【インタビュー】3markets[ ]、虚無から生み出した『ニヒヒリズム』

【インタビュー】3markets[ ]、虚無から生み出した『ニヒヒリズム』

  • BARKS
  • 更新日:2021/01/12
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「たとえ思ってても言えないこと、きっと言わない方が誰にとってもいいこと」を歌詞にしてしまうバンド、3markets[ ]が1月6日に2ndフルアルバム『ニヒヒリズム』をリリースした。本作は、コロナ渦に翻弄された彼らが押し寄せた虚無感に屈することなく完成させた作品だ。

BARKS初登場となる今回は、収録曲すべての作詞作曲を手掛けたカザマタカフミ(Vo&G)にソロインタビューを実施した。「売れたい」という気持ちを抱えながらも、制作において「どうしてもひねくれてしまう」というカザマ。「売れる曲を書け」というメンバーからのオーダーを受ける一方で、自らのアイデンティティも残した本作には、彼の人間くささがたっぷり詰まっていた。

◆  ◆  ◆

■どうしてもひねくれてしまう

──“大型フェスに出れなかったら今年こそ解散する”という決意で2020年に臨んだと資料にあったり、カザマさんご自身『売れないバンドマン』というブログ本まで出されていますが、3markets[ ]ってそこまで追いつめられるほど……ぶっちゃけ売れてないんでしょうか?

カザマタカフミ:売れてないと思ってました。音楽だけで食べていけてないので。でも、今日こうして取材してもらえたり、さっきはテレビの収録もあったりして、“もしてかして売れてるのでは!?”と、最近ちょっとだけ思ってます(笑)。

──良かった! 最新アルバム『ニヒヒリズム』を聴かせていただいて、こんな良いアルバムを作ってるバンドが売れないなんて世の中の目は節穴すぎる!と憤ったので。

カザマタカフミ:ありがとうございます。でも、自分は世の中じゃなく、自分たちの作品が悪いから売れないんだと、ずっと信じてたんですよ。最近は“そんなことないよ”って言ってくれる自分もいますけど。

──でも、ブレてはいないですよね? 売れないのは自分たちの作品が悪いからだという認識があったとしても、じゃあ、変えようっていう発想があったとしたら、ここまで尖った作品は出来ないんじゃないかと。

カザマタカフミ:いや、メチャクチャブレてますよ! いつも自分の内面をバーン!と出してたんですけど、今回、ベースの子が「売れる曲を書け」って言ってきて。

──ええ!? 彼曰く“売れる曲”とは?

カザマタカフミ:若い子向けの、もっとポップでわかりやすい曲を書けって。何言ってるんだ、お前はプロデューサーか!?と思いつつ、売れたいならそういうことをやってみてもいいのかなって、自分のアイデンティティも残しつつ、例えば曲のリズムを見直したりとか、自分なりに挑戦してみました。

──そう言われると、例えば3曲目の「言えなき子」とか、このままドラマ主題歌でもいけるんじゃないか?というくらいキャッチーですけど……。

カザマタカフミ:それですよ、ベースがいいって言った曲! そう感じてもらえるってことは、じゃあ、あいつの言ってることは間違いじゃなかったんですね。

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▲カザマタカフミ(Vo&G)

──かもしれないですね。では、逆に自分を貫けた曲は?

カザマタカフミ:4曲目の「A子」は、メンバーみんなやりたくなかったんじゃないかな。だってコレ、自分が童貞だったときの恨み節を描きつつ、でも、初めての人って忘れられないなって言ってるだけの超パーソナルな曲ですからね! みんなメロがあるものが好きだったりするから、曲的にもやりたくなかったんじゃないかな。

──曲というよりポエトリーリーディングに近いですからね。でも、そのぶん抑えきれない感情が噴き出していて、心に響きました。サビの“できるなら返して童貞”とか、今までなら女性目線で歌われてきた内容で新しい男性像を感じましたし、「言えなき子」の“君の名前を半分くれよ”もそう。とても深い愛を感じました。

カザマタカフミ:ありがとうございます。

──とにかく“そこまでさらけ出す!?”と驚いてしまうくらい赤裸々なのがカザマさんの詞の魅力だと思うのですが、ただ、その率直すぎるところが“売れない”理由なのかもしれない……と思ったことも正直ありません?

カザマタカフミ:ああ、人が聞きたくなさそうなことを歌っているから……ってことですか? でも、だからって変えてしまうと、どんどんつまらなくなっていくので、そこは絶対曲げたくないですね。一応、歌詞が売りのバンドですし。

──なるほど。歌いたいことは変えず、サウンド面をより受け入れられやすいものにすることで“売れない”問題をクリアしたいと。

カザマタカフミ:まぁ、あとは顔ですね。整形さえすれば何とかなる! 要するに自分の努力が足りないんですよ。あとは手術費。

──それで「整形大賛成」なんて曲も入っているんですね。でも、この曲を聴いて“カザマさんって本当に優しい人だな”と感じたんですよ。大声出す人間を罵倒しつつ“僕はそばにいるんだから、そんなに大声出さなくていい”と歌いかけたり、“どうしようもねぇ”“幸せになりたい”と繰り返す人間のことを“嫌いじゃない ていうか好き”と言ってあげたり。ポエトリーで尖ってる中に優しさがチラ見えしてたまらない。

カザマタカフミ:いや、これはもう自分で自分を認めないと、誰も“好き”って言ってくれないんで! もうちょっと素直な言葉で書いたほうが売れる可能性はあるってわかってるんですけど……。

──リード曲の「愛の返金」からして“お金を返して”という強烈なワードが飛び出す、とんでもなく愛憎が渦巻く曲ですからね。

カザマタカフミ:俺、人を好きになるタイミングって、人生に3回か4回くらいしか無いと思うんですよ。だから、好きという気持ちを持つこと自体が本当に素晴らしいことで、その愛した人と別れても、好きだったという事実は忘れないっていうことを歌いたかったんです。まぁ、小難しいこと言う前に金返せよ!っていう私怨も交じってはいますけど。

──なんで交ぜちゃうんですか。そのままストレートに愛の素晴らしさを描けば、それこそ“売れる”曲になるかもしれないのに!

