ラランド・サーヤとガンバレルーヤ・よしこの対立と、“笑い”による多様性の承認

  • 日刊サイゾー
  • 更新日:2020/09/15

テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(9月16~12日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。

ラランド・サーヤ「古いんですよ、まず考えとしてこれ自体が」

芸能人がやっていることは、総じて評価が難しい。演技、歌、笑い。どんな分野にしろ人によって好みが違うため、ある人がある芸能人を酷評しても、周囲から必ず異論が出てくる。ヒロミを面白タレントとして高く評価している人だってどこかにいるのだ。

芸能人に対する評価はブレる。なので、評価がブレにくい尺度が代替物としてよく使われる。たとえば、アイドルの”可愛さ”を評価するときには、しばしば”顔の小ささ”が語られる。誰にとっても可愛い顔というのはあり得ないかもしれないけれど、小さい顔は誰にとっても小さい顔だ。須田亜香里(SKE48)の愛嬌を理解するには時間がかかるが、齋藤飛鳥(乃木坂46)の顔の小ささは彼女がマスクで顔を覆えば誰でもすぐわかる。

お笑いに関しても、何が”面白い”のかは人によって違う。いや、自分でも自分が何を”面白い”と思っているか、わからないことも多い。だからしばしば、”新しい”が”面白い”の代わりの尺度になる。旧来の常識の問い直しが笑いを生むという事情も、”新しさ”が注目されやすい環境と関係しているのかもしれない。

最近でいえばお笑い第7世代。彼ら・彼女らは年齢の若さだけでなく、新しい価値観を体現する存在として評価されることも多い。明石家さんまやダウンタウンなど吉本興業の芸人を象徴とする”古い笑い”と対比される形で、コンプライアンスやポリティカル・コレクトネスと呼ばれるものに対応した第7世代の”新しい笑い”が高く評価されていく。

そんなお笑い第7世代は女性芸人の層が厚い点でも”新しい”。かつて『ボキャブラ天国』で頭角を現した女性芸人がほぼパイレーツだけだったことを考えると、時代の変化を感じる。

10日の『アメトーーク!』(テレビ朝日系)ではその女性芸人が特集されていた。括りはストレートに「若手女性芸人」。出演していたのはガンバレルーヤ、3時のヒロイン、薄幸(納言)、サーヤ(ラランド)、そしてぼる塾の計5組10人だ。MCの蛍原徹の横には、見届人として陣内智則も座っていた。

番組の展開の軸となったのは、”古い笑い”と”新しい笑い”の対比だ。”古い笑い”を代表したのはガンバレルーヤ。第7世代という言葉が広まる少し前からテレビに出演していた彼女たちだが、バラエティでは容姿をツッコまれる場面が多い。劇場で披露していたのは、「柿の木だと思って取ったら金玉だった」というような下ネタ。そんな自分たちについて、まひるは「巷では古い笑いをやってる最後の女芸人みたいな」「吉本興業さんの下品な笑いみたいなものを(継承している)」と語り、笑いを誘う。

他方、”新しい笑い”の極には、ラランドのサーヤ。事務所に所属せずフリーで活動する男女コンビのボケ役で、芸人と広告代理店の会社員を兼業していたりもする。コンビとしては2019年のM-1グランプリの予選で注目され、準決勝まで進出。その年のベストアマチュア賞に輝いた。『ネタパレ』(フジテレビ系)や『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)、『Qさま』(テレビ朝日系)などテレビで見かける機会も増えている。

で、番組では冒頭、出演者の立ち位置をわかりやすく示すために、横軸に「リアクション/トーク・ネタ」、縦軸に「見た目インパクト/キレイ系」を置いた4象限のマトリクスを作り、そのボードに女性芸人たちの名前を貼っていた。これにサーヤがツッコむ。

「この表がちょっとよくないというか。古いんですよ、まず考えとしてこれ自体が」

なるほど、女性芸人の容姿を評価する流れは、最近見かける機会が減っていている。そういう意味で”古い”。そして、それを指摘するサーヤは”新しい”。しかし、サーヤの指摘はここで終わらない。

「ただ、成長を感じたのが、4、5年前だったら『ブサイク』って平気で書いてたんですよね。それをいま『見た目インパクト』にしてるってことは、加地さん、まだまだ上行きたいんだっていう」

番組の演出・エグゼクティブプロデューサーの加地倫三氏への、鋭いイジリに笑った。どこまでが意図か演出かわからないけれど、今回の企画に対する番組の配慮の姿勢を、笑いを交えながら視聴者に印象づけるコメントだったようにも思う。

さて、そんなサーヤのスタンスに3時のヒロイン・福田麻貴も一部同調していくのだが、これをガンバレルーヤ・よしこが「納得いかない」と迎え撃つ。彼女いわく、女性芸人には森三中やモリマンなど先輩が作ってきた道がある。それを私たちは継承していかなければいけない。そう煽り気味に語ったよしこは吠えた。

