時代遅れの「現金主義国家」日本

時代遅れの「現金主義国家」日本

  • JBpress
  • 更新日:2017/11/20
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あらゆるテクノロジーの進化がスピードを増す中で「日本は世界から取り残されている」「日本は遅れている」といった指摘を受けることも少なくない。そこで今回は、他国に比べて日本が遅れていると揶揄されている「キャッシュレス化」と「フィンテック」の現状について、NCB Lab.代表の佐藤元則氏に話を聞いた。

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「ランチはカード不可」の店舗がたくさんある

クレジットカードをはじめ、デビッドカード、プリペイド型電子マネー、モバイル決済など、多様を極める現代の決済方法。さまざまな手段があるにも関わらず、日本でのキャッシュレス化は遅々として進まない。

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現金支払いの方が安心する?

「第一に、日本が現金主義の国であることが、カードや電子マネーなどの非現金決済の普及を阻んでいる大きな理由です」

佐藤氏によれば、日本で支払いの際に非現金決済を選ぶ割合は個人消費支出の25%(NCB Lab.調べ)にとどまっているが、キャッシュレス化が進むカナダやスウェーデンに至っては全経済活動における現金支払が約2%以下[*1]と、かなりの少数派とのこと。そのため、日本は先進国の中でもっともキャッシュレス化が遅れている国という烙印を押されている。

[*1]Payments Canada「Canadian Payment Methods and Trend Report」およびBBC「Why Sweden is close to becoming a cashless economy」より

また、日本でキャッシュレス化が進まない理由に、現金主義の他に消費者の多くが抱いている“クレジットカードの使いすぎ”に対する不安が影響しているという。

「クレジットカードに“借金”というイメージがある人が、日本人にはとても多い。そのため、支払い時に『クレジットで』と頼むのも気が引けてしまい、結局現金で支払ってしまうのです。SuicaやPASMOなど、使いすぎる心配がないプリペイド型電子マネーには“交通機関で使うもの”というイメージが強く、無意識に住み分けをしてしまっているようです」

クレジットカードは借金、電子マネーは定期、モバイル決済は使い方が難しそう(だから使わない)、などの消費者側の思い込みが、キャッシュレス化の遅れと直結しているというのだ。一方で、キャッシュレス化が遅れている原因はマーチャント(店舗)側にある、と佐藤氏は指摘する。

「店側がカードを受け付けていない点も、キャッシュレスが進まない大きな原因になっています。日本では、都市部であってもランチだけカードが使えなかったり、地方の老舗店ではそもそもカードが使えなかったり、ということはざらです」

観光立国は非現金決済の普及あってこそ

クレジットカード決済が主流のアメリカやヨーロッパは、100円や10円などの小額も非現金決済が可能。どんな田舎でもほとんどの店でカード決済ができることは、海外旅行に行ったことがある人ならば経験があるだろう。

「カードでの支払いが増えれば決済の透明性が上がり、マーチャント側は売上をごまかすことができなくなります。決済が透明になれば、脱税ができなくなり法人税の税収がアップするはず。行政は、消費税を上げる前にカード決済の義務化を進めるべきではないでしょうか」

そして、このまま日本のキャッシュレス化が進まなければ、国策として掲げる「観光立国」も難しいだろうと佐藤氏は語る。

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インバウンド需要にはカード払いでの対応が不可欠となる(写真はイメージ)

「インバウンドの人々は、キャッシュレスに慣れています。しかし、日本に来て現金しか受け付けないレストランに入ってしまうと、支払いができず食後にATMに走る旅行者がいるという、おかしな現象が起きているんです。本当の意味で観光立国を掲げるなら、まずはキャッシュレス化を最優先に進めるべきでしょうね」

現場と乖離した国策は、とても滑稽に思える。より地に足の着いた方法で、観光立国を目指してほしいものだ。

日本には斬新なフィンテックを生み出す土壌がない

アメリカ発祥の「フィンテック」は、金融を意味する「ファイナンス」と、技術を表す「テクノロジー」を融合させた造語。日本でも2015年頃から注目されはじめ、フィンテック関連のニュースも頻繁に目にするようになった。国内で関心が高まっている一方で、独自ビジネスの創生には至っていないという。

「今、日本にあるフィンテックは、ほかの国ですでにあったサービスを日本で真似ているにすぎません。例えば、中国のアリペイやウィーチャットペイメントを見て日本流にアレンジしたようなサービスなどもありますが、日本発の革新的なフィンテックサービスがないのが現状です」

日本でも新たなフィンテックサービスがないわけではないが、特異性や先進性に欠けると、佐藤氏は強く主張する。

「日本と海外のサービスの決定的な違いは“金融への問題意識の薄さ”にあります。例えばの話ですが、銀行の営業時間に疑問を抱いたことはあるでしょうか? 日本の大手メガバンクが15時に営業が終了してしまうという現状に対して『仕方ない』と割り切って順応している日本人はたくさんいると思います。しかし、フィンテックサービスを生み出すためには『こんな銀行サービスのままでいいのか?』という問題意識を持つ必要があるんです」

新たなサービスを生み出して解決策を導くために、最新技術を使う。それが、フィンテックに限らず、海外のテクノロジーサービスの根幹にある考え方だという。

例えば、アメリカで人気のスマートフォン上で銀行と同等のサービスを手数料無料で受けられる「Simple(シンプル)」。このサービスは、創業者の一人が金融機関を利用した際、高額な手数料を取られたことに腹を立てたことをきっかけに立ち上がった。まさに、消費者目線から生まれたサービスなのだ。

「フィンテックの新サービスを生み出そうとする際に、金融リテラシーの高さは関係ありません。『不便な部分を変えたい』という意識を持つことが重要なのです。消費者目線を持つフィンテック先進国のアメリカでは、業界のジャンルを越えて新たなサービスが生まれ続けています」

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また、欧米や中国などではたとえ金融とはかけ離れたジャンルの企業であっても、ネット上に公開されているクラウドやAI、UX、UIを組み合わせれば簡単にアプリケーションを作れるだけの豊富なリソースを持っている。その点でいえば、日本はテクノロジーの環境が整っていないことも遅れの原因となっているのだ。そんな現状を打破する方法とは?

「日本のフィンテック業界には、スタートアップに投資をするベンチャーキャピタルもあります。しかし、新サービスの良し悪しを判断する目利きがいないため、一つのベンチャー企業に大手の出資が集まるなど、課題が山積みです」

さらに、人材を育てるための土壌もないなど、日本は新たなビジネスモデルが誕生するのは難しいのが現状だという。

「どの業界にも共通することではありますが、日本の遅れを挽回するにはエンジニアの育成は必須。そういう意味でいえば、2020年から小学校でのプログラミングの授業が必修になるのは良い動きだとは思います」

しかし、本当の意味で人材が育つためには10年、20年と長い時間を要する。空白の時間が未来の日本に大打撃を与えることになるか否か、今がまさに踏ん張り時だ。

●取材協力
NBC Lab.
http://www.ncbi.jp/

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