磐田での1年を経て代表復帰の川又堅碁。まだ覚醒の途中。取り戻したFWとしての怖さ

磐田での1年を経て代表復帰の川又堅碁。まだ覚醒の途中。取り戻したFWとしての怖さ

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  • 更新日:2017/12/06
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ジュビロ磐田のFW川又堅碁【写真:Getty Images】

シーズン終盤に癒えた足の痛み。リーグ戦全試合でスタメン出場

12月9日よりE-1サッカー選手権に臨む日本代表。都内で同大会に向けた準備を進めているが、FC東京のDF室屋成とともに追加招集されたのがジュビロ磐田のFW川又堅碁だ。今季からサックスブルーのユニフォームを着てプレーし、シーズンを通して質の高いパフォーマンスを見せたストライカーは、ヴァイッド・ハリルホジッチ率いるチームに何をもたらすことができるだろうか。(取材・文:青木務)

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追加招集ながら、川又堅碁は日本代表の一員に復帰した。今シーズン6位と健闘したジュビロ磐田にあって、新加入FWは質の高いパフォーマンスを年間通して発揮してきた。

夏場以降は両足のアキレス腱付近の痛みがなかなか取れなかった。それでも、チームの主軸として何とか踏ん張り、最終的には自身初となるリーグ戦全試合スタメン出場を達成した。激痛により特徴である動き出しのスピードが鈍った時期もあった。

名波浩監督は練習から背番号20を注意深く観察し、先発から外そうと考えた時もあった。10月のある日には、「川又がダメだったら、アダ(アダイウトン)を前で使うと思う」と明かしたこともある。だが、最後まで起用し続けた。週の始めの練習を別メニューで調整させるなど、コンディション調整に気を配る指揮官は、こんな思いを持っていた。

「プロキャリアの中で、1シーズン通してやり切るというのがどれだけ大きなことか。ちょっと大げさかもしれないけど、小学校1年生から6年生まで皆勤で、病欠もなしに全部出てくる子がいるじゃん。最後に表彰される子。プロアスリートが1年間やることはそれくらい大きな価値があると思うし、それをアイツはまだできていないから」

11月に日本代表がヨーロッパ遠征を行ったため、明治安田生命J1リーグは中断期間に入った。この期間で足の具合も良くなっていったという。そして、鹿島アントラーズとの最終節を万全の状態で迎えられた。だが、川又には心残りがあった。

「足が痛い期間が長すぎたし、ギリギリの中でも試合で使ってもらって。なおかつチームメイトに迷惑をかけた部分もあった」

指揮官とチームメイトの信頼に応えてきた自負はあるはずだ。だが、本調子で戦えなかったことに歯がゆさを感じるところに、彼の強い責任感が表れている。

名波監督が川又に求めたもの

磐田にやって来た川又は、「1試合5本のシュートを打ちたい」と目標を立てている。その点は名波監督からも指摘されたが、フィニッシャーとしてしっかり機能したと言えるだろう。

「堅碁の課題としてシュート数(の少なさ)というのがあったので、そういう意味では今年はそういうポジションに顔を出してフィニッシュまで行けているし、ポジティブに捉えていいと思う」(名波監督)

とはいえ、指揮官の要求は『ゴールに特化した選手になれ』というものではなかった。

昨シーズン、磐田の攻撃はジェイ(現コンサドーレ札幌)に依存した。決してそれを望んだわけではなく、本来は元イングランド代表FWを活かしながら他の選手も輝くことを目指した。しかし、ジェイの存在感は無視できないもので、あれだけの得点力を持った選手にボールを集めるのは定石だ。必然的に、サイドからのクロスがパターン化されていった。

「一人の選手が点を取るようなサッカーをやってしまい、ジェイありきになっちゃっていた。ボックス内やゴール前のスリリングな展開、観ている人がドキドキするようなサッカーをやり続けないといけない。

俺らのストロングでもあるし、ジェイの良さを活かすためでもあったんだけど、やっぱり外に頼りすぎていた部分はあって。そこにスルーパスとかラストパスの際どい針の穴を通すようなシーン、そういうのをイメージしたボールがバンバン出てくるともっと面白くなると思う」

2016年最後の全体練習を終え、名波監督は今シーズンへの展望を語った。そして、新たなストライカーとして川又がチームに加わった。ワイルドな風貌のFWに課された役割は得点だけではない。自身のシュート数増加は、確かに名波監督から課されたものではある。だがゴールに直接関わる仕事は、優先順位としては決して高くなかった。

