化しているテロ組織のドローン兵器

米軍が遅まきながら対応を強化している一方で、ISによるドローン活用は質量ともに強化されている。

例えば、先の死傷事件では、爆弾は外付けバッテリーに偽装されており、人間を殺傷するのに十分な量があったという。先週も、ISはイラクで検問を攻撃するために自爆ドローン攻撃を敢行し、検問所を破壊した。

また、ISは自爆攻撃以外にもドローンを有効活用している。プロパガンダ動画の素材集めのために自爆テロを撮影させたり、ロケットなどによる砲撃時の照準・観測にも活用しているのである。今年3月のロケット攻撃に際しては、ドローンを利用して照準を定め、100人以上の米海兵隊部隊の前哨基地に命中させて海兵隊員を死亡させた。その砲撃は米軍から「ゴールデンショット」と称されるほど正確であったという。

今後、製品の進化・改造により、テロ組織によるドローン兵器の攻撃が深刻さを増すことは間違いない。米陸軍士官学校のシンクタンク、対テロセンター(CTC)のドン・ラスラー氏も、「今後、使用されるであろうドローンの数と能力と洗練度は、脅威の範囲と深刻さを増していくだろう」と指摘している。

自爆ドローン兵器に対して無防備な自衛隊

自爆ドローン兵器の脅威は日本にも及びかねない。具体的には、もしも日中戦争が起きた場合、1機100億円のF-35戦闘機が、中国軍の特殊部隊が操る数万円のドローンで無力化されてしまうおそれがある。

航空自衛隊基地は広大な滑走路等の敷地を持つ一方で、警備用の機材も人員も極度に不足しており、無防備に等しい。対ドローン用装備も、ほとんど自衛隊に導入されていない。しかも基地の多くが住宅地の近隣にある。こうした状況で、中国軍の特殊部隊が小型ドローンを滑走路に侵入させて積載したパチンコ玉をばら撒かせるなり、自爆させることは極めて容易である。

その場合、空自は滑走路が使用不可能になり、航空機を飛ばせなくなる。というのは、そのままの状態で戦闘機を発進させれば機体前方の空気吸入口からパチンコ玉なり破片が入り、エンジンが爆発・故障する恐れがあるからだ。もし発進直前、それも感知されずに突入すれば、滑走路上で戦闘機が炎上し、より悲惨なことになるだろう。

さらには、自爆ドローンを管制塔やパイロットの待機所、整備員、格納庫、レーダー施設に突入させても、空自の戦力を減少・無力化させることができる。

海自の基地(例えば横須賀や呉)も無防備である。自爆ドローンで、イージス艦等のフェイズドアレイレーダーやイルミネーターを破壊し、動く鉄屑にすることはきわめて容易だろう。

陸自も同様の危険が特にPKO活動で予想される。民生ドローンの軍事転用は今や武装勢力でブームになりつつあるが、治安悪化著しい南スーダンでもこうした戦術を現地勢力が採用し、自衛隊に攻撃を仕掛けてくる可能性はある。

空自はX-2「心神」のような実験航空機の開発を進めているが、防衛省・自衛隊内部ですら「無意味な玩具遊び」との批判がある。仮に、いつか強力な戦闘機が誕生する日が来るとしても、今日や明日に小型ドローン兵器の攻撃を受けて、滑走路を無力化され、パイロットや整備員が死傷し、管制塔もレーダーも使えなくされるのでは何の意味もない。それよりも、空・海自の基地警備の改善や「ドローンディフェンダー」のような対ドローン銃の大量配備が急務だろう。

一方で、自衛隊はISの戦法に学ぶべき点もある。安価な民生品の活用である。特に陸自のような近距離の偵察を前提とする組織にとっては、高額な何千万円もの―内部で役立たずという批判のある―陸自専用のドローンをほんの少し購入するよりも、民生品の10~100万円単位の安価なドローンを大量に購入する方がよほど効果的なはずだ。

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