「先祖が作った笑いをなぜ守らないあなたたちは!」

ガンバレルーヤ・よしこ「顔一本でここまでやってきたので」

”古い笑い”と”新しい笑い”の対立は、この後もガンバレルーヤとサーヤをいわば代理人として立てる形で展開していく。

念のため触れておくけれど、この対立を完全な”ガチ”として受け止めるのはつまらない。よしこもサーヤもそれぞれの役割を演じている面がある。かといって、完全な”ネタ”として受け止めるのもなんだか違う。時代は確かに移り変わっていて、そこには個々の芸人の困惑やチャレンジがある。

芸人や番組は”面白い”の成立に向けて言葉を紡ぎ、画面を構成している。その”面白い”を存分に享受するには、100%の”ガチ”とも”ネタ”ともいえない曖昧なところに自分の身を置きながらこの攻防を見るのがおすすめだ。

さて、番組中盤のトークテーマは「今ココがやりにくい」。よしこが提起したのが容姿イジリ問題だ。

「最近、ブスとかデブとか容姿イジリがやっぱり駄目みたいな流れになってるじゃないですか。私たちとかホントに、顔一本でここまでやってきたので。それがなくなると私たちどうやって笑いとっていったらいいか」

持ちネタに小雪や多部未華子の顔マネがあるよしこ。『徹子の部屋』(テレビ朝日系)でこれをやったときは、黒柳徹子に「はい、どうも」と流されていたけれど、大抵の場合は周囲から「どこがやねん」的なツッコミが入り笑いになる。ただ、容姿イジリがこれからさらに忌避されていくと、このツッコミも無くなりウケなくなるかもしれない。そう悩みを吐露するよしこに、サーヤが問いかける。その問いかけに、よしこは徐々に困惑していく。

サーヤ「綺麗って言われたくはないってことですか?」

よしこ「綺麗って言われたくは……なくはないです」

サーヤ「言われたいんですよ。ホントは、可愛い、綺麗って言われたいんですよ」

よしこ「……私ホントは可愛い、綺麗って言われたいの?」

サーヤの弁舌力とよしこの演技力が共振し、この即興の”洗脳”コントを成立させていく。サーヤの真顔、よしこの負け顔がそれぞれ可笑しい。

番組では他の芸人たちからも、容姿イジリが難しくなった状況への対応を語っていた。ぼる塾のあんりいわく、今は周りから「ブス」などと呼ばれるのはもちろんのこと、本人の自虐も好まれなくなっている。だから、「『ブス』って言われたときの返しよりも、『可愛い』って言われたときの返しを考えなきゃいけない時代になって」いる。そこで生まれたのが相方・田辺智加のギャグ「まーねー」であるという。

また、よしこも追い詰められたときに叫んできた「クソが!」というギャグが、うまく決まらなくなってきているらしい。そこで新しく、満面の笑顔で手を振り「バーイバーイ!」と言うギャグを考えているという。

さて、番組は大オチへ。番組のラストは「好きなだけ臭害物競争」と題したゲーム。くさやとアメ玉が一緒に白い粉の中に入った箱の中から、口だけでアメ玉を探す競技で、『アメトーーク!』ではお馴染みだ。ただひとつ違うのは、今回は強制ではなく自由参加だということ。時代的にこういう罰ゲーム的な要素が入ったゲームも強制してはいけない、本人の意志があるなら構わないけれど、という設定だ。

蛍原の掛け声でゲームが始まる。ガンバレルーヤのよしこが「よっしゃー!」と叫んで真っ先に粉に顔を突っ込む。粉で真っ白になった顔を上げて「くっさーい!」。そして周りを見回す。が、他の芸人たちは一歩も動いていない。予想通りの展開ではあるけれど、よしこの渾身の叫びが笑いを呼び込む。

「来いよ!」

そんなよしこにサーヤが問いかける。

サーヤ「ホントにやりたくてやったんですよね?」

よしこ「……そうだよ」

サーヤ「ホントは?」

よしこ「……やりたくない。バーイバーイ!」

これまでの伏線を回収した綺麗なオチに笑った。と同時に、”古い笑い”と”新しい笑い”の対立が、どちらともつかない”面白い”に収斂していく展開に唸った。よしこの受け身がなければサーヤのキャラクターは活きなかったし、サーヤの攻めがなければよしこは大オチを決められなかった。少し硬めに表現すると、そこには笑いの多様性の承認があったかもしれない。あるいは、笑いによる多様性の包摂があったかもしれない。

他方で、自由参加で行われたこのゲームに、ちょっと怖さも感じた。本人が選んだことだからといった理由で周囲が個人を追い詰めていき、本人も自分が選んだことだからと自分で自分を追い込んでいく、そんな多様性の時代の戯画のようなものも感じて。そういう意味でも面白かった。考えすぎだけれど。

この回の『アメトーーク!』は他にも、“新しい笑い”という枠組みからもはみ出していきそうなぼる塾の雰囲気、その場にいないのに女性芸人から何度か名前が挙がった有吉弘行の存在感、そして目立つよしこの横で終始落ち着いたトーンで絶妙なコメントを繰り出すまひるの面白さなど、見どころがたくさんあった。それはまた別の機会があれば触れるとして、それにしてもよしこ、面白かったなぁ。

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