「ギグエコノミー」企業、人材確保に知恵

「ギグエコノミー」企業、人材確保に知恵

  • WSJ日本版
  • 更新日:2017/08/10
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米配車サービス大手ウーバー・テクノロジーズ、食品や日用雑貨の配達を手掛けるインスタカートなど、オンラインで単発の仕事を受注するいわゆるギグエコノミーの企業は、短期労働者を引きつけ維持しようと努めている。

失業率が低く競争が激しい中で、こうした新興企業は、求めに応じて仕事を請け負い長く続けてもらえる労働者を確保しようと、より充実した手当や契約金を提供し始めている。各企業は人材探しを強化しており、フルタイム採用の機会もあるとさえうたっている。このことは、一定の人材を確保し続けるには次第に費用がかさみ、困難になってきていることを示している。

ブルームバーグのベンチャーファンド部門、ブルームバーグ・ベータの責任者ロイ・バハト氏は「創業者たちは、こうした労働者に、収入と労働時間にある程度見通しがつき安定した生活を手に入れることができると示すことが、競争における一つの重要な手段であることを理解している」と述べた。

パートタイム労働者とフリーランスで成り立つギグエコノミーは、2007年から09年にかけての米国のグレートリセッション(大不況)の後に出現した。この大不況の時期は、高い失業率と賃金の伸び悩みから短期労働者を比較的見つけやすかった。

今もこうした労働者は極めて多い。マッキンゼー・グローバル・インスティテュート(MGI)の2016年のリポートによると、米労働者の約4%が、ギグエコノミーのアプリやプラットフォームを利用して収入を得ていた。だが投資家は、労働市場が堅調な上、一部の労働者が単発の仕事に魅力を感じなくなってきていることから、ギグエコノミーは圧力にさらされていると指摘している。

ウーバーは、稼働している約60万人の運転手との間の、支払いや手当に関わる問題を改善しようと、7月にアプリをアップデートして乗客からチップを受け取れるようにした。また保険ブローカー大手エーオンと提携し、業務上の事故をカバーする保険制度のテスト版を提供している。

さらに6月には、運転手がフルタイムの仕事を担えるよう支援するプログラムの開発を約束した。広報担当者によると、全米で100人余りの運転手が顧客サポート担当者として雇用されている。

ウーバーと競合するリフトは、広報担当者によると、15年に段階的な特典のプログラムを構築し、約70万人の運転手が乗客を送り届けた件数に基づいて、税、ヘルスケア、自動車整備に関わるサービスを充実させている。

各社は労働者を確保するために契約金も支払っている。食事や日用品の即時配達を手掛けるポストメイトは50~500ドル(約5500~5万5000円)。ウーバーは、新たに働き始める運転手に支払う契約金がサンフランシスコで1000ドルに達した。リフトは800ドル。運転手は、新たな人材を紹介して採用された場合にもボーナスを受け取っている。

オンデマンド労働者の情報を集めたブログ「ライドシェア・ガイ」を運営しているハリー・キャンベル氏は、こうした労働者の手取り収入への不満が離職率を押し上げていると指摘している。最も効果的なのは、労働者の支出を減らし報酬をより早く受け取れるようにすることだという。

ウーバーの労働者を対象とした15年の分析では、新たな運転手の45%が1年以内に辞めており、同社とエコノミストが共同で実施した16年の別の調査でもこの割合は変わっていない。

JPモルガン・チェース・インスティテュートの昨年11月のリポートによると、どの1カ月をとっても、ギグエコノミー労働者の6人に1人が新たに働き始めた人とみられ、その過半数が1年以内に辞めている。

ベンチャーキャピタルであるアスペクト・ベンチャーズの共同創業者の1人、ジェニファー・フォンスタッド氏は、オンデマンド事業を手掛ける企業の労働者の離職によるサービス低下は、特典を増やすことで解決する可能性があると述べた。アスペクトは、ベビーシッター仲介サイトを運営するアーバンシッターなどギグエコノミーの新興企業に投資している。

バーンズ&ソーンバーグ法律事務所の雇用関連専門弁護士、スコット・ウィトリン氏は、個人労働者を、法律上一定の手当や保護を与えなければならない被雇用者とあまりにも同様に扱うと、企業は訴訟に直面する可能性があると指摘している。

食事宅配サービスの新興企業ドアダッシュは、仕事を委託する10万人の個人労働者に医療保険を提供するために外部企業のサービスを利用しているほか、賃金の翌日支払いを導入している。

さらに、「ダッシャー」と呼ばれる配達員として働く可能性のある人をより多く確保しようと、4都市で配達員に原動機付き自転車を貸し出している。トニー・スー最高経営責任者(CEO)によると、同社はいずれ原付き自転車を、希望する労働者に低料金で貸与する可能性がある。今は1台1600ドルの原付き自転車をメーカーが同社に無料で提供している。

スーCEOは、ダッシャーの安定確保と顧客からの注文の件数を調和させることが重要だと話している。労働者に特典を与えることは、経験を積んだ、より良いサービスができる配達員をつなぎ留めることにつながり、ひいてはドアダッシュの顧客を増やすことになるとの考えだ。

インスタカートは、多くの買い物客に同社の会合を開放している。業績について幹部の説明を聞くことができるほか、質問もできる。同社の仕事を請け負っていた労働者は3月、同社がチップを不当にプールし必要経費を返金しなかったとして、460万ドルの支払いを求める集団訴訟を提起し、最近和解合意した。インスタカートは原告側の主張を否定したが、その後は顧客への情報開示を強化している。

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