「これって、誘われてる...?」夜20時、男と二人きりのオフィスで何かを期待してしまった女

「これって、誘われてる...?」夜20時、男と二人きりのオフィスで何かを期待してしまった女

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  • 更新日:2019/07/29

いつの頃からか、「婚活してるの?」とすら聞かれなくなった。

幸せになりたいと願う気持ちは、何歳になっても変わらないのにー。

35歳を過ぎてから「独身」がコンプレックスとなっていく女。婚活歴15年の山崎真理子も、まさにそういう女だった。

顔は悪くない、性格は難なし、仕事は順調。結婚願望は今もある。

―40歳になったって、恋愛も結婚も仕事も、諦めたくない。

これは、年齢を重ねるにつれて“幸せになること”を諦めかけていた女が奮起し、幸せ探しを再スタートする物語である。

大手飲料メーカーでPRの仕事をする真理子は、後輩の心ない一言で撃沈し、それをバネに幸せを必ず掴むという決意をした。

ついに41歳の誕生日を迎えた真理子。その夜年下の上司・黒田からバースデーLINEが届くが、ひなのと黒田が二人で食事に行ったことを知ってしまい動揺する。一方で、お食事会で出会った早川とデートにいくが彼が既婚者だと発覚したのだった。

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「ねえ、最近どうなの?彼氏できた?」

突然の問いかけに、真理子は思わず顔を引きつらせた。

真理子に向かって身を乗り出し、そんなことを尋ねてきたのは、妹の遥(37歳)である。

今日は、溝の口の実家に来ているのだ。既に結婚している遥が、子供たちを連れて実家に行くと連絡があったので、真理子も訪れていた。

「で、どうなの?お姉ちゃん。こんなこと聞いてくれるの、私くらいだと思うけどねっ」

子供の頃から毒舌の妹にしつこく詰め寄られ、真理子はしぶしぶ口を開く。

「あのねぇ、そんな人いたら、すぐ紹介するよ」

そうして、早川との最悪なデートの一部始終を遥に報告した。人をバカにしたような早川の態度は、今思い出しても気分が悪くなるが、なんだか無性に聞いてもらいたい気分だったのだ。

真理子と違って、遥は要領が良い。そんな妹に恋愛相談をして、アドバイスしてもらうことは、昔からよくあったのを思い出した。

「“慎重派”のお姉ちゃんが、頑張って一歩行動に出てみたら…。“既婚者という地雷を踏んだだけ”って、なんか痛いねえ」

しみじみとした口調だが、遥の言葉はグサリと胸に突き刺さる。

「そんなことはっきり言わないでよ…」

でも、遥の言う通りだと思った。

真理子にしては珍しくガツンと怒りをぶつけて、一歩前に進めた気がしていたけれど、結局何も現実は変わっていないのだ。

「あーあ…。現実は、彼氏なし・夫なしの、代わり映えしない毎日だわ…」

真理子はがっくりと肩を落とすのだった。

「まだ、あきらめないで」。妹から告げられた親の本音に、41歳独身・真理子は胸を痛めるが・・・。

「あれ、お父さんノンアルコールビールなの?」

いつもは、食事のときに必ずビールを飲む父が、なぜかノンアルコールビールを飲んでいた。

「そうなのよ。お父さんね、最近健康のために禁酒しているのよ」

健康診断で心臓の血管が少し詰まりかけているとの結果が出て、心臓カテーテル治療をすることになったのだと母が説明してくれる。

「えっ…」

真理子は驚きを隠しきれないのと同時に、いつも一家の大黒柱として真理子たちを守ってくれた逞しい父が、急に少し小さく見えた気がした。

―ビールを美味しそうに飲むお父さんの顔、好きだったんだけどな…。

胸がチクリと痛む。そして、とうとう親の健康を心配する歳に突入したことを実感するのだった。

夕食を終え、妹は実家に泊まっていくと言っていたが、真理子は帰ることにした。二人でゆっくり話したかったのか、遥が駅まで一緒に来てくれた。

駅までの道のりを二人で並んで歩くなんて、いつ以来だろうか。真理子はどこか懐かしい気持ちになった。

駅の改札が見えてきたあたりで、遥が「実はね…」と切り出す。

「お母さん、口には出さないけれども、”お姉ちゃんの結婚”まだ期待してるのよ。毎年神社でお姉ちゃんのために縁結びのお守り買ってるんだから、笑っちゃうけどね。だから、婚活あきらめないでねっ!」

そして、真理子の手をぎゅっと握りしめてくる。

親は、何歳になっても親なのだ。 “結婚していない事実”よりも、未だに”親に心配かけているという事実”が真理子の胸を締め付ける。

「結婚してよかったと思うのは、婚活から解放されたことと親を安心させられたこと」 。最近結婚した友人が、そんなことを言っていたのを思い出していた。

「そうそう、私もね、お姉ちゃんのために色々調べたんだけど、こんなアプリ出たみたいだから使ってみたら?40歳以上向けのマッチングアプリらしいんだけど。試してみるのもいいんじゃない? 」

遥が教えてくれたのは、“東カレロマンス”という名のアプリだった。彼女曰く、最近はアプリで出会って結婚する人も多いらしい。

今までやったことがないことを試すというのも良いのかもしれない。そう思い、真理子は早速アプリをダウンロードするのだった。

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木曜の夜、来週からオープンする夏休みイベントの準備に追われ、真理子は残業をしていた。

