【寄稿】トランプ大統領の綱渡り的外交政策

【寄稿】トランプ大統領の綱渡り的外交政策

  • WSJ日本版
  • 更新日:2017/11/14
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――筆者のウォルター・ラッセル・ミード氏はハドソン研究所フェローでバード大学教授(外交論)

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ドナルド・トランプ大統領が引き継いだ時点で世界は既に危機的状況にあった。パックス・アメリカーナ(米国主導の世界秩序)はアジア、中東、欧州、カリブ海地域で脅かされていた。ホワイトハウスはやっと今になって優先事項をはっきりさせたが、トランプ氏の気質や適性についての疑問は解消されていない。

10カ月さかのぼって、トランプ氏が大統領就に就任した当時のことを考えみよう。北朝鮮は定期的な実験を通じてミサイルや核兵器の改良を進め、米国本土を脅かすまでもう少しというところまで来ていた。さまざまな方面からアジアの現状に異議を申し立てていた中国はその動きに拍車をかけていた。イランの拡張主義で中東は混乱に陥る恐れがあった。イラン政権はどうしても核合意を達成したいオバマ政権をまんまと出し抜いた。ロシアがクリミアを併合し、ウクライナ東部の分離主義勢力を支援した結果、冷戦後の秩序をめぐる法的、地政学的な課題が浮き彫りになった。ベネズエラ情勢の悪化が止まらず、米国にとって直接の利害関係があるラテンアメリカの不安定化が懸念されていた。

トランプ大統領が世界との積極的な関わりについても懐疑的だったことを思い出してほしい。トランプ氏はジョージ・H・W・ブッシュ、ビル・クリントン両政権が確立した多国間の貿易体制によって米国の国益が損なわれていると確信して大統領に就任した。大統領はまた、2016年発効の気候変動に関するパリ協定に明記されたプロセスをないがしろにした。

それだけではない。次期政権担当チームは国民が外交であれ、国際援助であれ、戦争であれ、海外への積極的な関与にますます懐疑的になっていることを承知していた。メディアや外交の既成勢力は感情的になって、性格や政治的な理由からトランプ氏に反対した。

タレーランとメッテルニヒとビスマルクとキッシンジャーが束になってかかっても、これほど多様で緊急性のある、扱いにくい一連の問題に対処するのは容易なことでなかっただろう。はたから見ても分かるほど、トランプ政権は一貫性のあるアプローチの策定に苦労していた。しかしトランプ氏が大統領に就任して間もなく1年が経とうとする中、一定の秩序が姿を現し始めた。少なくともトランプ政権の外交政策の概要ははっきりしたようだ。

政権が最初に取り組んだのは優先順位を付けることだった。ホワイトハウスがアジアと中東を他の地域や課題より重視していることは明らかだ。ウクライナとベネズエラの危機は後回しにされた。気候に関する政策や貿易政策も後回しにされたが、大統領のツイートを見ると、それが分からないこともある。

優先事項に取り組むに当たって、政権は従来の仲間との関係を強化して、危機に瀕(ひん)している地域の秩序を回復するという実践主義者のアプローチを選んだ。まだ実力が定かではないサウジアラビア新指導部やエジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、イスラエルと緊密に連携してイランを抑制するというやり方だ。

トランプ政権は過激派組織「イスラム国(IS)」のいわゆる「カリフ制国家」を破壊するというそもそもの目標をほぼ達成しており、反イランの動きを本格化させつつある。ホワイトハウスはサウジなどとの新たな連携によってもう一つのゴールについても前進が期待できると考えている。もう一つのゴールとは、イスラエル・パレスチナ紛争を封じ込め、できれば解決することだ。

アジアでは、日本と緊密に連携して、中国に対抗できる協調体制の構築・強化に乗り出すと同時に、北朝鮮への圧力強化で中国の協力を取り付けようとしている。米国は北朝鮮に戦争のリスクが見せかけではないことを信じ込ませようとしているが、その一方で、ホワイトハウスは中国に対して貿易や政治の面で円滑な関係を構築したいという姿勢を示せば、北朝鮮問題で中国から実質的な支援を引き出せると期待している。

これまでのところ、トランプ大統領の外交政策はその発言ややり方が示唆するものより常識的である。アジアや中東で修正主義的な勢力に対抗して以前からの同盟諸国と連携する手法は戦略における革命とは言い難い。

ただしトランプ氏の現在の目標が常識的だとしても、世界の現状はそうではない。トランプ氏は失敗してもおかしくない。課題は大きく、状況は厳しい。味方も敵も、医療保険制度などの問題をめぐる米共和党の混乱を見守りながら、2018年の選挙で民主党の動向を見極めつつ、ロバート・モラー特別捜査官による米大統領選へのロシア介入疑惑についての捜査の進展具合に注目している。トランプ氏の外交政策はトランプ氏の大統領の地位と同じく、大統領自身も結果を完全にコントロールできないギャンブルだ。

トランプ氏は差し当たり、中東で野心的な目標を追求しながらインド・パキスタン地域に関与するという綱渡りを演じている。世界の強国の中には、トランプ氏の失敗を願う国もある。こうした国はトランプ氏を失敗させるためにできるかぎりのことをするだろう。米国民は党派やトランプ氏への個人的な感情にかかわらず、大統領が外交政策で成功を収めるよう祈るべきである。失敗すれば非常に厳しい結果を招く可能性がある。

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