がん患者の半数が民間療法を利用しているという現実──実際に体験してみて(前篇)

がん患者の半数が民間療法を利用しているという現実──実際に体験してみて(前篇)

  • 文春オンライン
  • 更新日:2017/11/14

みなさんはがんの「民間療法(補完代替医療)」に対して、どのようなイメージをお持ちでしょうか。科学的に効果が証明されておらず、怪しいものと否定的に見ている人も多いのではないかと思います。

がんの三大療法(手術、抗がん剤、放射線)を中心とする「通常医療」に対し、それを補う目的やその代わりに行う療法のことを「補完代替療法」と言います。がんに効くとされる健康食品やサプリメント、ハーブ類などの他に、玄米菜食、自然療法、鍼灸、気功といったものがありますが、確かに、それらの中で効果が科学的に認められたものはありません。

国立がん研究センターのサイトにも「勧められると判定されているものは1つもない」

国立がん研究センターが運営するサイト「がん情報サービス」にも、はっきりとこう書かれています。

「補完代替療法には、治療効果、つまりがんの進行を遅らせる、生存率を高める効果が証明され、治療法として勧められているものは現段階では1つもありません。従って、効果が期待できる治療法として見なされていません。同じく、吐き気やだるさなど、がんに伴う症状を和らげるための代替療法についても、治療法として勧められると判定されているものは、1つもありません」(ちなみにこのサイトは、標準的ながんの知識を得るのに日本で一番信用できるサイトです。もし「がんのことを調べたい」と思ったときには、最初にこのサイトを読んでみることをお勧めします)

したがって、「科学的」に見れば、「民間療法はやらないほうがいい」と断言できるでしょう。民間療法のなかには根拠がないのに「効果がある」と宣伝し、ワラにもすがる思いでいる患者や家族から、高いお金をむしり取ろうとしているとしか思えないものもあります。

がん患者の48~87%に補完代替療法が普及しているというデータも

しかし、がんになると民間療法を利用する人が非常に多いのが現実です。2005年に厚生労働省研究班が行った調査では、約45%の人が補完代替療法を利用していました。また、海外でも48~87%に補完代替療法が普及しているというデータがあります(日本乳癌学会「乳癌診療ガイドライン」2015年版)。

こうした数字を踏まえると、民間療法は「騙されやすい一部の人が手を出すもの」とは、決して言えないことがわかります。健康なときには「なんで、あんなものに頼るのか」と思っていても、命の瀬戸際には誰だって(たとえ医師でも)試してみたくなるものなのです。

ですから、私は民間療法を行っている人たちを、頭から否定するような論調には反対です。むしろ、なぜ人は命がかかる病気になると、民間療法にすがってしまうのか。患者さんたちは、どんな気持ちで民間療法を受けているのか。そして、私たちは民間療法とどう向き合うか、深く考えてみるべきだと思っています。

「週刊文春」の取材で実際に患者さんの声を聞き、自分で体験してみて何を感じたか?

私はこの10月、「週刊文春」(2017年10月26日号)に「徹底検証 著名人がすがった『がん民間療法』」という記事を書きました。その際、民間療法家や患者さんの声を聞くだけでなく、私もさまざまな民間療法を身をもって体験してきました。しかし、記事ではその一部しか紹介できませんでした。

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「週刊文春」2017年10月26日号 ©文藝春秋

そこで、この連載の場を借りて、民間療法の現場で見て、聞いて、体験したことを、あらためてレポートしたいと思います。ただし、ここで紹介する民間療法を私は一切推奨するつもりはありません。患者さんの「効いた」といった話も、あくまで個人として信じていることで、科学的に検証されたわけではありません。その点をご理解いただいたうえで、鵜呑みにせずに読んでいただくようお願いします。

まずは、自然療法を行っている京都の研究所を訪ねました。研究所といっても古い2階建ての民家で、1階では自然療法の材料や道具、本、健康食品などを販売しています。

取材の日は、ヘッドフォンのようなものを装着するだけで様々な臓器や関節などの健康状態がわかるという測定器を体験する会で、参加費用は非会員8000円(会員は6000円)。私の他にも2組の親子連れらしき人が参加しており、測定を受けるためにみんなで2階に上がっていきました。

水素水による温浴と「びわの葉療法」を体験

測定器の結果に加え、気になる症状として老眼、指の痛み、肝臓などを挙げた私に対して、研究所の主宰者は「ごま油の目薬」と4週間の「びわの葉療法」を行い、お酒を控えるよう指示。水素水による手足の温浴を行った後、びわの葉療法を体験することになりました。

仰向けの姿勢で、背中の腎臓にあたる部分とお腹の肝臓および下腹の部分にびわの葉を数枚ずつ置き、そこにホットパックを当てて、20分ほど温めます。その間、私はホットパックの温かさを心地よく感じながら、うつらうつら夢心地でいました。

びわの葉にはアミグダリンという有効成分が含まれていて、それが体に浸透することで、抗がん作用を発揮するとされています。しかし、それよりも、この温かさ、心地よさが、健康にいいのではないかと感じました。(ただし、国立健康・栄養研究所のサイト「『健康食品』の安全性・有効性情報」の「素材情報データベース」では、その効果は否定されており、摂り過ぎると中毒症状を起こすことがあるので注意が必要とされています)。

