N国党が次は「文春砲」「マツコ・デラックス」を狙った恐るべき理由

N国党が次は「文春砲」「マツコ・デラックス」を狙った恐るべき理由

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/08/26
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「N国党現象」の本質とは何か

「NHKから国民を守る党」(N国党)のメディアジャックが止まらない。

参院選直後のテレビ番組を席巻した後も、インターネットメディアを中心に話題が尽きない。民放の情報番組での「気持ち悪い」発言に端を発する「マツコ・デラックス出待ち騒動」や、批判の矛先を番組スポンサーにも向けてネット炎上を招いた「崎陽軒不買運動」等々、大手ニュースサイトからソーシャルメディアに至るまで、この夏の日本はN国党に見事に踊らされてしまった。

代表の立花孝志氏がYouTube上でネタばらししていたように、これらは党のことを宣伝するためにあえて仕掛けた「炎上商法」であり(額面通りに受け取るかどうかはさておき)、自らの政治活動を「プロレス」と公言して憚らない「立花劇場」にまんまと乗せられた格好だ。

しかし、N国党の登場とその支持層のポテンシャルを見極める上で、今回のような「炎上商法」のテクニックは、実のところ枝葉にすぎず根幹ではない。

現在拡大の兆しを見せている「N国党現象」の本質は、およそ次の2点に要約することができるだろう。

・オールドメディアvs.ネットメディアの戦いという「新しい戦線」を予感させる、いわば「日本版トランプ現象」である。

・直接民主主義的なものへの期待感が、YouTubeという「個人との距離感が近いメディア」によって再形成されている。

週刊文春の取材内容を暴露

8月に入って間もなく、ある事件が発生した。立花氏と「文春砲」のバトルだ。

取材のため、「週刊文春」からファックスで送信された質問状について立花氏は、緊急性のない事柄に「短い回答期限」を設定した同編集部を痛烈に批判した(その後、「週刊文春」8月29日号に掲載された記事に対して、立花氏は名誉棄損で訴える構えを見せている)。

動画の中で立花氏は、視聴者に対し、「金曜日の夜9時前に10項目の質問をファックスで送ってきて、日曜日の昼12時までに書面で回答しろというのをどう思いますか?」などと問いかけ、「TwitterのDMで口説いた女性との一晩だけの肉体関係が多い」などの噂の真偽を確かめる質問を読み上げ、「ネット上の噂をそのまま聞いてくる」と呆れ返りつつ身の潔白を主張した。

立花氏は、このようにYouTubeで質問状に次々と回答していき、「メディアに発言を切り取られ、一方的に書かれるリスク」に先手を打ってみせた。人気ユーチューバーが週刊誌の取材内容を逆に暴露し、自身のメディア(YouTubeチャンネル)で回答するというやり方は従来にないものだ。

支持者は「鏡の国の住人たち」

N国党は、NHKのスクランブル化の実施を公約に掲げたシングルイシュー政党だが、放送法4条違反を指摘した「マツコ・デラックス出待ち騒動」で明らかになったように、おそらくはNHKだけでなく、主流メディアに代表される既得権益層に「お灸」をすえる役割を自任している。

つまり、第4の権力といわれる「マスコミ」に対するカウンターとなることで、自らの政治的ポジションを築こうとしているのだ。

立花氏と「文春砲」とのバトルが象徴しているのは、ネット上ではいわばマスコミの代名詞ともなった「印象操作」に対抗するゲリラ戦が本格化し始めたことと、YouTubeというマスコミを相対化する世界的動画共有サービスを舞台とした、「新しい戦線」の誕生だ。

単純に、オールドメディアvs.ネットメディアという構図で捉えることもできるだろう。NHKに続いてマツコ・デラックス、週刊文春という「誰もが知っているマスコミ(の代表者)」をターゲットとしたことに、立花氏の嗅覚の鋭さが伺える。

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ここで重要なのは、オールドメディアとネットメディアでは、それぞれの視聴者・受け手の「見ている風景」が異なることだ。

N国党支持層は、立花氏らがNHKに代表される主要メディアと、メディアの既得権益を守ろうとする人々に闘いを挑んでいることに共感し、立花氏が引き起こす騒動の一つひとつを痛快なエンターテイメントとして享受している。

そのようなYouTubeに多くの時間を費やす「主要メディアを必要と思わない人々」は、主要メディア側から見れば、世界観が反転したいわば「鏡の国」の住人のようなものだ。

彼らにとって、テレビを持っているだけで請求されるNHKの受信料ほど不可解なものはない。Amazonプライム・ビデオやネットフリックスなどの映像配信サービスが浸透すればするほど、「見てもいないのに支払いを強制される」時代遅れの制度に腹が立って仕方がないだろう。

消費者としての生活実感に根差した「理不尽への反発」は、世界的にみても看過できない問題となっている。「都合の良い搾取のシステム」に胡座をかいた、既得権益層への反発が巻き起こっているのである。

