生分解性素材を開発する「パンゲア」。業界も客も巻き込みサステナブルを推進!

生分解性素材を開発する「パンゲア」。業界も客も巻き込みサステナブルを推進!

  • OCEANS
  • 更新日:2022/09/23
No image
No image

プラスチックの代替素材「TIPA」をパッケージに採用。生ゴミ処理機などで生分解可能な、土に還る素材だ。

▶︎すべての画像を見る

以前オーシャンズでは“注目の海外スウェットブランド”としてパンゲアを紹介した。

ベーシックなデザイン、豊富なカラーリングとサイズ展開。誰もが気負わず着ることのできる“ネクスト日常着”である。

しかしながらその服を裏側から覗いてみると、最先端の科学技術の結晶であると理解できる。

イノベーティブな素材開発こそパンゲアというブランドの核心部。その技術部門の責任者であるCIO兼共同創業者のアマンダ・パークスさんが、設立の経緯から語ってくれた。

科学とファッションの懸け橋となるブランド

No image

取材に対応してくれたアマンダ・パークスさんはパンゲアのCIOであり、創業メンバーのひとりでもある。スタンフォード大学で機械工学と美術史を修め、MITメディアラボで博士号を取得。多くのテクノロジー企業やアパレル企業で製品開発のキャリアを重ねてきた、筋金入りの研究者だ。

「パンゲアが生まれる前の’18年当時、世界中の研究所や小さなスタートアップでは、画期的なマテリアルが続々と開発されていました。

しかしながら、このようなイノベーションが商業的、直接的にファッションと結びつくことはほとんどなかったのです。

そこで他の創業メンバーとともに、科学とファッションの懸け橋となるようなブランドをスタートしたというわけです」。

アマンダさんのような研究者をはじめ、アーティスト、デザイナー、ファイナンス、マーケティングといった各分野のプロフェッショナルがパンゲアに参画。

’18年11月、LA・ロングビーチで開催されたストリートファッションのイベント「コンプレックスコン」にてブースを出展すると、リサイクル素材をメインに使用したTシャツやパーカを発表。パンゲアの名はSNSを通じて全世界に発信され、一気に知名度を高めたのである。

No image

車や煙突などから排出される煤を集めたのち、重金属を除去するなど精製して作られた「エアインク」。これを胸のメッセージ部分のプリントに使用している。生地はリサイクルコットンとオーガニックコットンの混紡素材。参考商品/パンゲアhttps://pangaia.com

パンゲアが他のファッションブランドと大きく異なるのは、自社にいわゆるR&D、研究開発部門を設けている点だろう。

一般的なアパレル企業は、製品に使用する素材をテキスタイルメーカーや商社から調達する。だがパンゲアでは素材開発から加工にいたるまで、常にサステナブルをキーワードに独自の研究を重ねているのだ。

「その場所を私たちは“パンゲア・ラボ”と呼んでいます。まさに素材開発の中枢ですが、科学的なコミュニケーションを拡大するための役割も果たしているんです。

例えばこうした取材に対する対応もそう(笑)。気候変動という大きな課題の中で、消費者へのメッセージやファッション業界全体へのイノベーションを促進することも、ラボの重要なミッションなのです」。

--{}--

生分解性素材への徹底したこだわり

No image

ワイルドフラワー、つまり野生の花や野草を乾燥して作った中綿「フラワーダウン」を使ったダウンジャケット。秋冬に再販売の予定。参考商品/パンゲアhttps://pangaia.com

では具体的に、パンゲアが作り出してきたサステナブルな素材をいくつかピックアップしていこう。

まずはダウンの代替素材「フラワーダウン」に注目したい。なぜならこの素材にこそ、パンゲアが考えるサステナブルのエッセンスが集約されているからだ。

「ワイルドフラワーに、バイオポリマー(※1)とエアロゲル(※2)をミックスした素材」は、ダウン同様の暖かさと軽さ、通気性を兼ね備えている。開発の理由は実に明確だ。水鳥の羽毛は倫理的に使いたくない。

化学繊維の中綿は化石燃料資源を使用しており、非生分解性である。ならば新しいサステナブルなダウン素材を開発すべき、という思考なのである。

ちなみにこの「フラワーダウン」はH&Mが製品に採用。パンゲアでは開発した素材をBtoBで販売するビジネスも行っている。イノベーティブな素材をシェアすることは、業界全体の持続可能性と意識を高めていくことにつながるからだ。

No image

ベーシックなデザインのデニムジャケットと、ストレートシルエットのデニム。ヒマラヤ地方の野生のイラクサとオーガニックコットンを使用する。製品は天然のペパーミントオイルで処理され、臭いの原因となるバクテリアの増殖を防止。洗濯の回数を抑え、水とエネルギーの使用量を軽減してくれるというわけだ。デニムジャケット275ドル、デニム225ドル/ともにパンゲアhttps://pangaia.com

