香川真司はトップ下「3番手以下」 厳しい評価と創造性乏しきドルトムントの現実

香川真司はトップ下「3番手以下」 厳しい評価と創造性乏しきドルトムントの現実

  • Football ZONE web
  • 更新日:2018/09/16
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苦境に立たされているドルトムントMF香川【写真:Getty Images】

【欧州蹴球探訪|第7回】ファブレ新体制が目指すサッカーとベンチ外が続く香川

ドルトムントに降り立つと、日本人である私はかなりの確率で「シンジ・カガワ?」と声をかけられる。外見は似ても似つかないのだが、こちらが日本人だと分かると、相手は大抵同じセリフを口にする。ドルトムントは小さな街だから人々が集まるエリアが狭いこともあるが、アウェーの地でドルトムントが試合をする時でも現地の人々が同じ言葉を発するのだから驚いてしまう。それほどにドイツ国内において香川真司のネームバリューは高い。そして今、そんな香川が苦境に立たされている。

DFBポカール1回戦グロイター・フュルト戦(2-1)、ブンデスリーガ第1節RBライプツィヒ戦(4-1)、第2節ハノーファー戦(0-0)を終えて、香川のベンチ入りは1試合もなかった。今夏の移籍マーケットでは香川の去就に関して各種動向が伝えられたが、結局8月31日の移籍期限最終日を迎えても彼が他クラブへ移ることはなかった。少なくとも今冬に再び移籍マーケットが開くまでは、香川はドルトムントでのチーム内競争に打ち勝たねばならない。

しかし、今季から指揮を執るルシアン・ファブレ監督は含みをもたせたコメントで、今でも彼のチーム内での立場を明確にしていない。ドルトムントはリーガ、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)、DFBポカールの3タイトル獲得を目指していて、戦力をできるだけ保持したい考えがあるのは確かだ。しかし、現地時間14日に行われた第3節フランクフルト戦で実践したドルトムントの戦術、戦略を観る限り、香川の出場機会は今まで以上に遠のいているように感じる――。

ファブレ監督はこれまで、システムを4-1-2-3に定めてきた。正守護神はロマン・ビュルキ。4バックのセンターはアブドゥ・ディアロとマヌエル・アカンジが不動で、右にウカシュ・ピスチェク、左にマルセル・シュメルツァーが入る。そして中盤は今季新加入のベルギー代表MFアクセル・ヴィツェルがアンカーを務め、その前のインサイドハーフにフィジカル能力の高いマフムード・ダフードとトーマス・デラネイを起用して逆三角形のユニットを形成。そして3トップの頂点にマクシミリアン・フィリップ、右にマリウス・ヴォルフ、そして左にはチームの大黒柱であるマルコ・ロイスを登用してきた。

フランクフルト戦で4-2-3-1採用も香川はメンバー外に

しかし、DFBポカールのグロイター・フュルト戦では、2部チーム相手に苦戦して延長戦の末に辛くも勝利し、リーグ開幕戦のRBライプツィヒ戦では戦闘的な相手の逆手を取って4ゴールを奪取したものの、続くハノーファー戦ではアウェーでスコアレスドローに終わった。

ここでリーガはいったん小休止して国際Aマッチウィークへと突入したが、この時点でファブレ監督はなんらかのテコ入れを行おうと考えたようだ。各代表に招集されずチームに残った選手にとってはチャンス到来で、ドルトムントで言えば急きょ加入したスペイン人FWパコ・アルカセル、攻撃的MFの旗頭であるマリオ・ゲッツェ、怪我で出遅れたセントラルMFのユリアン・ヴァイグル、デンマーク人の新鋭FWヤコブ・ブルーン・ラーセン、そして香川などがトレーニングマッチで次々に試された。

香川は9月6日のトレーニングマッチ、3部のオスナブリュック戦で右インサイドハーフのポジションを任されて先発し、2アシストをマークして6-0の大勝に貢献した。しかし中断明けのフランクフルト戦で先発を飾ったのは、オスナブリュック戦で香川がゴールをアシストしたラーセンで、香川はまたもベンチ外を強いられた。しかもファブレ監督は、この試合で4-2-3-1へシステム変更し、現体制で初めてトップ下のポジションを置いたなかで、そこにはロイスを据えたのだった。

この時点ではっきりしているのは、たとえファブレ監督がシステムを変更してトップ下を存在させても、このポジションのファーストプライオリティーはロイスであり、セカンドチョイスはベンチ入りしたゲッツェであろうということ。フランクフルト戦でもベンチ外となった香川は、本来最も輝けるはずのポジションで3番手以下の評価に甘んじている。