日本では議会進出するまでの勢力にはならなかったが、ファイル共有ソフトの合法化、著作権法改正などを掲げた「海賊党」は、シングルイシュー(に近い)政党の前例として参考になるだろう。ちょうど10年前、欧州議会選挙に海賊党党首のリカルド・ファルクヴィンゲ氏が出馬し、初めて1議席を獲得して大きな衝撃を与えた。

もちろん、N国党と海賊党は政策やスタンスも違っているが、「時代状況にそぐわない単一の課題の解決」を求める民意に担ぎ上げられた点で共通している。日本でも少し遅れて、このようなまったく新しい動きが起こっていると考えざるを得ない。

既得権益層に対する「嫌がらせ」

N国党幹事長の上杉隆氏は8月13日の設立会見で、「トランプ現象の日本での発出」を立花氏に見ていると述べ、既得権益層に対する「一般大衆のいわゆる一揆」との認識を示した。

トランプ氏の武器はTwitterだったが、立花氏の武器はYouTubeだった。恐らくは地道な草の根運動によって掘り起こされた「票田」と、YouTubeによって掘り起こされた「票田」の2つの支持層がN国党を支えていると推測される。NHKに何らかの怒りや不満をわかりやすく抱いている層だけではなく、個人的な不安や鬱屈を解消するための「スペクタクル(見世物)」に飢えた、無党派層も取り込むことに成功しているものと思われる。

立花氏に対しては、選挙運動中にヤジを飛ばした男性を追い回して取り押さえ、「私人逮捕」する動画がTwitterなどで拡散され、「カルト」「極右」といった批判も出始めている。だが前述のようなN国党の支持層にとっては、仮にN国党関連のスキャンダルが暴かれたとしても、支持が揺らぐどころか逆に強まる可能性の方が高いだろう。

「見ている風景」がそもそも異なるということだけでなく、この点でも、「N国党現象」と「トランプ現象」は相似形を示しているからだ。

トランプ大統領の支持層は、「トランプ大統領はエスタブリッシュメント(既成の権威や体制)を駆除するための劇薬であり、脅威として存在すること自体に意味がある」と、割と本気で思っているふしがある。

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大統領就任前には世界から総叩きを受けた「トランプ現象」が、今なお決定的に衰える様子を見せない理由は、「トランプがどんなに悪いヤツだろうと、別に構わない。むしろ悪いヤツだからこそ大統領にする意味がある」という支持者のロジックにこそある。それが既存の支配体制への「嫌がらせ」になるからだ。

つまり、「担がれている対象」と「担いでいる人々」の動機付けを最低限切り分けて考えることが重要になる。

もう1つのポイントは、「失われた30年」を経て政治に対する絶望がいよいよ深まるに連れて、個人の意思が国政へとダイレクトに反映される「直接民主主義的なものへの期待感」が増してきたことだ。

「政治家ユーチューバー」という特異な地位にいる立花氏は、「受け手との距離感が近いメディア」であるYouTubeチャンネルを介して、これまで政治が汲み取ることのできなかったある種の「民意」を集約しつつある。

「部族主義」のようにも見える

興味深いのは、党の方針でもある「直接民主主義」に試験的に着手したことだ。メンタリストDaiGo氏のアドバイスに従って、YouTubeの「アンケート機能」を積極的に使い始めたのである。

その結果を見ると、「安倍内閣を支持する/支持しない」がそれぞれ43%、35%に分かれたほか、「NHK放送のスクランブル化」に賛成が97%、「既得権益者をぶっ壊す!」に賛成が79%などとなっている(8月20日現在)。

これは単に「意見を聞く」というレベルの話ではない。立花氏は、このアンケートに基づいて、政治家としての行動を決めることを試みているのだ。

実際、マツコ・デラックスの発言に対する抗議のため、8月19日に東京MXテレビに乗り込むことについての賛否も視聴者に尋ねており、「反対意見のほうが多ければ行かない」と明言していた(そして、賛成が72%だったため実行した)。

オールドメディアという既得権益層に徹底した不信感を抱く「鏡の国に住む人々」が増えれば増えるほど、N国党が「日本最強のポピュリズム」政党に成長する可能性が現実味を帯びるのは必然といえる。

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立花氏やN国党の言動には、確かに「既存の」政治家としては眉を顰めるようなものも多い。しかし、レッテル貼りをして叩くことは簡単でも、実際問題として立花氏のチャンネル登録者数は現在42万人に達し、参議院選時の17万人から25万人も増加した。共同通信の最新の調べでは、N国党の支持率は7月から0・3ポイント増の1・3%に上昇している。

N国党の勢力拡大は、「失われた30年」という「中流から転落した人々」の怨嗟が育まれた時代を経て、ネットにおける「部族主義のリバイバル」と「映像コンテンツのフラット化」が生み出した新潮流のように思えてならない。

色物と決めつけてまともに取り合わないのではなく、背景にどのような社会課題が潜んでいるのか、今一度冷静に検証していく必要があるだろう。

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