新幹線の空調換気はどうなっているのか?

新幹線の空調換気はどうなっているのか?

  • マイナビニュース
  • 更新日:2021/05/02
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航空機における新型コロナウイルスの影響(1)換気のあれこれ

COVID-19の問題が持ち上がって以来、開閉式の窓を備えた電車では大抵、一部の窓を少し開けた状態のままで走るようになった。昔の非冷房車時代の地下鉄では、開いた窓から轟音が入り込んできて、車内での会話はままならなかったが、2020年代にもなって同じ経験を繰り返すとは思わなかった。
窓が固定式で換気できるの?

さて。在来線の通勤電車なら窓は開閉式だから、換気のために窓を開けることができる(もちろん、それとは別に換気装置も付いている)。それに、頻繁に停車して側扉を開閉しているから、これも換気の一助になる。そしてラッシュ時の車内は静かなものだから、会話は少ない。

通勤電車がクラスターの発生源にならない理由は、こうした事情による。時々(?)、「こんなに混んでいるのだから、通勤電車は危ない。クラスターにならないはずがない」と主張する人がいるが、それは「三密」のうちのひとつの要素しか見ていない。通勤電車では会話は少ないし、換気が行き届いている。

では、通勤電車以外はどうか。特急車や新幹線は窓が固定式だし、停車は少ない。出入台が独立しているから、停車駅で側扉を開閉しても、客室内の換気にはあまり関係なさそうだ。では、特急車や新幹線は危ないのか。そんなことはない。

いちいち意識する必要がないから知られていないだけだが、窓が固定式になっている車両なら必ず、外気を取り入れたり、車内の空気を車外に排出したりするための換気装置が付いている。これは新幹線でも同じだ。ただし、空調装置と換気装置が別個に付いているケースと、一体になっているケースがある。

新幹線電車の場合、最初に登場した0系では、換気と空調はまったくの別系統。外気を車内に送り込む送風装置は屋根に組み込まれていた。それとは別に、これも屋根部分の中央に10台前後の空調装置が設けられていた。

送風装置から送り込んだ外気は、空調装置の下部で上向きに吹き出して、それが空調装置で温度調整された後で客室に送り込まれる。排気の方は、左右の壁際・足元に排気風道があり、そこから車外に向けて強制排出する。外部から送り込む空気の量と、外部に排出する空気の量を揃えることで、車内の気圧は一定に保たれる。
今の空調装置は床下設置が基本

今の新幹線電車も、基本的な考え方は似ているが、空調装置の設置場所とダクトの構成、そして一部再循環を行うようになったところが違う。

まず、空調装置の設置場所だが、在来線では屋根上に設置している場合が多い。しかし新幹線では、車体断面を小さくする必要と重心を下げる必要から、空調装置は一部の例外を除いて床下設置となっている。例えばN700Sの場合、海側(新大阪方に向かって左側)の床下、新大阪方の台車直後に空調専用機が、東京方の台車直前に空調・換気兼用機がある。

空調専用機は車内から排出した空気に対して、温度調整を行った上で再循環させている。もちろん、車内から出てきた空気はフィルターを通して、余計なものを取り除いている。これは、飛行機の空調換気システムと似ている。それに対して空調・換気兼用機は、外気を取り込んで車内に送り込む機能と、車内の空気を外部に排出する機能が加わっている。N700Sの場合、空調・換気兼用機には大小の開口部が付いているが、そのうち小さいほうが排気用だ。

一部の空気を循環させるほうが、空調機器にかかる温度調整の負担が減少する。しかし、クルマで内気循環にしたまま走っていると車内の空気が悪くなるのと同様、電車でも内気循環のままとは行かない。そこで、適切に車内の空気が入れ替わる範囲で、一部を循環させている。


空気の流れは?

前述のように、空調装置や換気装置は床下に付くのが基本。では、そこを出入りする空気の流れはどうなっているか。

実は、床下に左右2本ずつのダクトが、前後を貫通する形で通っている。内側の2本が排気用、外側の2本が送風用だ。換気空調装置が外部から取り入れて、温度を調整した空気は、その外側2本のダクトに送り込まれる。そのダクトからは、窓と窓の間の間柱1本ごとに、上向きのダクトが枝分かれしている。パスカルの原理により、すべてのダクトには同じ圧力がかかり、均等に空気が上っていく。

700系やN700系だと分かりやすいが、間柱の上方、荷棚の直下に空気吹出口が付いている。床下のダクトから送られてきた空気は、最後はそこから吹き出す。実はその背後に、間柱ごとに立ち上がりダクトが隠れているのだ。N700Sも同じ構造だが、吹出口は突出しておらず、目立たないように隙間から吹き出す形に処理されている。

300系でも床下にダクトを2組通していたのは同じだが、送風は荷棚の下ではなく、天井裏までダクトを伸ばしていた。ところがそのせいで、夏場に「冷房の利きが悪い」といわれる事態になり、700系からダクトを短縮して荷棚直下から出すようにした経緯がある。

E2系1000番代、E5系/H5系、E7系/W7系では、独立した吹出口を設ける代わりに、荷棚の下にスリット状の吹出口を隠し持っている。E6系は処理が異なるが、吹出口が目立たないデザイン処理になっている。

では、空気が出ていくほうはどうかというと、腰掛の脚台の辺りに排気口が付いている。ただし、すべての腰掛とは限らず、飛び飛びに付いていることもある。この排気口の床下に排気ダクトが通っており、換気装置に通じている。

つまり、車内の空気の流れは「側方上部から出てきて、足元から出ていく」となる。そして、客室内の空気は6~8分で完全に入れ替わる。毎時8~10回程度、と読み替えてもよい。

例外もある

なお、空調装置を天井裏に組み込んでいる車両もある。それが500系とE3系。どちらもセパレート式の空調装置を使っていて、「室外機」に当たる部分は床下、「室内機」にあたる部分は天井裏にある。

この場合、ダクトは短くて済むから、吹出口は天井にある。また、外気も上部から供給する。一方、足元の排気口からつながる排気ダクトは床下にあるから、そこから天井裏の空調装置に再循環させるのは無理な相談。そこで0系と同様に空調と換気は別系統となっており、床下には空調室外機と排気装置が別々に付いている。

ちなみに、「つばさ」のE3系2000番代は、シャープの「プラズマクラスター」技術を使った空気清浄機能を備えている。これはCOVID-19対策で追加したわけではなく、新車時からである。

井上孝司

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