「堅碁のようなアクティブなFWがいるから、ボックス脇にプルアウェイしながらとか、Uの字を描いて背後に出て行く回数を増やした方がチームのためになる。俺はそういうサッカーが好きだから。動くFWを獲得したのはそこだよね。だから本人にも『年間5、6点でもいいよ』と言っている。その代わり裏に動き続けろ、と」

新潟で23点を記録して以来の二桁

毎試合、そして日々の練習から川又の動き出しは質・量ともに高いレベルにあった。決してコンディションが良くない時でも言い訳にせず、DFとの駆け引きに集中した。「足が痛い中で全うしてくれた」という指揮官の言葉は、最大級の賛辞だろう。

FWとしてゴールに飢えていたのは間違いない。そうした中でも川又は与えられたタスクを忠実にこなした。「俺が点を取って勝てればそれが最高だけど。俺が決めたらチームが盛り上がるのはわかるし」と話したこともある。これは偽らざる本音だろう。

だからといってエゴに走ることはなかった。「試合に勝つためならチームを優先するし、ジュビロが勝ちゃあいいよ」と口にするほうが圧倒的に多かった。意識を自身ではなくチームに向け、それを仲間もわかっているから最前線で奮闘する男にボールを供給する。

これまでのキャリアで、川又がネットを揺らした試合はほとんど負けていない。今シーズンも12試合でゴールを挙げているが、敗れたのは第25節・アウェイでの札幌戦だけだ。

「お互いの信頼関係がいいのもあるし、チームが上手くいっている時っていうのはやっぱりFWが点を取ったら負けにくいというのはあるんじゃないかな。でも、みんなのおかげだと思っている。俺がゴールを決めても、みんなが守ってくれるから勝ちに繋がるわけで」

ボールを引き出すための動き出し、相手DFを背負ってのポストプレー、ファーストディフェンダーとしての献身など多くの仕事を任される中、結果的に得点数も『14』まで伸ばした。アルビレックス新潟時代の2013年に23得点を記録して以来、4シーズンぶりのふた桁である。

「あれを首で持っていける日本人はなかなかいない」(中村俊輔)

川又が奪った14ゴールのうち、スルーパスに反応したものと右クロスのヘッドが特に多かった。前者は、名波監督が求めた動き出しを実践してきた証明だろう。そして、後者の形も川又の大きな武器である。

第8節・鹿島アントラーズ戦、磐田はディフェンディングチャンピオンを3-0で下している。この試合で川又は右サイドからのクロスを頭で叩き込んだ。「上で待てていたあのヘディングシュートはワールドクラス」と名波監督も絶賛する一撃だった。

第16節・FC東京戦では川辺のクロスを、打点の高いヘッドで合わせた。さらに第23節・C大阪戦でも、川又は右からのボールに強さを見せた。中村俊輔のショートコーナーを川辺駿が丁寧に戻すと、10番が中へ送ったボールに川又が反応。後ろに下がりながらの難しい体勢だったが、頭で決めた。「あれを首で持っていける日本人はなかなかいない。彼の良さが出たと思う」と、中村俊輔は振り返った。当の川又はこう述べている。

「一回前に入って斜め後ろにジャンプしてからだったので、正直よく決めたなと思う。シュンさんの左足っていうのもあって、ボールの回転がゴール向きだったから(シュートが)飛びやすかった。逆の回転だったらあそこまで飛んでいなかったかもしれない。シュンさんはわざと緩いボールを入れているから、それに反応できたのも良かった」

「まだ28歳。これから数年でぐっと伸びると思う」(名波浩監督)

空中で止まることができ、中村俊輔の言う「首で持っていける」パワーを、今回のE-1サッカー選手権で発揮したいところだ。また、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はCFタイプの選手に多くのことを求めるはずだが、川又はそれに応えるだけのベースを身につけている。

追加招集という形ではあるが、日本代表のユニフォームに再び袖を通すチャンスを得られたのは大きい。何より、まだ覚醒の途中だ。名波監督は言う。

「堅碁はまだ28歳。これから数年でぐっと伸びると思う。ストライカーは30歳過ぎから必ず伸びてくるので、ここから2~3年がものすごく大事になる。今後、アイツが得点王になるためには周りの協力も必要だけど、自分自身を色々見つめ直す意味でも今シーズンはいい機会だったんじゃないかなと」

川又は今シーズン、加入初年度の磐田に多くのものをもたらし、自身も“復活”を印象づける1年を過ごした。ストライカーとしてはもちろん、チームの駒としての働きにも磨きをかけた。ただゴールを奪えるだけではない、真の意味で仲間から信頼されるFWへ進化していった。

(取材・文:青木務)

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