「障害者が頑張っています!」という表現をしたくない――身体障害者による劇団「態変」主宰に聞く

「障害者が頑張っています!」という表現をしたくない――身体障害者による劇団「態変」主宰に聞く

  • サイゾーウーマン
  • 更新日:2019/08/26
No image

『24時間テレビ 愛は世界を救う』(日本テレビ系)の放送が、8月25日に終了した。毎年恒例、夏の風物詩といえる同番組では、チャリティーマラソンや特別ドラマをはじめ、障害者や難病患者などのチャレンジ企画が放送されている。42回目となる今回は、嵐がメインパーソナリティを務め、メンバーは半身まひの少女や、義手の少年、義足の少女などのチャレンジ企画をサポートした。

しかし、ネット上では障害者への演出に対し「障害者を商売道具にしているだけ」「その日だけ障害者にスポットを当ててお涙頂戴するな」「結局は健常者のためのテレビ番組。障害者を感動ポルノの材料にしてるだけ」といった指摘が続出。近年、そうした批判は強まる一方だ。

サイゾーウーマンでは、2016年に障害者による劇団態変の主宰・金滿里さんに、障害者をめぐる社会の動きについて聞いている。再掲するこの機会に、ぜひ読んでいただきたい。

************

2020年のパラリンピックを前に、障害者への関心が高まっている。「欠損女子」によるバーイベントが話題になり、乙武洋匡さんが、健常者と障害者の垣根をなくすため、パラリンピックを五輪と統合することを提唱して議論を呼んでいる。関西で30年以上活動を続け、12年ぶりに東京で公演を行う、障害者による劇団態変の主宰・金滿里さんに、活動の趣旨や障害者に対する社会の動きについて話を聞いた。

自然に一番近い自分の身体で表現をしようと思った

――金さんは劇団を立ち上げる前、身体障害者のための団体で活動をされていたそうですが、そのような活動と演劇は違うように思えます。もともと、演劇が好きだったのでしょうか?

金滿里さん(以下、金) 私は、母親が韓国の古典芸能の大家という家に生まれた、在日コリアン二世です。母は韓国古典舞踊や琴・パンソリという唄のできる人で、私も物心ついた頃から見よう見まねで踊りなどをする才能があったらしく、母は自分の跡継ぎにしようとしていたらしです。しかし、そんな私が3歳でポリオに罹って障害者になってしまいました。

韓国人はよく自分の身の上話を人に聞かせるのですが、母はこのことを人生の嘆きのネタとして友達に話しましてね。それを聞いていて、自分は障害者になったことで、芸能とは関係なくなってしまったんだな、としか思いませんでした。

その後、成人する頃になって、障害者差別をなくす運動と出会って参加しました。それまでの暗かった人生が変わる大きな転機だったのですが、その運動も方針の違いで脱会し、放心状態になってしまった。でも、気休めで何かをするのではなく、やりたいことがなければ、あえて何かをやるのはやめよう、深く静かに沈殿して、二度と浮上しなくてもいいのではないかと思っていました。それが、沖縄に旅行に行ったことで変わりました。

健常者の友人と沖縄に3カ月間、放浪の旅に行ったのですが、その際、健常者でないと行けない山奥の滝への観光があったんです。彼女たちに「私はここで待っているから行っておいで」と言ったら、本当に行ってしまって、私は一人放置されたんです(笑)。大自然の中に一人取り残され、自分も大宇宙の中のサイクルの中で生かされているのだなと実感したとき、自然に一番近い自分の身体で表現をしようと思ったんです。

それまでやっていた障害者のための運動は言葉の世界ですから、相手を論破したり、理路整然と説得したりしなければなりません。それは、障害を持っている自分自身が表しているのではなく、言葉自体、脈絡、文法や文体であるので、そこにモヤモヤを感じていました。せっかく障害があるのだから、それを使おう、論より証拠だと。人の考えを一瞬にして変えることができるのが演劇の表現なのではないかと思い、29歳で劇団「態変」を立ち上げました。

――劇団員の方たちは、演劇初心者の方ですか?

金 はい。既存の表現の形をとらないほうが、よりエッセンスが中から湧き上がってきて、表現せねばならないものを素直に感じられるところがあるので。専門教育を受けると、逆に何か曲げられてしまうところがありますよね。

――設立当時、身体障害者による劇団はおそらく世界初だったそうですが、態変の舞台を見た観客からはどんな反響が寄せられていましたか?

金 最初の頃は、「危ない! こんなもの見てられない!」と怒って帰った白人のお客さんもいましたね。脳性麻痺で身体が震えている演者が一升瓶を持って「俺の酒が飲めんのか!」と客に飲ませ、また自らも酒を飲むような「挑発芝居」と言われるものをやっていたんです。酔っ払いと同じように震えているけど、脳性麻痺で震えている、酒でも飲まんとやってられへんという逆説的表現ですね。

でも、怒って帰られるのなんて、私たちにとっては上等ですよ。「障害者が頑張っています!」といった表現をしたいのではなく、いかに健常者が考えつかない障害者の世界があるかを表現したいんです。障害者の多くは、健常者になりたいと幻想を抱いています。でも、自分の足元に根を下ろすと、全然違う見方や考え方がありますよね。それを芸術として出しています。

――態変の作品にはセリフは一切なく、身体の動きで表現されていますが、劇団としてはどのような表現を心がけているのでしょうか?