気づいたら、時刻は20時を過ぎており、オフィスには自分一人しかいない。

「あれ、山崎さんまだ残業していたの?大丈夫?」

真理子に声をかけてきたのは、黒田だ。ちょうど外出先からオフィスに戻ってきたところらしい。

「あっ、おつかれさまです。大丈夫です、区切りいいところまで終わったら帰るので」

黒田と二人っきりになってしまった状況にドキッとして、とっさに素気ない返事をしてしまう。

―これってどう返事するのが正解だった?ひなのならこんな時、“大丈夫じゃないです~。なんだかお腹すいちゃった”とか言って、にっこりほほ笑むのかしら…。

静かなオフィスで、黒田と二人きり。パソコンの音だけが鳴り響いている。

オフィスに二人っきりという環境で、耳だけが敏感に黒田の動きを追ってしまう。なんだか集中力が途切れてしまい、結局30分ほど仕事した後、帰り支度を始めたところを黒田に呼び止められた。

「もう、帰るの?」

その声に、思わず胸がドキッとした。

これって誘われてるの?とうとう会社帰りにデート・・・?

黒田の視線を感じたが、気付かないフリをして、パソコンの電源を落としながら目を合わせずに返事をする。

「あ、はい!お先に失礼します」

すると黒田は、思いもよらないことを口にしたのだ。

「ねえ、お腹空いてない?もしよかったらメシ行かない?」

「えっ?」

顔をあげて黒田を見たが、彼はいつも通り涼しい顔をしている。

―これって私、ゴハンに誘われている・・・?

突然のことで状況を飲み込めず、真理子がキョトンとしていると、黒田が“あっ”という顔をした。

「もしかして、予定あった?」

「な、ないです!!お腹空いてます」

思わず力強く即答した。

オフィスを出て、黒田と並んで歩きながらふと隣を見上げると、普段クールな彼がわずかに微笑みを浮かべているように見える。

「今日は肉が食べたい気分なんだけど、付き合ってもらってもいいかな?」

そう言って連れて行ってくれた店は、『ノマド・グリルラウンジ』だった。

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夜景がきれいなルーフトップテラスの席に座ると、まるでデートしているような気分だ。

前回、ひなのが黒田に連れて行ってもらった店は、いつもの餃子屋さんと言っていたが、今日はまるで違う。そんな小さなことに、いちいち期待してしまう。

しかし、黒田の話は、先ほどからずっと仕事に関する質問ばかりだ。過去のプロジェクト、社員やクライアントについての話。その一つ一つに、真理子は丁寧に答えていく。

彼はまだ、転職してまもないのだ。こうして食事に誘ってくれたのも、社歴の長い真理子に内部事情を聞きたかっただけなのかもかもしれない。

そう気がついて少しだけガッカリしていると、黒田は優しい表情で頷きながら、こう言った。

「山崎さんって本当によく周りのこと見てるよね、感心するな。こうやって僕がいろいろ尋ねても、他部署の人のこともよく知ってるし、何が起きてるかも把握している。いつも丁寧に仕事してるのがよくわかるよ」

「あっ…ありがとうございます」

そんな風に面と向かって褒められると、急に恥ずかしくなってしまう。

「そのちょっと戸惑ったような、困ったような顔。よくするよね」

黒田は少し茶目っ気のある目で、真理子の顔を覗き込む。

「え…私、そんなによく困った顔していますか?」

「うん、ほら、今まさに。戸惑った表情してる」

じっと見つめられてどうしていいかわからず、真理子は視線をそらしてしまった。そして自分に必死で言い聞かせる。

―好きになってしまいそう…このシチュエーション。ダメダメ、これは仕事なんだから。

そんな真理子の気持ちをよそに、黒田が夏季休暇の話題をふってきた。

「ところで、山崎さんは夏休みどこか行く予定あるの?」

「うーん、本当は、ニューヨークに行ってみたいなって思ってるんですけど、一人で行く勇気が持てなくて」

ニューヨークは、いつか行ってみたいとずっと前から思っていた場所だ。すると黒田は、意外にもこの話題に食いついてきた。

「ニューヨーク?いいねえ、絶対行った方がいいよ!僕も昔住んでたことがあって、大好きな場所なんだ。友達も住んでるから時々ふらっと遊びにいくこともあるよ」

いつも淡々としている彼が、珍しく少しだけテンションが高くなったように見えて、真理子は嬉しくなった。

「そうなんですか?お勧めの場所とか、ぜひ教えてください!」

「いいよ、いつでも連絡して!」

なんだか、一瞬距離が縮まった気がする。そう感じた時に、黒田のスマホが鳴った。

「ちょっと、ごめん」と言いながら、黒田はLINEの画面を開いている。その瞬間、可愛いスタンプのやりとりをしている画面が、真理子の目に飛び込んできた。

―こんな可愛いスタンプのやりとりしている相手って誰…?彼女…?

黒田はメッセージを確認した後、スマホをポケットにしまい、何事もなかったように会話に戻ってきた。だが、真理子は、LINEの相手が誰か気になってしまい、会話に集中できない。

―これはデートなんかじゃない、仕事、仕事。

心の中で呪文のようにそう唱え、笑顔を作る。

ーこれっていつものパターン?いいなって思う人には彼女か奥さんがいる。恋を始めることすらできないってやつ…?

そう思いながらも、真理子は“好きになりそう”という自分の気持ちに嘘がつけなくなりそうな予感がしていた。

▶Next:7月30日 火曜更新予定
ベールに包まれていた黒田の女性関係が明らかに?

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