誤作動で相次ぐ交通事故「危ない信号機」が町中に放置されている

誤作動で相次ぐ交通事故「危ない信号機」が町中に放置されている

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2017/11/25
No image

現在、全国にある信号は約21万基。そのうち約2割が老朽化している。誤作動により交通事故を誘発し、突然倒れる危険な信号機。安全を守るはずの信号が私たちの命を脅かす時代がやってくる。

突然、点灯しなくなる

兵庫県・姫路市田寺1丁目。住宅街と県道を結ぶ交差点には、昭和40年代に設置された信号機がいまだに残っている。近くには大型スーパーやドラッグストアがあり、終日、車が行き交うこの交差点で約50年間も稼働し続けている。

近隣住民に話を聞いた。

「信号の老朽化?この道は毎日、通っているけど、老朽化なんて気にしたことなかったね。取り換えが必要なことも初めて知った。

誤作動を起こしたという話は聞いたことがないけど、たしかに古くなっているのは怖いよね。ここは意外と交通量があるから、信号に異常が出たら大事故が起こるかもしれない」

あまり知られてないが、信号機の耐用年数はおよそ20年。この信号はとっくに寿命切れなのだ。誤作動が起こるまでは、だれも気にもとめないが、実はいつ壊れてもおかしくない。

昨今、問題視されている悪意ある危険運転も恐ろしいが、信号の老朽化問題も看過できない。

1970年ごろに建設のピークを迎えた日本の交通インフラは老朽化が進み、崩壊への秒読み段階に入っている。

'12年に山梨県で起こった笹子トンネル天井板落下事故以来、道路やトンネルなどの劣化は時おり話題になるが、今、密かに危惧されているのが信号機の老朽化だ。

赤黄青の色をコントロールする「制御機」は「信号の心臓部」である。その更新期限は設置から19年とされているが、信号を管轄する警察庁によれば、(平成28年度末時点で)全国にある信号機、約21万基のうち2割にあたる約4万5000基が更新期限を過ぎたまま放置されているのだ。

さらに都道府県別にみると、全国でもっとも信号の老朽化率が高いのが、兵庫県の37.4%、次いで福島県の36.4%、愛知県の33.6%と続く。東京は14.8%だ。

老朽化による具体的な信号トラブルとしては、信号が点灯しない、点滅を続ける、色が変化しなくなるといった事例が報告されている。

想像してみてほしい。もし運転中にまったく点灯していない信号機があったらどうするだろうか。多くのドライバーが戸惑うことは間違いない。

もし信号機の色がずっと変化せず、赤信号が続けば、渋滞が発生し、イライラしたドライバー同士のトラブルが続発するだろう。

青信号の誤作動は即事故につながる。横断歩道の信号が青にもかかわらず、反対車線の信号が誤作動し「青青信号」の状態になり、交差点に車が突っ込んでくる。

逆に歩行者用の信号に異常が起こり、青信号になったから横断歩道を渡ったのに、車にはねられることもある。

No image

Photo by iStock

更新期限の過ぎた信号のトラブル発生率は、そうでないものの6倍とも言われ、いつ事故が起きても不思議ではない。そしてそんな「危ない信号機」は、実際、あなたの街にも必ずある。

ちなみに個々の信号機には「何年に製造されたものか」明記されたプレートが必ずあるが、頭上にある信号ランプの裏面に小さく設置されているため、地上から肉眼で確認するのはほとんど不可能だ。

では古い信号機を見分ける方法はあるのか。信号機は製造年によりタイプが変わる。

特に分かりやすいのが、信号機本体を取り囲むように、白地に緑のラインが斜めにプリントされた金属板がついたゼブラ柄の信号機だ。こういった古い型の信号機はゼブラ柄の形状を残したまま、内部の制御機だけを更新することはまずない。

この型の信号機は'74年に製造が終了しているため、少なくとも43年が経っていることになる。もしゼブラ柄の信号機を見つけたなら、それは危ない信号機の可能性がきわめて高い。

後ろから追突される危険も

神戸大学大学院工学研究科・交通工学教授の井料隆雅氏が語る。

「今後、信号機の老朽化率はますます上昇し続けるでしょう。『更新期限の19年を過ぎても問題なく動いているから大丈夫』と考えるのはあまりに早計です。

当たり前のことですが、信号が誤作動を起こせば、重大な交通事故につながりかねない。命に直結する問題なので、しっかりと対策をとらなくてはなりません」

警察庁によれば、昨年度の信号機障害の発生件数は807件にのぼる。そのなかには、信号機の老朽化に伴う事故も含まれている。

昨年、滋賀県・大津市内のある交差点では、信号が青から(黄色を飛ばして)赤に一瞬で切り替わったため、反対側からも同時に車が交差点内に進入し、衝突事故を起こした。調査の結果、信号の老朽化による「誤作動」が原因だったことが判明。

更新期限を超える21年が経過していたため、県は責任を認め、事故当事者2人に損害賠償金を支払うことで合意した。事故後、この信号機は約1000万円をかけて更新されている。

No image

Photo by iStock

多くのドライバーは、信号が黄色になればスピードを緩める、歩行者用の青信号が点滅し出せばそろそろ青に変わりそうだ、など信号を見ながら予測をして運転している。

それが突然、あり得ないスピードで赤や青に切り替わったら、止まれずに交差点に進入してしまうこともあるし、急ブレーキをかけたため、後続車に追突されることも十分予測される。

