トヨタとソニーだけが上期決算で“ひとり勝ち”できた理由

トヨタとソニーだけが上期決算で“ひとり勝ち”できた理由

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/11/19
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輸出依存度の高い製造業種の下方修正が続出した2020年3月期上期(4月~9月)決算で目立ったのが、トヨタとソニーのひとり勝ちだ。

新興市場に株式を公開している企業を除いて、11月13日までに決算を発表した3月期決算の上場企業約1700社を対象に、日刊紙(日本経済新聞)が集計したところ、2020年3月期通期の業績見通しを修正した企業は3分の1にあたる574社。このうち7割が通期の純利益の予想を引き下げたという。その減額は合計で実に2.1兆円を超え、上期としては7年ぶりという不振を記録した。

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背景として、燃えさかる米中貿易戦争や、激化の兆しを見せる米欧貿易戦争が影を落としており、昨年1月以来、ずっと「景気は緩やかに回復を続けている」というフレーズを使ってきた内閣府の月例経済報告の妥当性に疑問を投げかけている。

ところが、この土砂降りの中でも、傑出した利益を稼ぎ出し、ひとり勝ちを謳歌している企業がある。自動車メーカー7社の中ではトヨタ自動車が、電機大手8社ではソニーがその会社である。そこで、今日は、この2社の強さの秘密を考えたい。

輸出企業を直撃した様々なトラブル

本論に入る前に、上場企業全体の状況に触れておくと、上期の最終利益の下方修正額の合計は2兆1356億円と、2013年3月期上期の2兆9952億円の減額に次ぐ大きな水準を記録した。

この2013年3月期は、2011年3月の東日本大震災の衝撃も薄れて、景気が回復軌道に戻ると期待されたが、外需、つまり輸出の予想外の不振に企業業績全体が水を注された年だった。特に大きかったのは、新興国の景気減速と、1ドル=70円台まで進んだ急激な円高によって、輸出企業を中心に業績の足を引っ張っられたことである。

加えて、尖閣諸島の国有化問題をきっかけに、中国で日本製品の不買運動が広がり、中国における自動車販売が激減した。いわば、不測の事態・事件が大きく影響したと言って良いだろう。

これに対して、今回は米中貿易問題が予想以上に深刻化して長引いていること、それに伴い、中国を中心に世界経済がじわじわ減速したことが、輸出依存度の高い日本企業の業績を直撃した。

下期の見通しも決して明るくない。政府が万全の対策をしたと主張しているとはいえ、消費増税前の駆け込み需要が10月以降はなくなり、個人消費が伸び悩んで景気の減速に拍車がかかる懸念が大きいからだ。また、ブレグジット(英国のEU離脱)問題や、米欧貿易戦争の激化懸念は製造業を中心に設備投資抑制を招く要因だ。

さらに、アルゼンチンやトルコといった新興国の通貨安と、資源・素材の価格下落、日韓問題なども、企業業績の下方修正を招く大きな要因となっている。

自動車業界でトヨタだけが「修正なし」

ここで、そうした外需の落ち込みの直撃を受けている例として、2020年3月期の自動車大手7社の最終損益の予想を、修正前と比べた増減率とあわせて紹介しておこう。

減少率が大きかったところから順に、三菱自動車が92%減の50億円、マツダが46%減の430億円、日産自動車が35%減の1100億円、スズキが30%減の1400億円、スバルが22%減の1630億円、そしてホンダが11%減の5750億円という予想に下方修正されている。

一方、トヨタは2兆1500億円のまま修正をしなかった。「修正なし」と言っても、この2兆1500億円という最終利益の数字は前年との比較で14%増と、目下の環境を考えると驚異的な数字である。

そもそもトヨタは上期の最終利益が前年同期比で3%増の1兆2749億円と、この期間の過去最高も更新している。このままなら、トヨタの癖だが、低めの見通しを公表しておいて、期末には上方修正することも十分考えられる状況なのだ。

この厳しい経営環境の中で、自動車各社が黒字を維持する見込みであること自体は立派なことと言えるが、そうは言っても、各社は軒並み大幅な減益だ。そうした中で圧倒的な増益を維持していることを見ても、自動車業界でのトヨタの強さは抜きん出ており、ひとり勝ちを謳歌している格好となっている。

トヨタ「ひとり勝ち」の理由

では、なぜ、トヨタはそれほど好調なのか。ひとり勝ちの原因を分析してみよう。答えは簡単だ。逆風下でも、トヨタのクルマは売れているのである。上期の世界販売は3%増の545万台と過去最高を更新した。中でもよく売れたのは、日本やヨーロッパ、中国だ。

