TVアニメを凌駕する迫力アクション、艦娘たちも可愛い! 若干の喰い足りなさが惜しい『艦これ』レビュー!!

【劇場アニメレビュー】TVアニメを凌駕する迫力アクション、艦娘たちも可愛い! 若干の喰い足りなさが惜しい『艦これ』レビュー!!

  • おたぽる
  • 更新日:2016/11/30
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第二次世界大戦下に活躍した日本海軍艦艇を擬人化した“艦娘(かんむす)”を育成・強化していく育成シミュレーションゲーム『艦隊これくしょん―艦これ―』(DMM.com)を原作とする、同名TVアニメーションシリーズのその後を描いた劇場用アニメーション映画。

TVシリーズでは人類を脅かす謎の敵“深海棲艦”と艦娘たちの戦いが描かれていたが、このときは多くの謎が残され、また設定そのものもどこか曖昧で、全体の構成もシビアな路線とコミカルな萌え描写とのバランスが今ひとつだったため、原作ゲームファンの賛否を呼んだことも記憶に新しい。

何せゲームに登場するキャラも多いため、そのすべてをTVアニメでフォローできるはずもなく、そのことでまた批判が殺到するのをはたで見ていて、ちょっと製作サイドが可哀想に思えたりもしたものだ。

私自身の感想を述べると、まあそこそこ普通に楽しんだというのが本音ではあったが、いざ艦娘たちが戦闘モードに入ったとき、どうしても彼女たちが艦(ふね)に見えず、単に美少女たちが武装して水上を走っているようにしか見えないというのが唯一最大の不満ではあった。

しかし今回の劇場版、いきなり海戦シーンから始まるのだが、そこで戦闘態勢に入る艦娘たちは、まさしく艦に見えた。その理由は、映し出されるのが銀幕の大画面だからということだけでなく、TV版での反省や教訓を踏まえたスタッフの腹のくくり具合が、うまく画に描出されているからだと思う。正直、この冒頭の戦闘シーンだけで、入場料金の元は取れたと思った。またTV版に登場しなかった艦娘たちがここで一斉に登場するのも、少しでもそれぞれの艦娘ファンの期待に応えてあげたいというスタッフの計らいではあるのだろう。

また今回のストーリー的なお楽しみとして、艦娘と深海棲艦との相関関係が明かされ、そのツールとして、TVシリーズで殉死した如月がドラマの中で大きな役割を果たすことになるのだが、映画ばかり見続けてスレてしまって久しい身としては、今さら多少のサプライズで仰天することもなく、むしろ想像の範疇。やがては主人公・吹雪に関する驚愕の真相も描かれていくが、こちらも「ああ、そう来ましたか……」といった程度の感慨でしかない。

とはいえ、そのあたりをくさすつもりも毛頭なく、今回はTV版を優に超える戦闘シーンのダイナミズムと、ダーク・ファンタジーとしての設定が、比較的巧みに融合し得ているように思う。特に戦闘シーンは、急に赤く染まったソロモンの海域によって艦娘たちが徐々に腐食していくというリスクを背負っての戦いでもあり、その悲痛さが実によく描かれている。個人的には大和がボロボロになりながらも決死の活躍を示してくれるのがうれしい。音楽・音響も効果的で、正直爆音上映で見なかったことを後悔してしまったほどである(何せ立川シネマシティまで片道1時間半ほどかかるもので、今回はつい近場のシネコンへ……)。

一方で本作は、艦娘たちの美少女ぶりをとことん追求したかのような秀逸な作画で攻めまくる。今回はコミカルな描写はほとんどなく、シリアスでダークなモードが主体となっているが、それゆえに引き締まった艦娘たちの表情が一段と映え渡る。

赤い海域と吹雪をめぐる謎解きとなるクライマックスも、定番的な観念の描出ではあるものの、そこそこ納得しながら見ていられる。演じる上坂すみれはもともと若手の中でも実力派ではあるが、今回は完全に吹雪(ほか蒼龍、飛龍役も)の光と影を掴み得ているように思えた。

……と、そこそこ満足しながら本作を鑑賞していたのだが、見終えてしばらく経つと、やはりどうにも何か物足りない。そんな気持ちを払拭できないのだ。

まず本作の上映時間は1時間半ほどだが、やはり駆け足過ぎてゆとりがないことと、それゆえに艦娘それぞれの魅せ方も二の次となり、総体的に筋を追うので精一杯といった作りになってしまっている。

もちろん「上手くスピーディにまとめた」という褒め方もあるだろうが、せっかくの角川映画40周年記念作品なのだから、『ガールズ&パンツァー劇場版』のように2時間越えとまではいかなくても、もう少し尺を伸ばしても良かったのではないか?

そう、本作は角川映画40周年記念アニメーション映画なのだが、それこそ76年の角川映画第1作『犬神家の一族』からリアルタイムで角川台風の直撃を喰らい続け、また『幻魔大戦』(83)や『少年ケニヤ』(84)『カムイの剣』(85)『時空の旅人』(86)など、とてつもないまさかまさかの企画を見事に具現化し続けてきた角川アニメの猛威を肌で知る身としては、やはりどこか寂しい。

それは深夜アニメの劇場版だからとか、美少女アニメだからといった、とかくアニメを見下したがるマスコミのお偉方の目線ではなく、いや、むしろゲーム原作の美少女萌え深夜アニメの劇場版を堂々と『君の名は。』や『聲の形』『この世界の片隅に』などにぶつけて勝利してやる! といった気概があってこその角川映画であり、本作もそういった心意気によって幾重にも風格を備えた大作たり得ることも可能だったと思うに、やはりどこか悔しいのだ。

(これが往年の角川春樹体制だったら、「もはやゲームでもテレビでも映画でもない!」とか「今、世界の運命は美しき艦娘たちに委ねられた!」といった、ハッタリをかましたキャッチコピーでガンガン攻めの宣伝展開していたことだろう。それが今の時代に効果的かどうかはさておいて)

実際、11月26~27日の国内映画ランキング(全国週末興行成績・興行通信社提供)によると、本作は第5位。全国60スクリーンで、初日から2日間で動員7万人、興収1億人強。最終的に興収5億円以上が見込めそうとのことだが、都内の映画館にて公開2日目の夜の回に入ると、場内は30人前後といったところで、どこか寂寥としており(たまたま、その映画館の入りが少なかっただけなのですかね?

ただ、この春のリメイク版『セーラー服と機関銃』も初日に見に行ったら、お客は私を含めて5人だったので、それに比べたらかなり良いほうか?)、もちろん客層はほとんど男。予想通りとはいえ、やはりせっかくの40周年、「女も萌えます美少女艦娘!」くらいの勢いもあっていい(って、これはちと恥ずいな?)。

などなどと嫌みばかり書いているようだが、せっかく『劇場版艦これ』がそれなりに気持ちの良いプログラムピクチュアの佳作に仕上がっているのに、何だかもったいない気がしてならないし、もしも作る側や売る側が「アニメ映画なんて、マニアだけ見てくれれば、そこそこ稼げて良いんじゃね?」とでもいった考えをいつまでも持ち続けているのだとしたら、それこそ時代からずれていると言ってもいいだろう。

それは今年のアニメ映画群の大躍進を見ても明らかなのである。角川映画は、角川アニメは、いったいいつトレードマークの“火の鳥”のように甦るのか?
(文・増當竜也)

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