東京イノセントワールド:またどこかで会えるといいな。東京の深い闇に惑う前の君に

東京イノセントワールド:またどこかで会えるといいな。東京の深い闇に惑う前の君に

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  • 更新日:2016/10/19

欲望が渦巻き、誰もが成功を願う街、東京。

この大都会に長く住めば住むほど、大切な何かを失っていく気がしないでもない。

東京の独特な空気に飲まれて心の純粋さを失い、幼い頃に描いていた夢を失い、そして本来の自分らしさも徐々に消え失せていく。

長野県から上京してきた美穂と慎吾。大都会に揉まれながら、東京に染まっていく二人は都会の片隅でイノセントさを失わずにいられるのだろうか?

美穂は、東京出身のマリエに対するコンプレックスから医者と一夜を共にしてしまう。慎吾への罪悪感に悩まされていたが...

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「空が狭いなぁ...」慎吾の上京物語

「空が狭いなぁ...」

東京の空は狭かった。

地元・長野県の安曇野で毎日見ていた、大きくて澄み渡るような綺麗な青空と、東京の四角くて曇りがちな空は、同じ空でも全く違うものに見えた。

「美穂、俺、東京で就職決まったよ」

高校時代から付き合っていた美穂。でも上京して半年くらいで急に電話に出なくなり、LINEの返信もなくなった。後を追う形で、美穂から1年遅れで東京にやって来た。ようやく見つけた就職先は、IT系企業の営業職だった。

初めての就職に、初めての東京での一人暮らし。
何もかもが目新らしく、そして輝いて見えた。

—慎吾、就職決まったんだね。おめでとう!中々連絡できなくてごめんねー

1週間後に美穂から返ってきたLINEはどこか他人事で、東京に来ればヨリが戻るかも、と思っていた自分の甘さを実感した。

でも、それを見て吹っ切れた。ここから、全く新しい日々が始まる。

東京で、新たな自分になるんだ。

しかし上京して3ヶ月で、東京の過酷さを思い知ることになった。

地方から出てきた男性を待ち受ける厳しい東京の洗礼とは...?

レベルが違い過ぎる東京の女性陣

「ウケる、慎吾君って渋谷が好きなの?地方出身っぽい発言だね〜」

会社の先輩に連れて行かれた食事会で、マリエというやたらと華やかで、目鼻立ちがハッキリしていてハーフのような顔をした美女にバシバシと背中を叩かれる。

「慎吾君って可愛いよね。何かそのウブな感じ?私の友達にそっくり」

東京で生まれ育ったというマリエは、正に高嶺の花、という言葉がピッタリだった。地元で歩いていれば、誰もが振り返る。でも、ここ東京では数人しか振り返らない。本当に、何て東京は女性のレベルが高いんだ...

「私、普段サラリーマンと飲まないんだけど、久々に一般人と飲むと面白いわ」

同い年と言っていたがまるでそうは見えない。サラリーマンは確かに一般人だが、その呼び方はなくないか?マリエの経験値は、もう40歳レベルだろう。いかにも、年上の男性から好かれそうな、大人びた色気がある。

「こう見えてちゃんと丸の内にある貿易会社で働いてますよ〜」

「え、そうなの?俺の前の彼女も貿易会社で働いてるんだ」

「うっそ。慎吾君って長野県出身だっけ?私の同期にも長野県出身の子がいるけど、まさか“あの”美穂じゃないよね?笑。」

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“あの”美穂。その指示詞が持つ意味とは?

丸の内にある貿易会社勤務で同い年。名前は美穂。こんな所で美穂の友達と出会えて嬉しくなった。 しかもこんな美人と友達なんて、美穂もなかなかやるな。

「その同期さ、最初は超〜地味で。でも、私の真似するようになって、何か日に日に調子に乗り始めて。ネイルも髪型も真似されてて、ちょっとウザイんだよね」

「え、その美穂って子が?」

いや、俺の知っている美穂ではないかもしれない。美穂はネイルが嫌いだった。自分をしっかり持っていて、人の真似なんてしない子だ。

「前までよく一緒にお食事会行ってたんだけど、会う人会う人、全員お持ち帰り。すごい女がいるよね〜本当、慎吾ちゃんもそんな変な女には気をつけてね」

マリエの会社名は怖くて聞けなかった。

でも、絶対に...絶対に、あの美穂のことではない。
ミホなんてありふれた名前だ。どこにでもいる。

東京デビューを果たした慎吾と、東京に染まりゆく美穂。二人の想いが交錯する...

遅い東京デビューですが

結局マリエの電話番号さえ聞けず、その日は全く相手にされないまま解散した。

「慎吾ちゃん、東京でモテるために必要なこと、何か知ってる?優しさとかじゃないの。一番必要なのは“財力”だよ」

お食事会の帰り際に、マリエがそっと耳元で囁いた言葉が頭から離れなかった。外見でも会話力でもない。東京で生き残るために必要なのは、財力。

「どれくらい稼げば、マリエに相手にしてもらえるのだろうか」

ゴールの見えない闇に向かって、ひたすら辛い坂道を走っている気がした。人柄ではなく、持っている物で判断される街。食事会の翌日、出社途中にふと見上げた空は狭くて、曇っていて、息が詰まりそうだった。

「本当に、この街で生きていけるのかな...」

それから必死で仕事をし、狂ったように遊び始めた。東京に少しでも慣れるために、マリエのような女性に相手にしてもらうために。

毎日仕事と食事会を繰り返し、遊ぶ相手もできた。
稼いだお金は交際費に消えていった。必死だった。

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待ち焦がれていたけれど、こんな再会を願ってはいなかった

そんなある日、先輩に呼ばれて行った食事会で思わぬ再会を果たすことになる。

「こないだ一緒に飲んだ子なんだけど、あと“もう一押し”で何とかなりそうでさ。慎吾、今日のお前は引き立て役だからな。空気読んで先に帰れよ」

「なんですか、それ。その軽そうな子とうまくいくといいですね〜」

先輩とビールで乾杯をしたタイミングで、女性陣がやって来た。東京っぽい感じの二人だなぁ。と思った瞬間、思わずグラスを落としそうになった。

「え、美穂...!?」

目の前には、美穂が呆然と立ち尽くしていた。
でも、知っている美穂とはまるで別人だった。

化粧も濃くて、みんなと同じような髪型。誰かのコピーをしているような、街でよく見かける個性が全くない服装。美穂らしさは完全に消えていて、代わりに東京というカラーに染まっていた。

「慎吾、ここで何してるの...」

そう言った途端に、美穂がポロポロと泣き出した。あぁ、美穂は色んなことを考えながら一人で頑張っていたんだな。外見は変わっていても、中身は昔の美穂のままだった。純粋で、人懐っこくて、情に厚く涙もろい。

「え、美穂ちゃんどうしたの?」

先輩が横で焦っている。そっと美穂に手を差し出そうとした瞬間に、凍りついた。

「慎吾、帰って。ここは慎吾がいるべき場所じゃないから」

ふと美穂の隣を見ると、マリエが笑っていた。

次週10月26日水曜日更新
東京ロボットになった美穂。慎吾もいつの間にか自分を失いかけていた...

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