この研究所で助手として働く50代女性のAさんに話を聞くことができました。左乳房に3~4センチの腫瘍ができ、09年に手術を受けたというAさんは、医師から「転移があるかもしれないから、肝臓と骨を調べたほうがいい」と告げられたそうです。しかし、体に造影剤を入れるのはかえってよくないのではないかと思い、検査を拒否。術後の放射線治療や抗がん剤治療も受けずに、今日まで過ごしているとのこと。Aさんが語ります。

「病気がわかったとき、体験を聞くため知人から2人の乳がん患者を紹介してもらいました。1人は放射線治療を受けたのですが、それが合わなかったのか、治療後に体調を崩しておられました。もう1人は民間の温熱療法を受けて、ずっと元気でおられたのです。がんには三大療法しかないと思っていたのですが、他の方法で治療できるのではないかと思い、7年前、代替療法をしている地元のお医者さんに相談しました。それで、ここを紹介していただいたんです」

それからはびわの葉療法や、生姜汁を含んだタオルで体を包む「全身生姜療法」など、自分でできる「お手当て」を続けているそうです。

「苦しい治療は受けていません。びわの葉は気持ちがよくて好きですし、生姜は匂いがよく、自分に合っています。それに、びわの葉はもらいもので、生姜も粉末パックを使っているので、お金はほとんどかかりません。研究所でお手当ての指導を受けるのに、最初だけ10万円ほどかかりましたが、抗がん剤や放射線を受けても毎月数万円かかりますよね。それに比べたら負担感はありません」

Aさんによると、ここで手当てを受けて、「しこりが消えた」と泣いて帰った人や、腹水でカチカチだったお腹がやわらかくなった人もいたそうです。午後からも、たくさんの人が測定会に参加するためにここを訪れていました。

独自の呼吸法で酸素を大量に取り入れてがん細胞を消滅させる

それから、自然療法と並んで利用者の多い「気功」も体験しに行きました。その中で、東京の早稲田奉仕園の会場で行われている「郭林新気功協会」の教室を訪ねました。

この療法は、西洋医学から見放された子宮がんを、幼いころ祖父から手ほどきをうけた気功で克服したという中国の郭林女史が編み出したとされています。日中の国交が正常化したことで、70年代後半に郭林女史が北京で教えていた気功の評判が日本にも伝わり、86年に協会が設立されました。

現在も、この気功を実践して体得したがん経験者が講師となり、新しく入会した人を教えるかたちで脈々と受け継がれています。費用は入会金5000円、年会費3000円、および受講料が1回当たり3000円。気功師に気を当ててもらう「外気功」と異なり、この気功は自己免疫力を高めるとともに、独特の呼吸法で酸素を大量に体内に取り入れることで、自分でがん細胞を消滅させることを目的としています。

この協会に入って25年、直腸がんが肝臓と肺に転移したものの手術を受けて、気功で乗り超えたという講師の原田一正さん(80歳)が説明します。

「郭林先生は気功を始めるにあたって、『信心』『決心』『恒心』の三心が大切だと説いています。まず、病気に打ち勝てると自分を信じ、気功を信じること。次に、信じたらやると決めること。3つ目がやると決めたら続けることです。1回か2回やったからといって、結果が出るものではありません。気功は一生行うものなのです」

「命がかかっているから、ほぼ毎日3時間やっていました」

私も、この日の講習会に参加していた20人ほどの会員さんたちに混じって、郭林新気功を教えていただきました。この気功は、目を閉じて、体の力を緩めていく姿勢から始まります。丹田(へその下あたり)に気を込めた後、講師の「シーシーフー」のかけ声に合わせて呼吸をしながら、みんなで輪になって歩き続けました。

その後、再び力を緩め、休息も含め一通り教わるのに基本の歩く講習は30分ほどで終了。その後の1時間半は習得別のグループに分かれていろいろな功法を教わります。これを本格的にやれば、病気と闘っている時には日常の生活の中で、休息も含めて3時間はかかるそうです。これらの所作を正しく覚えるのは簡単ではありません。なにより、毎日3時間も続けるのは大変だと感じました。

「でも、命がかかっていますから。最初の3年は必死で、ほぼ毎日3時間やっていましたよ」

そう話すのは、同じく講師で、気功歴20年のMさん(女性・68歳)です。46歳のとき左右の乳がんの手術を受けたMさんは、その6年後に左の脇の下に腫れを感じ、リンパ節転移と診断されました。

最近はがん予防というより、体調を整えるのが目的に

手術を受けた後、医師から抗がん剤治療を受けるよう強く説得されましたが、6年前、治療後に家族で行った旅行先で足が前に出なくなり、高熱が出た経験があったため拒否。その代わり、気功で治すことを決意したそうです。さらに6年後、胸の表皮に再発したが、放射線治療を受けて、その後は何事もなく過ごしています。主治医のお医者さんには、現在も定期検診で通っているとのこと。

「今も近隣の公園で、気功を続けています。最近はがん予防というより、体調を整えるのが目的になっています。忙しいときも、朝、気功をすることで、いい状態の心身に戻せるんです。精神的にも元気なのは、気功のおかげが大きいと感じています」(Mさん)

自然療法の気功も、本当にこのおかげで治ったとは断言できません。ですが、どちらも体験をしてみて、身体だけでなく精神にも癒しを与えているのは確かだと感じました。患者さんたちは、どんな気持ちで民間療法を行っているのか。そして、民間療法とどう向き合うべきなのか。次回も体験を踏まえて、民間療法について書いてみたいと思います。

(鳥集 徹)

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