新抗がん剤「オプジーボ」が胃がんでも国内承認 がんの縮小効果を確認

新抗がん剤「オプジーボ」が胃がんでも国内承認 がんの縮小効果を確認

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  • 更新日:2017/09/15
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免疫チェックポイント阻害剤のしくみ

進行胃がんに対する薬物療法では、従来の治療に加えて分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤など、新しい薬剤を取り入れた治療や臨床研究が進んでいる。また、薬物療法が手術を可能にすることもある。好評発売中の週刊朝日ムック「胃がんと診断されました」では、薬物療法の最新状況を取材した。

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近年、がんの薬物療法では、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤が注目されている。がん種によっては、臨床研究や治験などですでに効果が立証され、国の承認を得て、標準的な治療として使用され始めているものもある。

胃がんでも、分子標的薬を使用した治療はすでにおこなわれており、免疫チェックポイント阻害剤についても今月厚生労働省の部会で承認され、間もなく治療に使えるようになる。また、従来の抗がん剤とこれらの新しい薬剤を使用し、治療の有効性をより高めるための臨床研究なども複数進行中だ。

さらに、薬物療法と手術を組み合わせた治療によって、数は少ないながらステージIVからでも治癒につながる可能性も出てきている。

■胃がんで使用される分子標的薬は二つ

分子標的薬は、がん細胞が持つ特異的なたんぱくや遺伝子などの分子のみに作用して、増殖を抑制する。胃がんでは現在、トラスツズマブ(商品名ハーセプチン)とラムシルマブ(同サイラムザ)という二つの分子標的薬が標準的な薬物療法に組み込まれ、他の抗がん剤とともに使用されている。

トラスツズマブは、遺伝子の変化によって、がん細胞にHER2(ハーツー)という物質が異常に発現している患者(HER2陽性患者)に有効な薬剤だ。HER2はがん細胞の増殖に関わるたんぱくで、トラスツズマブはHER2に作用して増殖を阻止する。

国立がん研究センター東病院消化管内科医長の設樂紘平医師は、次のように話す。

「HER2陽性の患者さんは、薬物療法が必要な患者さんの約15%前後います。この方たちに抗がん剤に加えてトラスツズマブを使うと、がんがさらに縮小したり延命につながることが立証されています。陰性の患者さんでは効果がないため、治療の選択肢には入っていません。そのため薬物療法の際には、必ずHER2が陽性かどうかの検査をおこないます」

一方、ラムシルマブは「血管新生」を阻害する薬剤で、こちらも他の抗がん剤とともに使用される。がん細胞の周囲には、がんに栄養や酸素を供給するための新しい血管が作られる(血管新生)。それを阻害することで、がん細胞に栄養や酸素が行かないようにしたり、異常な血管を正常化して抗がん剤の効果を高めたりして、増殖を抑制する仕組みだ。

「使用できる薬剤が増えるに従って、組み合わせや順番など使い方の選択肢も増え、患者さんの状態や適応に合わせたオーダーメイドの治療が可能になると期待されています。その実現に向けて、さまざまな臨床研究や治験がおこなわれています」(設樂医師)

免疫細胞には、自分のからだへの攻撃を抑制する機能がある。がん細胞は自分のからだの一部なので、免疫細胞のPD-1というたんぱくががん細胞のPD-L1と結合すると、攻撃にブレーキがかかってしまう。免疫チェックポイント阻害剤のニボルマブ(同オプジーボ)はこれらの結合を阻害し、ブレーキがかかるのを抑制して免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようにする。皮膚がんの一種である悪性黒色腫や非小細胞肺がんなど、さまざまながんで有効性が認められ、治療に使用されている。

「胃がんでもニボルマブの治験が終了し、国の承認を得たところです。臨床研究では、胃がんの縮小や進行を遅らせる効果が確認され、承認後は、現在おこなわれている3段階の薬物療法の、3番目以降での使用が推奨されると考えられます」(同)

■手術前の薬物療法で予後を改善

薬物療法と手術を組み合わせることで、進行胃がんの予後を大きく改善したり、ステージⅣで切除不能だったがんを切除できるようにしたりし、治癒の可能性も探るという治療方法が検討されている。それが、術前化学療法(NAC)とコンバージョン手術である。

NACは、スキルス胃がんや、8センチ以上の大きな潰瘍(かいよう)を作るがん、多くのリンパ節に転移しているがんなど、手術は可能であるものの、その予後が極めて悪いがんが対象となる。通常は手術の後、再発予防のために薬物療法をおこなうが、NACは先に薬物療法をおこなってがんをたたいておき、そのあとに手術で切除する方法だ。

国立がん研究センター東病院胃外科長の木下敬弘医師は、次のように話す。

「薬物療法の効果が出てがんが縮小すれば、根治切除ができる割合が増えることが期待されます。また進行がんでは、微細な細胞レベルの転移が全身に広がっていることも少なくないのですが、それらの転移がんを手術前に掃討でき、予後が改善する可能性もありますね。それによって生存率を上げること、さらには治癒をめざすことが、この治療の目的です」

■ダウンステージ後のコンバージョン手術

もう一つの方法であるコンバージョン手術は、ステージⅣで手術不能と診断された患者のがんが、薬物療法によって切除可能となった場合におこなう。

「ステージIVの患者さんの中には、割合は小さいものの、最新の薬物療法が非常によく効く人がいます。がんのステージがIVからIIIやII、場合によってはIになって、切除可能になるんですね。その縮小したがんを切除するのが、コンバージョン手術です」(木下医師)

ステージIVの状態から薬物療法によってダウンステージがかない、コンバージョン手術の対象となる患者は8%程度いるという。

「この治療では長期生存の報告も出てきており、実際に5年以上生存するなど、治ってしまったという患者さんもいます。現在、治療のタイミングやどんな患者さんに適応があるかなど、よりよい結果を導くための臨床研究も複数おこなわれています」(木下医師)

NACやコンバージョン手術などの先進的な治療や、薬物療法の臨床研究・治験などに関する情報は、がんを専門にする病院や大学病院などのホームページで公開されている。受けてみたい治療や研究をおこなっている病院があれば、受診して相談してみるのも一つの方法だ。

ただ、実際に希望する治療が受けられるかどうかは、それまでの治療経過や現在の状態などを含め、薬物療法の専門医や外科医などによって総合的に判断されることになるので、その点には留意が必要である。

(取材・文/梶 葉子)

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