いきものがかり<地元でSHOW!!>で見た「いきものがたり」と「ぼくらのゆめ」(蒼山静花)

【音踊人27】いきものがかり<地元でSHOW!!>で見た「いきものがたり」と「ぼくらのゆめ」(蒼山静花)

  • BARKS
  • 更新日:2016/10/20
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神奈川県の県央地区、海老名・厚木。神奈川県のなかでも一際鳴りを潜めているこの地区。だが、この地区の知名度をここ10年で一気に上げてくれたグループがいる。そのグループの名は「いきものがかり」。この地区出身であること、ここの路上から誕生したことをことあるごとに発信してきた彼らが、デビュー10周年にしてついに、地元の空の下に帰ってきた。それも、4日間で10万人もの観客をひきつれて。

何を隠そう、筆者自身も神奈川県出身だ。幼少期の休みの日には習い事のあとに海老名のサティ(今はイオンだろうか)やビナウォークへよく連れて行ってもらっていた。クリスマスプレゼントにおもちゃを買ってもらうときは厚木のトイザらスに行ってたし……というと、地元以外の人にはまったくわからない話かもしれないが、それぐらい身近に感じる、思い出もたくさんある土地。そんな場所に彼らが帰ってくる。それも“10周年”という大きな門出のタイミングで。これは見届けないわけにはいかない。そう思い、私は最終日の厚木市・荻野運動公園へ足を運んだ。

「神奈川って言ったら都会じゃん、横浜あるし」なんてよく言われるけれど、県央地区は字を見てのとおり「神奈川県の中央部」。駅からバスに揺られると、眼前に広がる光景は俗にいう郊外だし、青々とした大山が目の前にそびえたっている。そんな場所が、今回のライブ会場だった。正直、ライブをやる場所ではない。海老名・厚木出身のいきものがかりだからこそ、ライブをやらせてもらえる場所だったのではないかと思う。

地元の協力を全面に受けた<超いきものまつり2016>。厚木市長が地元のゆるキャラあゆコロちゃんを連れてステージに登場し、開会宣言をしたところにもそれは体現されているだろう。これからライブが始まるとは思えぬ和やかな雰囲気。しかし、市長が退場し、バンドメンバー、そしていきものがかりの3人がステージに登場すると、一瞬にして空気が変わった。

開演前からポツポツと降っていた雨が止み、緑のなかに訪れた一瞬の静寂。彼らがこのライブのオープニングに選んだのは「ありがとう」と「風が吹いている」だった。”まつり”と入っているライブタイトルの割には少し意外。と思いながらも、この2曲の共通点にはっと気付いた。

ーー産みの苦しみを味わった曲。

<超いきものまつり2016>が海老名運動公園で開幕する直前に、メンバーの水野良樹が「いきものがたり」という一冊の本を出版した。この本には、いきものがかり結成から今までの歴史が約450ページにもわたって事細かに綴られている。詳細はぜひ本を購入し読んでいただきたいところだが、本のなかで、ターニングポイントとして紹介されている曲がいくつかある。そのなかでもひときわ濃いエピソードとして記されている曲がこの2曲だ。

序盤にして、このライブはいつものいきものがかりのステージとは違うぞと感じさせられた。これから“いきものがかりの歴史”を目の前で見せられるのかもしれない。その予感は、間違っていなかった。

「キミがいる」「ブルーバード」とアッパーなナンバーで少し肌寒かった会場を一気に熱気に包みこんだかと思えば、「ラストシーン」「翼」とニューナンバーで緩急をつける。「後ろの人は全然見えないよね」と言って、会場の中心部にまで飛び出すセンターステージまでバンドメンバーを一斉に引き連れ、「地球」を全方位客席に囲まれたなかで演奏。日替わり曲として、この日だけのために彼らが用意したナンバーは「青春ライン」、そしてメジャーデビューしてから一度もステージで歌ってこなかった「からくり」。楽曲が始まった瞬間、この曲が聴けるなんて予想だにもしなかったファンの感嘆の声が響く。

メインステージへ戻り、吉岡聖恵の母校、厚木市立南毛利小学校の生徒たちとともに「YELL」を合唱。そしてメンバーがステージから姿を消し、時は17年前まで遡る。彼らの所属事務所キューブの役者、古田新太、藤木直人、中越典子、加藤諒など錚々たる面々が集結し、いきものがかりの歴史を再現していく。ユーモアのある脚色がスパイスとして加えられ紡がれた物語は、やがていきものがかりがサンダースネイク厚木という地元のライブハウスで初めてワンマンライブを行った日へと、私たちを連れていく。

ステージと客席との間にガレージのようなシャッターが下りているライブハウス。開演と同時にギコギコと会場にその金属音が鳴り響く。あの日、あの場所にあったシャッターはここにはないけれど、モニターに映し出される映像によってそれが再現されていた。シャッターが半分ほどあがったところで「花は桜 君は美し」のイントロが始まる。初めてのワンマンライブの日の光景が、現在のいきものがかりによって再現される。その日の光景を実際にこの目で見た人も、本人たちからエピソードとして語られたことで頭の片隅に記憶として残っている人も、思わず興奮せずにはいられない瞬間だった。

ここからはライブ後半戦。「ラブとピース!」、「Sweet!Sweet!Music!」とホーンセクションが大活躍するナンバーや、「気まぐれロマンティック」、「じょいふる」とライブの定番曲を一気に披露し、夜風で少し涼しくなってきた会場に熱を吹き込む。サビで客席の合いの手が加わる「笑ってたいんだ」で会場に一体感を生んだところで、あっという間に本編ラストナンバーに。彼らがこの日、本編最後の曲として選んだのは、「帰りたくなったよ」。

