楽天のFREETEL買収で見えてきた格安スマホの未来

楽天のFREETEL買収で見えてきた格安スマホの未来

  • @DIME
  • 更新日:2017/11/19

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は楽天のFREETEL買収で格安スマホ(MVNO)業界はどうなるか? 議論します。

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■MVNOが破綻したらどうするか

房野氏:楽天がFREETELを買収したことが、大きな話題となりました。

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楽天モバイル プリペイドSIM

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楽天モバイル スーパーホーダイ

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FREETEL スマートフォン

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房野氏

法林氏:FREETELユーザーにはメールが届きましたね。

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法林氏

石川氏:なんと書いてあったんですか。

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石川氏

法林氏:楽天が承継して、11月1日から変わりますみたいなことが書かれていたけど、それ以上の新ネタはなかったな。

石野氏:キャンペーンもそのまま続きます、みたいな、そんな内容。

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石野氏

石川氏:「とりかえ〜る」継続ですか。

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FREETEL とりかえ〜る

石野氏:取りあえず継続じゃないですか、終わるまでは。とりかえ〜るは続いても、取り換え対象の機種が出ない可能性がありますよね。

法林氏:FREETELの端末、結構レアものとして使えるかも。それにしても、FREETELは端末で生きていく方がつらいんじゃない?

石野氏:つらいと思いますよ。でも、端末は出さなきゃ1円も稼げない。

房野氏:端末事業の方が厳しいんじゃないのかと思っていました。

法林氏:端末事業から撤退して、MVNOをほそぼそでもいいから続けていくほうが良かったんじゃないかと思うけど、でも出ていく金も大きいか。

石川氏:楽天は回線しか欲しくなかっただろうし。あと、総務省系のファンドとか、結構いろんな所からお金が出てるけど、あれはたぶん、端末事業に対してお金が出ていたと思うんです。

石野氏:海外事業ですね。

石川氏:だから、たぶん、端末事業がなくなると、お金稼ぎできなくなるので、仕方なく残っているという部分はあるんじゃないのかな。

石野氏:聞いた話だと、総務省も水面下で動いてたっぽい。つぶすと大変だっていうことになって。

法林氏:そりゃそうだよ。総務省がダメだと思うのは、MVNOがつぶれたときに、どうするかというルール作りができてないところ。変わり始めた頃から、みんなで一生懸命指摘してきたのに、何もできてない、ダメだよね。

石川氏:案の定、想像してた所がつぶれるっていう。FREETELも1回、MVNOをつぶしている人たちがいたりするわけですよ。

石野氏:取締役の藤田さん(プラスワン・マーケティング 取締役 藤田聡敏氏)は、かつてインフォニックスで「JALマイルフォン」をやっていた。

石川氏:「Tigersケータイ」とか。

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石野氏:そう、あれは1回つぶれてる。

房野氏:そういえば、いつの間にかなくなってましたね。

法林氏:いつの間にかなくしたんじゃなくて、どうにもならなくなって、しょうがないからKDDIが引き取ったけど、それも2013年に終了した。

石川氏:なぜその経験が生きていないのかがわからない。

石野氏:まったく生きてないんですよね。

法林氏:MVNOにもし何かあった場合、そこに回線を貸してるMNO(Mobile Network Operator:移動体通信業者のこと。国内ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが該当する)は何をするか。引き取るみたいなルールがあるのかないのかだよね。

石野氏:ないはずですよね。

法林氏:インフォニックスのときはそうした。じゃあルールとして作らなくていいのか。ユーザー的には、それ、どうすんの? ってところがある。

石野氏:ドコモとか、絶対引き取りたくないと思いますよ。

法林氏:引き取るかもしれないよ。でもつぶれたら最後。今回のFREETELは幸いにして楽天が買い取ったから良かったけど、買い取らない場合はどうするということがあるわけで。

石川氏:ある日、回線が明日から止まりますっていうことが、出てきてもおかしくないですから。

法林氏:旅行会社の「てるみくらぶ」が破産したときのことを考えると、十二分にあり得る話。

石野氏:でも、MVNOにはMVNE(Mobile Virtual Network Enabler。MVNOに対する支援サービスを提供する会社)がいるんで、最悪、そこが引き取るんじゃないですか。

法林氏:MVNEが焦げ付いた場合はどうするの?