4-4-2への布陣変更で威力を発揮したサイドアタック

フランクフルト戦でシステム変更したドルトムントのチームパフォーマンスは、依然低調なものだった。4バックはそれなりの強度だったとしても、ダブルボランチに入ったデラネイとダフードは局面打開力に乏しく、ボールを前へ進められなかった。ロイスは前線中央で浮き、1トップのフィリップからは快音が聞かれない。そして今試合でチャンスを与えられたラーセンは左ウイングで先発したが好機を築けず、後半13分に交代している。

それでもCKからDFのディアロが先制点を押し込み、フランクフルトFWクリスティアン・ハーラーに同点ゴールを決められた後に、ラーセンに代わって出場したジェイドン・サンチョがチャンスを生み出して、後半27分にヴォルフが強烈なキャノンシュートを突き刺して勝ち越してからはチーム状態が安定した。

ファブレ監督はサンチョを投入し、後半22分にフィリップに代えてアルカセルをピッチへ送り出してから、システムを4-4-2へ変更している。ここで効力を発揮したのは中央エリアでの局面打開ではなく、サイドバックとサイドMFの前への推進力を駆使したサイドアタックだった。

前述したヴォルフのゴールは、サンチョが右サイドから独力での打開を仕掛けてファーサイドへクロスを送った形。そして後半43分に生まれたアルカセルのドルトムント初ゴールは、CKの流れからの右サイドの崩しで、サンチョ、ヴォルフ、ピスチェク、シュメルツァーらが積極的にアタックを仕掛けたことでドルトムントの攻撃が一気に活性化した。

盟主バイエルンを追随するチームには見えない

ファブレ監督はボルシア・メンヘングラードバッハを率いていた時代に、4-4-2を主戦システムとしていた。そして今回のフランクフルト戦で試した布陣によって、4-1-2-3、4-2-3-1、そして4-4-2のオプションをも携えたと言える。

ただ、それでも今季のドルトムントは危うい戦いを続けていて、その行く末には霧がかかっている。もとより、ドルトムント以上にチーム状況が芳しくないフランクフルトを相手にしてオープンな戦いを繰り広げたドルトムントは、とてもブンデスリーガ6連覇中の盟主バイエルン・ミュンヘンを追随するチームには見えない。

今のドルトムントには中盤でゲームを構築し、フィニッシュ能力を備えるアタッカーに決定的なパスを供給するプレーメーカーがいない。フランクフルト戦ではアルカセルがゴールを決めたが、もし彼がフィリップと同様に試合開始から最前線に配備されれば苦労は絶えないだろう。

アルカセルはかつてチームに在籍したピエール=エメリク・オーバメヤン(現アーセナル)やミシー・バチュアイ(現バレンシア)のように局面を切り裂いてカウンターゴールを突き刺すタイプではなく、ペナルティーエリア内でのボックスワークからフィニッシュへ持ち込むストライカーだ。すなわち彼もまた、中盤でタクトを振るうコンダクターの下支えがあってこそ能力を発揮できるタイプと思われる。

ファブレ監督の思惑は不明なままだ。ただ、フランクフルト戦で敵としてベンチ入りするも不出場に終わった長谷部誠は、ドルトムントの現況と照らし合わせて、香川の境遇をこのように評価した。

長谷部が示唆したドルトムントに「欠けているもの」

「真司とは、(試合後に)お互いに近況を話しました。ドルトムントでメンバーに入らないのと、フランクフルトで試合に出られないのは次元が違うので。ドルトムントの方が競争は激しいですからね。でも、今日の試合を観れば、ドルトムントのチームに何が欠けているかは、観ている人は感じるだろうし……。彼(香川)も同じように我慢の時かもしれないですけども、お互いに励まし合いました」

ドルトムント対フランクフルトの一戦が終了して宿泊するホテルに戻ると、フロント係に声をかけられた。

「カガワは出場しなかったね……。でも、BVB(ドルトムントの愛称)は勝ったよ!」

プロサッカー選手は試合に出場し、明確な結果を残さなければ評価を得られない。“カガワ”がドイツで築いた実績は輝かしいもので、それがこの地における彼への敬愛の念へと結び付いているが、それが過去の話になれば人々の思いは薄れる。もっとも、今の香川に、そんな境遇を受け入れねばならない謂(いわ)れはないとも思う。

香川にチャンス到来の時は訪れるのか。ドルトムントはフランクフルト戦から4日後の9月18日に、CLグループステージ初戦を迎え、アウェーでクラブ・ブルージュ(ベルギー)と対戦する。

(島崎英純/Hidezumi Shimazaki)

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