ーー“帰りたくなったよ 君が待つ家に 聞いて欲しい話があるよ 笑ってくれたら嬉しいな”

地元厚木という土地で歌うことによって、今までと違った聴こえ方をしたこの楽曲。「君が待つ家」は、文字通り彼らの「家(ホーム)」である海老名・厚木のことを指すのかもしれないし、いきものがかりの音楽に居場所をくれた現在の音楽シーンや、リスナーみんなの心のことを指すときもあるのかもしれない。この楽曲も水野良樹の著書『いきものがたり』のなかで濃いエピソードとして描かれている楽曲。オープニングナンバーとエンディングナンバーにこれらの楽曲をもってくることで、故郷に錦を飾ることができたのではないだろうか。そんな風に感じられた。

客席から鳴り響くアンコールに応え、再びステージに現れたいきものがかり。ここで彼らは「ぼくらのゆめ」という楽曲で、10年という節目に3人の結束を強く再確認する。「これからもいきものがかりとして3人で歩んでいく」そんな決意表明にもとれた。

「夢題~遠くへ~」。3人がいきものがかりとしての歩みを始めた初期から存在するこの楽曲。この楽曲を演奏する前、普段は口数の少ない山下穂尊が言葉を選びながらも、今までに見たことのないぐらいの勢いで、地元でこの曲が演奏できることの喜びを語っていた。いまだに地元で友達とよく飲んだりしているとさまざまなところで語っている彼。メンバーのなかでもひときわ地元愛は強いのではないだろうか。いつもは吉岡と水野のトークを微笑ましく横で聞いていながら、最後に一言で一番おいしいところを持っていくというポジションにいる彼の心をここまで動かしている事実が、終盤にさしかかっているこの公演の成功を既に物語っているのではと、筆者は感じた。

「最後に、私たちのはじまりの歌を演奏したいと思います」と吉岡が語り、演奏されたのは「SAKURA」。ここにも彼らが慣れ親しんできた地元の景色が歌詞のなかに登場する。地元の景色を切り取り、歌ったこの楽曲でメジャーシーンへ生を受けたいきものがかり。10周年の締めくくりにこの曲を演奏することで、また新たなスタート地点に立とうとしている。ピンと背筋を伸ばし、凛とした表情で前を向き歌う吉岡聖恵の姿に、そんな決意を感じ取った。

この曲をもってアンコールが終了し、「ぼくらのゆめ」のインストをバックに客席へ手を振る3人。本来ならば、ここで公演は終了となるはずなのだが、何やらひそひそと耳打ちをする。舞台袖にいるバンドメンバーに目を見やって、水野が放った言葉は「もう1曲だけやってもいいですか」。こんな展開を予想だにしていなかったファンからは喜びの声と拍手が湧いた。いきものがかり史上初(と筆者は記憶している)のダブルアンコールは、オープニングナンバーに演奏された「ありがとう」。地元での公演を無事に終えた彼らからの感謝の気持ちが直球なまでに伝わる演奏だった。

述べ3時間半超にわたる公演。過ぎ去った時間の長さを忘れるぐらい、めまぐるしくいきものがかりの10年が凝縮されたセットリストであった。このタイミングで水野が「いきものがたり」を出版したことも、このライブのセットリストにさらなる花を添える形になっていたと思う。曲が生まれた背景、意味、その曲が彼らの歴史のなかでどのような立ち位置で存在し、成長していったのか。本人たちでなければわからないことを彼は10周年というタイミングで赤裸々に明かしてくれた。(あくまで水野からの視点だ、と彼は強調しているが。)この本を読んでから会場に向かったことで、今回のセットリストに込めたいきものがかりの強い想いをなおのこと感じ取ることができた。「乗り越えられないかもしれないと思うような壁があっても、たくさんの人の応援があったから、そしてこの3人だったから乗り越えて来られた」とライブの中で語った彼ら。

ーー“ほら Baby Baby Baby 僕らの夢はもう 僕らだけのものじゃないんだよ いつも 愛されてその愛を またつないで すべてがいま 奇跡みたいだ”

今回の地元公演はまさに、彼らだけの夢ではなく、彼らを取り巻く人々、地元の人々、そして彼らが地元を愛する気持ちを理解しているファンの人々、みんなの夢であったと思う。全国各地から4日間で10万人もの愛を集めたいきものがかり。すべてが終わったこの瞬間は、奇跡のように感じられるかもしれないが紛れもなく彼ら自身の手で生み出した現実だ。ここでたくさんの愛を受け取った彼らが、次にどのような楽曲を奏で、どのような歴史を歩んでいくのか。これからの彼らが紡ぐ「いきものがたり」も見守っていきたいと思えるような公演であった。

<SMBC 三井住友銀行 Presents

いきものがかり 超いきものまつり2016 地元でSHOW!!〜厚木でしょー!!!〜>

@厚木市荻野運動公園

2016年9月11日セットリスト

01. ありがとう

02. 風が吹いている

03. キミがいる

04. ブルーバード

05. ラストシーン

06. 翼

07. 地球

08. 青春ライン

09. からくり

10. YELL

11. 花は桜 君は美し

12. ラブとピース!

13. Sweet! Sweet! Music!

14. 気まぐれロマンティック

15. じょいふる

16. 笑ってたいんだ

17. 帰りたくなったよ

<アンコール>

18. ぼくらのゆめ

19. 夢題~遠くへ~

20. SAKURA

<ダブルアンコール>

21. ありがとう

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