金 うまくなろうとしないこと、健常者のマネをしないことです。良い格好というのはマネから生まれるでしょ? でも、障害者の場合、健常者を見ているうちに自分も健常者だと錯覚してしまうんです。「障害者らしくせぇ」とは言わないのですが、何かやるときの形が健常者の模倣だったらすごくみっともないと、昔から思っていました。

障害の程度でも、寝たきりと座ったまま、立ち姿勢のとれる、3つの姿勢があるんですね。この中で、寝たきりが一番“表現的”なんですよ。立っているものは制約を加えないと、寝たきりの演技の良さを壊してしまうので、誰がどこを通ってどっちへ行くなどの交通整理をやる必要があります。態変の演技は、“風景”として見ると楽しめると思います。何を言おうとしているのかを考えて見ると、頭がカチカチに固まってしまうので。

パラリンピックが利用されている

――先日、障害のある若い女性の「欠損女子」たちがバーテンダーをするイベントが話題となりました。「欠損」という点にフェティシズムを感じる人がいることや、欠損女子を性的な目で見ている人もいるということを含め、賛否両論を呼びましたが、金さんはどう思われますか?

金 私、1996年から3年間ほど、エジンバラで公演があってイギリスに通っていたんですよ。イギリスでは、身体障害者や、そういう嗜好の人が出会うためのクラブがありました。そういう嗜好の人のための出会いの場が、日本でも出てくるんだろうなとは思っていましたが……。人間の嗜好はいろいろあるので、とやかく言えませんが、本当に出会うというのは容姿ではなく魂同士のふれあい、つまりコミュニケーションなのではないかと思います。容姿ではなく、見えないものを見たいと思っているほうなので、私はあまり関わりたくはないですね。

欠損女子のイベントに参加しているのは、障害者のほんの一部でしょうね。ほんの一部の人が良いと思っているのと、みんなが良い、と思うのとでは違うでしょ? 例えば、健常者でもホステス業をやりたいと思ってやっている人がどれだけいるか、と同じです。苦労して稼がなダメで、お金のためにやっている人もいるでしょうし、単に労働時間が短いし、オシャレもできるしいいやんと思ってやってるだけの人もいるだろうし、それと同じです。

障害をウリにできたらラッキーと思っている人もいるだろうけど、消費なので、そのうちに喪失感を感じ、本当の愛を求めたくなるのではないかなと。もともと愛されたいのでしょう。そんなところで障害を消費しなくても、愛されると思います。

――20年に東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。先日、乙武洋匡さんの「義足が進化して、このままでは健常者に勝ってしまうので、パラリンピックをなくしたい」という発言が話題になりましたが、金さんはパラリンピックに関してどう考えていますか?

金 私は東京オリンピックもパラリンピックも反対です。一番大事な福島の原発の問題が解決していない、今の日本の状況では、やるべきでないと思っています。問題から逃げないという底力を見せてほしいのに、「違う方向やんそれ、それで満足なんか? と思います。パラリンピックが、めっちゃ利用されているんですね。「パラリンピックがあるから、あんたら黙っとけ」という圧力に使われている。障害者が認められるという幻想を持ってしまう。乙武君のように、「義足を使えば健常者に勝つやん」という、勝ち負けの問題ではないんですね。

――次回公演『ルンタ(風の馬)〜いい風よ吹け』は、どのような内容なのでしょうか?

金 チベット仏教、チベット密教とも言うんですけど、非常に洗練されたディープな仏教の世界がテーマです。宗教でなくてもいいんですよね。人間が別の価値観で生活や人間のつながり方を変えていく必要が日本の社会にはあるんちゃうかな、具体的にそれを考えていくきっかけになればいい、物質文明ではないものといった感じですね。
(姫野ケイ)

劇団態変
主宰・金滿里により1983年に大阪を拠点に創設され、身体障害者にしか演じられない身体表現を追究するパフォーマンスグループ。「身体障害者の障害じたいを表現力に転じ未踏の美を創り出すことができる」という金の着想に基づき、一貫し作・演出・芸術監督を金が担い、自身もパフォーマーとして出演する。海外公演も多数行っている。

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

コラム総合カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
「えっ!今、頭が出た!?」第二子出産で経験した予想外の展開
妙に納得!有吉弘行の共感できる10の名言
死の直前に起きる「お迎え現象」「手鏡現象」は妄想か、本物なのか
「毎日仕事に行くフリして、本当は何してた...?」男が部屋に持ち帰った物から、嘘に気づいた女
なぜALSになると謙虚な人が“横柄”な人になるのでしょう?
  • このエントリーをはてなブックマークに追加