世界イチを争うライバルを見ると、2019年1~9月期決算で前年同期比17%増の106億6400万ユーロの純利益を確保したフォルクスワーゲンでさえ、4月から9月期に限定すると販売台数は1%減にとどまった。米ゼネラル・モーターズに至っては、同じく6%減とまったく振るわなかったのだ。

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それでは、いったい何がトヨタの販売好調を支えているのだろうか。筆者は、相次ぐニューモデルの投入が大きいと睨んでいる。上期には、主力のSUV(多目的スポーツ車)の「RAV4」やセダンの「カローラ」をフルモデルチェンジして投入、需要の掘り起こしに成功した。

加えて、約10%という世界シェアを勘案すると、6%程度と見劣りしていた中国市場に攻勢をかけて成果をあげたことも大きかった。中国市場は4~9月期に市場全体がマイナス成長に陥ったが、トヨタはその逆境の中で販売を1割増やしたのである。

苦戦していたうえ、同じく市場環境が悪かった北米市場でも、採算が大きく改善した模様だ。新モデルの投入や、現地で人気のピックアップトラックの供給を増やすことで、ディラーの値引き原資になるインセンティブ(販売奨励金)の付与の削減に成功したことが効果的だったとみられている。

トヨタは、市場ごとにきめ細かくニーズに合うクルマを投入することで、逆境でも好調を維持したと断じてよいだろう。

今後も、トヨタは2021年までに20近いニューモデルを投入して、「世界販売の6割を新型車へと切り替える」方針だ。各地のモーターショーで話題をさらった新型主力小型車「ヤリス」の投入も控えており、しばらくはトヨタが勢いを維持する可能性が高そうだ。

立て直しが待たれる日産

これに対し、不振が際立っていたのが、日産だ。2020年3月期の最終利益をこれまでの予想より600億円少ない1100億円に下方修正した。これは前期比で実に66%の大幅減益に該当する。トヨタはもちろん、ホンダと比べても、日産の不振は際立っているのが実情なのだ。

原因は、カルロス・ゴーン元会長の逮捕や前社長兼CEO(最高経営責任者)の西川広人氏の事実上の解任の影響に加えて、北米など世界で販売が振るわないこと、円高で海外事業の利益が落ち込んでいることがあげられる。

日産は、今期の世界販売台数の見通しを従来より30万台少ない524万台に引き下げた。結果として、売上高の見通しは8%減の10兆6000億円と7000億円もの下方修正になった。為替レートの想定を1ドルにつき3円円高の107円に改めたことから、営業利益も従来予想の半分以下になるという。まさに、ダブルパンチの様相だ。

極め付きは、北米市場で最後まで販売奨励金を大盤振る舞いして安売り合戦を続けてきたことだ。この戦略縮小の遅れも、日産の経営の重荷になっている。

日産は、12月1日付で社長兼CEOに内田誠専務執行役員が就任し、ようやく新体制がスタートする。立て直しは、新体制の待ったなしの課題となっている。

不具合続出、残念なホンダ

一方、ホンダは、従来予想を700億円引き下げて、2020年3月期の最終利益が前期比6%減の5750億円になると発表した。減益は2期連続のことだ。新聞報道によると、円高・ドル安に加え、先進技術「CASE」の開発競争が収益確保の大きな足かせになっているという見方が一般的になっている。

だが、筆者は、他にも大きな要因があったと考えている。というのは、ホンダは今期の四輪車の販売台数見込みを497万5千台と下方修正して、4年ぶりに500万台の大台を割るとしたからだ。

国内市場で8月発売の軽自動車「N-WGN(エヌワゴン)」に電動パーキングブレーキに関わる不具合が発生したことが影を落としている。ホンダの販売の現場に聞くと、5月に注文したのに、まだ納車されないと怒っているユーザーがいるという。同じ部品を採用する新型「フィット」の発売も、3ヵ月延期して2020年2月にせざるを得なかった。

ホンダは、折角、ニーズに合うクルマを投入しながら、こうした不具合の問題で業績の好調を維持し損ねている模様なのだ。残念な話と言わざるを得ない。

ソニーが圧倒的な競争力を持つ理由

最後に、電機にも簡単に触れておこう。電機大手8社の2019年4~9月期連結決算は、日立製作所やパナソニックなど5社の営業利益が前年同期に比べ大きく減少した。原因は、やはり、米中貿易戦争や中国経済の低迷、円高である。産業機器やテレビの販売が振るわなかったのだ。

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これに対して、ソニーは3年連続で最高益を更新し、一人勝ちを際立たせた。その強さの秘密は、スマートフォンのカメラ向けのセンサーの圧倒的な競争力だ。

iPhoneにカメラが3台付くと、ソニーのセンサー売上高が3倍になるようなもので、ソニーはこの売れ筋商品を武器に、1社で電機大手8社合計の4割の利益を稼ぎ出し、ひとり勝ちを謳歌した格好になっている。

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