石野氏:MVNEで焦げ付きそうなところってあるかな。

法林氏:ないか。

石野氏:別の商売をやってたりとか、老舗のプロバイダーですね。例えば仮にトーンモバイルが駄目でも、フリービットは大丈夫ってところじゃないですか。MVNEが同じMVNE内のMVNOをくっつけたりする形でで回すとかになるんじゃないかな。

石川氏:かつてのプロバイダと一緒で、これからMVNOも収束していくんじゃないかな。

法林氏:石川君はFREETELと楽天の件が発表になったとき、「われわれが言ってたことが、ようやく実現した」とかって喜んでた(笑)

石川氏:いや、なんか自分の嗅覚が正しかったことがわかったというか。この人たち、うさんくさいなっていうのを感じていて、だからFREETELだけは、自分のラジオ(ラジオNIKKEIの「石川温のスマホNo.1メディア」)にも1回も呼んでないです。絶対何かあると思って。取材活動を20年ぐらいしていて、なんかうさんくさい人っているなって感じるんですけど、その嗅覚はちゃんと信じた方がいいんだなって。

通信業界って、過去にもうさんくさいところがいっぱいあったじゃないですか。平成電電とか、「モブデム」「モブコム」とかをやったジャパンメディアネットワークとか。ウチの通信は素晴らしいですとか、すごい技術を使っていますといって、一般の人はそれでだまされるかもしれないけど、我々からすると、怪しいなとか、これってあり得ない話だよなっていうことがある。消費者を惑わせないためにも、自分がちゃんと嗅覚を持ってクンクンしないといけないなと思いました。

石野氏:言質を取っておく意味では、インタビューしておくのもいいと思うんです。証拠としても残りますし。

石川氏:それをそのまま載せるか、ちゃんと突っ込んだ上で載せるかってところもあるね。

石野氏:MVNOで、あんなに大赤字が出たのは、ちょっと不思議ではあったところ。MVNOって堅実にやれば......。

石川氏:堅実じゃなかったんじゃない。

石野氏:それはそうか。

石川氏:SNSのデータ通信量をカウントしないとかやってたじゃん。

石野氏:毎月2回の増速とか。

石川氏:やっぱりMVNOは堅実にやらないといけない。各社、条件が一緒なわけですし、明らかに1人当たりの収入が低いんだから、そんなにもうかるものでもないし、もっと堅実にやってお金を使わないようにしなきゃいけないはずなのに、あれだけ派手なことやってたら、そりゃあ、いつか資金がショートするのは目に見えていたというか。

法林氏:ちょっと失敗しましたよね。風呂敷を広げ過ぎた。

石川氏:いち早くシェアを取らなきゃいけないという焦りがあるのは十分理解できる。とはいいつつも、やっぱりね。だってBIGLOBEの人たちも、もうかっているMVNOはないんじゃないかって言っていた。通信単体でやっていくのは、なかなか厳しいんだろうなって気がしました。

房野氏:健全な経営のMVNOというと、どこですか。

法林氏:株式も含めてちゃんと審査を受けてる会社っていうことになるでしょうから、IIJ(インターネットイニシアティブ)とかは一番まっとうですよ。プロバイダとしてまっとうで、逆に言うと、まっとう過ぎて、コンシューマービジネスは全然取れなかったけど。でもまあ、ネットワークをつくるところでも、技術的にも、ちゃんとやっているのは分かる。要するに、うさんくさいお金の使い方をすれば、上場してる会社だったら、すぐばれるわけですよ。IIJは上場して、決算も出して、審査を経ているわけなので、そこはだいぶ違うのは確か。

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IIJmio

石野氏:四半期ごとに業績が出てるのは、1つ、信頼の拠り所。

法林氏:粉飾できなくはないけど、普通はしない。

石野氏:やらないですよね。少なくともFREETELみたいに、後からわかって、こんなに負債があったんだっていうことにはならない。だからOCNもそうですし、楽天もそうですし、みんな上場してますもんね。

■怖がる必要はないが、勉強は必要

房野氏:最終的に、MVNO市場はどうなるんでしょう。

法林氏:だいぶ淘汰されたね。ユーザーも一応、気にした方がいいのは事実。安いから契約したけど、会社が破綻して、この電話番号の行き先なくなっちゃった、どうしようみたいなのは、困るので。

石野氏:派手な宣伝を打っていって、でもバックが付いてないみたいなところは、もうなくなってきたかな。

法林氏:FREETELも一応、ヨドバシカメラというバックが付いてたんだけどね。出資率が22%くらいだっけ。

石野氏:あの程度のバックじゃ足りないでしょう。

石川氏:販売的にあんなにいいところを押さえていて、あのざまは何って感じ。

法林氏:20数%で止まってるところが、ヨドバシカメラなのかな。30%以上出して人を送り込むくらいのことをすればいいんだろうけど。

房野氏:nuroモバイルはソフトバンクのバックグラウンドがあるから大丈夫という判断でいいんですか?

