「優しさ」は時に沖縄を危機に陥れる

「優しさ」は時に沖縄を危機に陥れる

  • アゴラ
  • 更新日:2016/10/20

■「基地があるから戦場になる」のか

沖縄で不幸としか言いようのない、どんな経緯があれ発言自体は非難せざるを得ない出来事が起きてしまいました(沖縄県警が「土人」発言認める 「シナ人」発言は確認急ぐ)。しかしそれでも「沖縄を非武装化せよ」とは言えません。

沖縄の米軍基地に反対する人の中には「米軍基地があると、沖縄が狙われ、戦場になる」との理由を挙げる人がいます。しかしこれは大きな間違いで、沖縄に米軍基地があることによって「今のところ戦場にならなくて済んでいる」のです。なぜでしょうか。

国際社会を俯瞰してみても、東シナ海は「紛争が起こる可能性が非常に高まりつつある」地域です。紛争、衝突は中国が海洋進出をして現状を変更したいと考え、実行に移した時に起こります。

すでに南シナ海では、中国は岩礁の埋め立てを進めています。

ただし、いくら人民解放軍でも世界一の軍隊である米軍を正面から敵に回して戦うことは当面、避けたい。その意味で中国海軍は「進出はしたいが、米軍の影響力が邪魔」だと思っているのです。

「基地があるなんて、沖縄の人たちが可哀想だ」「また沖縄の人々を戦火に巻き込むのか!」というヒューマニズム、あるいは勇ましき反米意識、戦略なき対米自立論の感情のままに流され、沖縄を「戦力の空白地帯」とすれば、沖縄の人たちをさらなる現実的脅威に直面させることになりかねません。(さらには台湾をも危険にさらします→「沖縄非武装は平和ではなく中台紛争への道 — 宇佐美典也」

■中国のあの手この手

中国側はあの手この手で米軍の影響力を南シナ海、東シナ海から追い出そうと頑張っています。日本で起きている米軍追い出し作戦の「あの手この手」の一つが沖縄に対する訴えかけです。

「沖縄は日本よりも中国との方が近かった」「無理やり沖縄を日本に組み込んだ。我々はそうはしない」「我々の文化は共通している」「本土は冷たいが、我々は違う」「本来、独立していた琉球は再び独立すべきだ」

中国は歴史、文化、経済を持ち出し、甘い誘いの声をかけてきます。「もしかして、本土政府よりよくしてくれるんじゃないか」と思うかもしれません。しかしかつて中国がチベットやウイグルに対して、高度な自治や文化、宗教の保護を約束しながら、現在これを反故にし、弾圧に及んでいる事実を忘れてはならない。陰に陽に展開されるアピールは、当然のことながら沖縄のためを思ってのものではないからです。

これらのアプローチを指摘する声を「反中だ」「陰謀だ」と断言する人もいます。しかし、むしろ「やっていないと思う方がおかしい」。相手の軍事における影響力を、自らの軍事力を行使することなしに低減・無効化できるとなれば、それをしない理由がない。

プロパガンダや工作というと、大業な映画の中の世界の劇的な出来事と思いがちですが、言い換えればPR。国と企業を置き換えれば「PRしない企業などない」ように、宣伝工作をしない国家など通常はあり得ないのです。カネを直接つかませるようなことは、確かにそうはないのかもしれない。しかし、例えば中国の研究所が沖縄について論文を書き、それを沖縄の独立運動家が利用して、「琉球独立論」を唱える。これ、立派なプロパガンダ工作の出来上がりです。

うまく沖縄の人々や、米軍基地反対派を乗せ、米軍の影響力を追い払うことが出来れば、むしろその後にこそ沖縄が戦場になる日が近づくことになるのです(〝無血開城〟するなら戦場にはなりませんが、中国領にはなります)。

■沖縄非武装化は「捨て石」作戦以下

沖縄は確かに日本全体を守るための最前線として、米軍基地を受け入れる重荷を背負わされています。しかし米軍基地は、現状、日本全体の利益を守ると同時に、沖縄そのものの安全保障環境を成立させている。ですから、もし米軍撤退を言うのであれば、その空白を埋めるための沖縄における自衛隊の増強も同時に言わなければなりません。

沖縄への共感を示すために「過去の沖縄戦を思い出せ」という方がいます。「その傷を負う沖縄県民にまた被害をもたらすのか」「米軍基地に反対する彼らの気持ちはわかる」と。確かにわかります。

あの時、大本営はいわゆる「捨て石」作戦をとりました。しかし仮に今、自衛隊の配備強化をすることなしに沖縄から基地を撤退させれば、戦力の空白地帯が生じ、敵の影響力の侵入を招きます。これは「捨て石」以下の作戦です。

我々は過去以上の過ちを繰り返すわけにはいきません。

■米兵の犯罪への怒りはあれど

一独立国であり、先進国である日本に、今なお米軍基地が置かれ、日本人が立ち入ることもできない地域があることには悔しい思いがあります。その悔しさを他でもない沖縄の方々が強く抱いていることにも共感します。

米兵の犯罪には、体が震えるような怒りを覚えます。占領の延長である米軍基地に属する米兵が、自国民の女性を手にかけるなどということは、屈辱以外の何物でもない。

「基地容認派」の一部が居丈高に沖縄の思いを「反日」などと断罪する振る舞いには許し難いものを感じます。「土人」発言も同様です。また、あまりに露骨でまっさらな「基地歓迎(ウェルカム)派」による沖縄非難は、むしろ沖縄と本土との分断を積極的に進めているのではないかとさえ思うほどです(実際、「その方面の工作も」疑ったほうがいいと思いますが)。なにより私自身、「なぜ親米派は対米自立を考えないのだ」と暴れたこともありました。

それでもなお、大切なのは、今と将来を生きる(北海道から沖縄までの、あるいは在外邦人も含む)日本国民を守ること。現状を知れば知るほど、敗戦国・日本は戦争から七十年経った今も自衛隊が手足を縛られている状態であり、かつての敵の力を借りなければ、日本は自国の安全、沖縄の安全を守れない冷酷な現実だけが突きつけられるのです。対米自立の意識は常に持っていなければなりません。が、現実は極めて厳しい。(※「米軍などいらない」という方は、ぜひこちらをお読みください。)

我々はこの忸怩たる思いを抱えながら、現実と折り合いをつけて「かつての敵と手を携えて国を守る」道を、当面、進まなければならない。

「米軍基地があるなんて、沖縄が可哀想だ」という気持ちは尊いものです。しかしその優しさ、「沖縄に寄り添っている」つもりの姿勢が時に、沖縄に災禍をもたらすことになりかねないのです。

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