続いてデニム。パンゲアの大きなミッションのひとつに「コットンからの脱却」がある。

オーシャンズでも何度か取り上げてきたが、コットンの連作は土壌への負荷がきわめて大きい。そこでより多様な植物由来の素材をブレンドし、コットンへの依存を減らそうと試みている。

例えばヒマラヤ地方に自生するイラクサ。手をかけずとも毎年自然に再生する、生命力の強い植物だ。このイラクサの繊維とオーガニックコットンを使用したデニムは耐久性に優れ、長く着用することができるのだ。

もちろん製造工程にも配慮がある。水と染料を節約する最先端の加工技術を確立。縫製糸には完全バイオベースのセルロース糸を使用。「着用頻度の高いアイテムだからこそ、イノベーティブな素材の開発が急がれる」という。

No image

パイナップルやバナナの葉の繊維から作った「フルーツファイバー」や、植物の繊維を使った「プラントファイバー」は、Tシャツやパーカなどに使用。豊富なカラー展開は多様性の重要さを表現している。参考商品/パンゲアhttps://pangaia.com

このほかパイナップルの葉などを再利用した繊維「フルーツファイバー」、イラクサや竹、ユーカリなどを使用した繊維「プラントファイバー」などを独自に開発。こうした素材は前述のラボにて、日進月歩の研究が続けられている。

「3年先、5年先、10年先のパンゲアを定義するであろう、新たなサステナブル素材に取り組んでいます。また開発時に発生するメタンや二酸化炭素を、服の製造工程のエネルギーとして再利用するなど、素材以外の技術革新も進めています」。

--{}--

業界からカスタマーまでを「巻き込む力」でサステナブルを推進

つまりパンゲアはファッションブランドであると同時に、材料科学のいち企業なのである。

そして取材を進めるほど、このブランドの「巻き込む力」の強さを感じるのだ。業界内の企業や人材へのアプローチはもちろん、カスタマーに対するアピールも徹底している。

No image

すべての製品に付属する「デジタルパスポート」。QRコードをスキャンすれば、素材から製造過程のカーボンフットプリントまでさまざまな情報を得ることができる。

「現在は社内の各部門が協力し、地球に優しい未来をデザインするための、企業としての行動規範の確立に取り組んでいます。

またパンゲアのすべての製品には“デジタルパスポート”が付属。QRコードをスキャンすれば、どんな素材を使っているのか、どんな場所でどんな人が作っているのか、その服が今の環境にどんな影響を及ぼしているのかなど、あらゆる情報を入手することができます。

私たちのイノベーションを推し進めていくためにはやはり、カスタマーの理解がきわめて重要なのです」。

No image

美味しく栄養価の高いスーパーフードも開発する。ウチワサボテン、キヌア、グルテンフリーのオーツ麦などを使用した、優しい甘さのバーだ。35ドル[7本入りボックス]/パンゲアhttps://pangaia.com

力が拡大すれば売り上げも増えていく。パンゲアはその利益を、さまざまな慈善団体への寄付という形で還元している。

ブラック・ライブズ・マター、オーストラリアの野生動物の保護、アマゾン熱帯雨林の先住民コミュニティ支援、新型コロナウイルスに対応する国境なき医師団への寄付。そのとき支援が必要な活動へのサポートが、きわめてスピーディに判断される。

「ブランド名のパンゲア(PANGAIA)は造語。ラテン語で“PAN”とはすべてを包含する、団結するという意味で、“GAIA”は母なる大地を表します。

同じ志を持つ人たちのグローバルなグループを組織し、このコミュニティを成長させ続けていきたい。カスタマーはもちろん、私たちとともに歩むすべての人々が、このコミュニティの一員なのです」。

PANGAIA パンゲア
本社所在地:NY(ほかLA、ロンドン、東京に拠点)
従業員数:140名(2022年7月時点)
店舗:オンラインストアのみ

Sustainable Keywords
・自社研究所でイノベーティブな素材を開発
・製品情報を開示する「デジタルパスポート」
・多くの慈善団体への寄付という形で利益を還元

※1 バイオポリマー
植物由来の原料から合成される高分子素材。工業的に合成されたポリマーに比べ生分解性が高い。「フラワーダウン」に使用されるポリマーはトウモロコシ由来で、堆肥化が可能。

※2 エアロゲル
特許取得済みという、独自の生分解性エアロゲルを使用。多孔質で、中綿の保温性と耐久性を高める役割を果たしている。

※価格はすべて2022年8月現在のオンラインストアのもの。

OCEANS編集部

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加