法林氏:いや、ソフトバンクが営業面で絡んでいるのはNURO光。MVNOはドコモ回線。NURO光も回線そのものはNTTなんだけど、それを「ダークファイバー」という形で借り受けていて、電話サービスはソフトバンクのサービスを組み合わせている。

石野氏:nuroモバイル、まだ再編されてないですね。

法林氏:MVNOがつらくならない方法論としてあり得るのは、たぶん、固定回線を含めてセットで売っていく方向だと、僕は思っている。MVNOでデータ通信を2GBで契約したけれど、どうしても上限を超えて速度が遅くなるというお客さんに、家に回線があればいいですよ、光コラボでだんだん値段がこなれてきました、バックボーンの速度は少し遅めだけど、ウチの光回線をどうですか、とやる。BIGLOBEとかニフティとか、みんなやっているけれど、MVNO事業と光回線の事業を一体化して売っていくしかないんじゃないのかなと思うんですよ。家の固定回線を握ってる限り、お客さんがMVNOから逃れることは少なくなっていく。今のMNOがやってるセット売りと同じことができる。

石川氏:総務省は散々、キャリアの2年縛りはけしからんって話をしていたけど、MVNOも2年縛りをやりたいだろうと思うし、今、一生懸命端末をセットで売って分割で払わせているのは、ユーザーを長期で囲むことが経営の安定につながるから。

法林氏:UQ mobileだって、一番安く使おうと思ったら3年契約だもんな。

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石川氏:ユーザーを囲い込むことが経営的にいかに大切なのかということは、MVNOも身に染みてわかってきただろうという気がします。

石野氏:それはそうですよ。せっかく「安いですから」って一生懸命宣伝してお客さんを取ってきたのに、「Galaxy Note8がこの値段?」ってドコモにMNPされちゃう。

法林氏:MVNOを使ってるユーザーの視点としては、ここは不安かなと思ったら違約金を払うのはアレだけど、MNPすればいい。

石野氏:そうですね。MVNOは縛りも緩いですから。

房野氏:万が一、仮にMVNOがなくなったとして、どういう救済があり得るでしょうか。

石野氏:今回の買収が1つと、あとは民事再生法でコツコツ続けていくようなのが1つ。あとはどうなんだろう、MVNEが引き取って、第三者の所へくっつけるとか。例えばIIJがMVNEでやっていたら、IIJが「うちが引き取りますよ」というか、「知らないよ」となって、ある日突然、APNが使えなくなる、という感じですかね。

房野氏:今はまだそんなにMVNOで不安になる必要はないけど、長い目で見たときは、ちょっと考えたほうがいいでしょうか。

法林氏:MNPで逃げられないということはないと思いますけどね。例えば、「この電話は来月から使えなくなる。じゃあ、ドコモにMNPしよう」とか「IIJにMNPしよう」というのは、たぶんできると思うけど、絶対できるという保証はない。旅行会社の例があるし、完全に焦げ付いてトンズラしちゃいました、みたいなケースもあるわけでしょ。

石野氏:ちなみに、なぜ日本通信は相変わらずMVNOをやってるんだろうな。譲渡の話は一体どこに行ってしまったんだろう。いまいちよくわからないんですよね。

石川氏:日本通信もうさんくさいよね。あの人たちは何をやりたいんだろう。次世代MVNOをやりだして、なんで基地局なんだと。

石野氏:アンライセンスバンドを使ったLTEをやりたいのかな。さて、じゃあ、そろそろ開催される決算会見、いつでしたっけ、みたいな感じですけど。

石川氏:厳しい目で見ないといけないという気がすごいするんだよな。

石野氏:日本通信は上場してますからね。

房野氏:これからみなさんが書いた記事を読むときも、ちょっと辛口気味で見たほうがいいということですね。料金安い、格安スマホって鵜呑みにしてはいけないと。

石川氏:いや、格安スマホ自体はいいと思うんですよ。そういう選択肢もある。ただ、やっぱりある程度、勉強してからデビューしないと、いざ困ったときに自分で解決しなきゃいけないこともあるだろうし。

石野氏:会社がなくなっちゃったりとか。

石川氏:よくわからないけれど、安いからというだけで飛び付くと、後で、会社がなくなるうんぬんの前に困ることもあるだろうし。やっぱり安くなるには安くなるだけの理由はあるので、それをわかった上で契約することです。

石野氏:FREETELは299円からでしたね。

石川氏:299円で売っていて、なんであんなCMを流せるんだってところも冷静に考えないといけない。

法林氏:でも、言っている割に、MVNO側がMNPを受ける皿があまりないんだよな。Y!mobileがちょこっとやったけど。ドコモのGalaxy Note8が安い件はあるけれど、ドコモはこの数年間、ずっとMNPでユーザーを取られ続けたので、取り返したいという腹はあるんだろうけどね。

石野氏:最近、BIGLOBEがキャッシュバックをいっぱい付けて売ってますね。

法林氏:やっぱり? 血ですかね。キャッシュバックの血が騒ぐんですかね。

石野氏: KDDIのKはキャッシュバックのKです(笑)

石川氏:キャッシュバック(cash back)はCだよ。

石野氏:そのツッコミ、待ってました(笑)

房野氏:お後がよろしいようで。

......続く!

次回は新型『iPhone』の通信簿を予定しています。お楽しみに。

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法林岳之(ほうりん・ たかゆき)

Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

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石川 温(いしかわ・つつむ)

日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

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石野純也(いしの・じゅんや)

慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

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房野麻子(ふさの・あさこ)

出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

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