交通事故調査解析事務所代表の熊谷宗徳氏が言う。

「市民から信号機のトラブルについての通報があれば、警察はすぐに対応します。それによって事故が起きてしまったら賠償請求されるからです。

ただ言い換えれば、トラブルが報告されなければ、更新期限の19年が過ぎたまま放置されていても市民は気づきようがないのです」

信号を支える柱が倒れる

基本的に信号のメンテナンスは、各都道府県の警察に管理されている。そのため都道府県によって信号の老朽化率にもばらつきがある。

朽ちるインフラ――忍び寄るもうひとつの危機』の著者で、東洋大学経済学部教授の根本祐二氏が語る。

「地方によって更新にばらつきがでるのは、道路、橋、水道、下水道、公共施設、公営住宅などすべてのインフラについて言えます。理由はそれぞれの県によって整備のタイミングや更新予算の配分がまちまちだからです」

ワースト1になった兵庫県では約7200基のうち約2700基が更新期限を過ぎているが、なぜこれほど老朽化率が高くなってしまったのか。

兵庫県警本部・交通規制課の担当者が語る。

「兵庫県では信号機だけでなく、すべての安全施設(横断歩道や標識など)の老朽化が進んでいます。そのため信号の制御機を更新するための予算が十分取れないのが現状です」

赤黄青の色をコントロールする制御機の更新には最低でも一機あたり100万円はかかるが、警察庁の資料によると、交通安全施設の整備予算は、'97年に全国で1436億円だったのが、年々減り続け、昨年度は860億円にまで削減されている。

今後人口減少が進めばますます財源は減り、更新が必要であると分かっていながら放置される信号機が街中にあふれることになる。

兵庫県が'15年度に更新した制御機は115基にとどまっており、このペースで推移すると、10年後には期限切れの制御機の割合が65%にまで増加するとみられている。

自動車王国・トヨタのおひざ元である愛知県も老朽化率ではワースト3に入る。

「愛知県内では、昭和60年ごろには一年に200~300基の信号が増設されていました。それだけ一気に信号を増やしたものですから、30年以上を経過した現在は交換のラッシュを迎え、その対応に警察がついていけなくなっているのです」(地元紙の愛知県警担当記者)

一方で制御機だけでなく、信号を支える柱「信号柱」が老朽化し、倒壊する危険性も懸念されている。

'12年には兵庫県・神戸市中央区の交差点で、老朽化した信号柱が停車していた乗用車の上に倒れるという事故も発生している。

No image

Photo by iStock

信号柱は設置から40年が交換の目安となっているが、警察庁が発表している信号の老朽化率は、あくまで制御機の年数であり、信号柱の老朽化はカウントされていない。

そのため全国的な統計は存在しないものの、相当数の柱が耐用年数を超えているとみられている。しかも柱についても見た目ではなかなか判断しづらいため、倒壊して初めて、腐食が判明するケースも多い。

制御機の老朽化ワースト3の愛知県内を車で走ると、かなり年代物の信号機を発見することができた。一宮市の貴船交差点では「角型」と呼ばれる古い信号機が残っており、設置年は'71年となっていた。信号機には柱を含めてサビが目立つ。

付近には小学校もあり、通学路にもなっているため、もし信号柱が倒壊すれば大惨事になる可能性もある。

信号の「2020年」問題

警察庁の調査では、老朽化が原因とされる信号機の倒壊は年に1~2件と少数だが、今後、急激に増加する可能性は高い。信号機の設置は、高度経済成長期の'70年代に一気に増え、ピークとなる'72年には約8000基の信号機が作られている。

それらが2020年代に設置から50年を迎えるからだ。特に潮風が当たる沿岸部では老朽化も早いので、迅速な改修が必要となっている。

誤作動を起こし、倒壊する信号が全国にあふれる――そう遠くない未来、これは現実になる。

では今後の対策としては何が必要なのか。

全国で信号の老朽化率がもっとも低かったのが岐阜県だった。その理由について岐阜県警の交通規制課はこう回答した。

「既存の交通安全施設を徹底的に見直し、必要ないものは廃止しました。それらにかかっていた維持費用を信号の更新費用に当てました。また、感知器などの付加機能を排除することで更新費を削減しています」

前出の根本教授もこの方法に賛同する。

「歩道橋の廃止や公共施設統廃合のように、まずは、不要な信号を『削減』して更新・維持費用を減らす努力が必要でしょう。

新道ができて交通量が激減したにもかかわらず、信号だけは残っている道路も多い。こういう場合、削減という手段を認めていかないと、全部を守ろうとして結局、中途半端なことになってしまいます。

今後はどの信号を残すかという議論を進める必要があると思います」

最初から信号が壊れていると疑ってかかる人はいるまい。「信号が間違うはずがない」「絶対に正しい」と思うのが普通だ。だがそんな「安全神話」はもはや崩れ去ろうとしている。

No image

「週刊現代」2017年11月25日号より

No image

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

社会カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
ショック!あの元アイドルが「大人の男性向け派遣サービス店」で窃盗していた
劇薬の入ったポリタンク500個が散乱 関越道で事故
ベンツの運転手に絡まれ煽られていた軽自動車。しかし軽の方が一枚上手だった
警察に捕まる人が続出?韓国人が日本の道路で困惑するもの=韓国ネット「地獄のよう」「見た瞬間、怒りが...」
“スマホ自転車”事故死、女子学生を書類送検へ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加