カザマタカフミ:やっぱり、そういう層に向けて書けないっていう自分の本質があるので。どうしてもひねくれてしまうというか……そこはしょうがない。

──“そういう層”って、いわゆる一般層ってことですよね。じゃあ、逆に一番ターゲットにしてる層、聴いてほしい層はどこ?

カザマタカフミ:自分は落ち込むことが多いんで、そういう人に聴いてほしいなって。聴いて“こういう人間もいるんだな”って楽になってもらえたら、一番有り難い。ま、全然落ち込まない元気いっぱいの人が聴いて“こういう人間がいるんだ”って知ってもらうのもいいですよね。それはそれで世の中のためになる。

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──ただ、傍から見ていると別に落ち込むような状況でもないのに、繊細がゆえに落ち込んでしまう人も多い気がするんですよ。例えば2曲目の「OBEYA」に、もうダメだと全部洗濯機にぶち込んだっていう描写がありますけど、私からしたら洗濯機を回している時点で全く“OBEYA(=汚部屋)”ではない。

カザマタカフミ:ははは!(笑)“ちゃんと掃除出来てんじゃん!”って? なるほど!

──要するにネガティブ思考だったり、自己評価が低いだけで、実は全然やれている。カザマさんの詞は、そういう人に刺さるのかなと。7曲目の「罰ゲーム?」にしても、誰もいない部屋に帰るだけの日々に葛藤を感じている曲ですが、同じ状況でも人によっては“自由気ままに暮らせて天国!”と感じるはず。

カザマタカフミ:いや、ホントにそうです。この曲でも割り箸がうまく割れなかったことに対して、1番では悲しんで2番では笑ってるんですよ。同じ状況でも、それをどう捉えるかは、その時々の自分の心次第。そういうことを描いてるんで、タイトルの最後に“?”が付いてるんです。

──ちなみにカザマさんはどちらですか? 一人でもOKなのか、誰かといたいのか。

カザマタカフミ:ちゃんと一人で生活して自立して精神も落ち着いたら、人といるべきだなって。そうすれば倍楽しいと思うんです。逆に不足を埋め合う形だと、やっぱり上手くいかないので、ちゃんと充実してから……って感じですね。

──いや、そこまで自立した思考があるのに、落ち込む必要なんて全く無い! だから一見ネガティブオーラの漂う曲が多いとはいえ、もっと自分自身を尊重して自分で自分を認めてあげていいというメッセージが、このアルバムの根底には流れている気がするんですよね。

カザマタカフミ:言われてみれば、なんか最近元気なんですよ! ちゃんと自分で自分を認められるようになってきたところがあって、そうしたいと考えていたわけではないけれど、こうやって曲になってみると“そうしよう”っていう意志があったんですね。このアルバム8月とかに録り終わってるんですけど、そう言われて今、ちょっと腑に落ちました。

◆インタビュー(2)へ

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■認めてほしかった

──8月に録り終わっていたということは、今回のコロナ禍が影響を及ぼしている曲も中にはあります?

カザマタカフミ:ラストの「¥1,000,000」ですかね。タイトルは持続化給付金から来ていて、自分も申請したんですよ。100万はもらってないですけど40万くらいもらって、生活がずいぶん楽になりました。

──絶望から始まりつつ、サビでは“寿司食って今日は眠れ”に帰結するあたり、人間らしくて愛おしい曲ですよね。

カザマタカフミ:怒りながら寿司食ってる人っていないじゃないですか。寿司食ってる瞬間だけは人って絶対幸せだから、とりあえず寿司食えと。食えば血糖値も上がって眠くなるし。

──言われてみれば。ちなみに曲頭に出てくるように、“いっそ殺して”となるほど追い詰められたことってあります?

カザマタカフミ:もう、ずっとソレしかなかったです。10月はホント死のうかなと思ってて、もう、何も考えられなかったんですよね。

──その絶望の源って何だったんでしょう?

カザマタカフミ:絶望の源は……求めているからだなと思います。幼少期、よく親に「出てけ!」って言われて飛び出すような家出少年だったから、親に認めてほしかった気持ちが自分の中にあったんですよね。そこから“みんなに認めてほしい”っていう想いが強くなって、それを求めてて。でも、足りてないと常に思っちゃうから、こうやって“売れたい”欲の強い感じになっちゃったんですけど……最近は自分の中の足りないものを、ちゃんと自分で埋められるようになってきた気はします。さっきも言った通り、自分で自分を認められるようになってきた。

──それはベストな解決方法じゃないですか。孤独を感じるのは独りだからじゃなく、自分自身が足りてないからとも言いますし。

カザマタカフミ:いや、わかります。例えば、テレビの収録があったから認められたんだとかって感じてると、これってまた求めてるだけになっちゃうんですよね。その思考から抜け出せたんで、ホントに今は人生が超楽しくて。もう、世界が素晴らしい! おかげで、このアルバムをどうやって勧めればいいのか、全くわからないんですけど(笑)。

──いったい何がキッカケで、そんなコペルニクス的転回を果たせたんですか?

カザマタカフミ:たぶん、今まで落ち込みすぎたからでしょうね。そこでいろいろ考えて、こんなに落ち込むなら勉強しようと本とかもメッチャ読んだら、世界が一変したんです。もう、違う世界線にいる感じで、今は他人から認められなくても平気かもしれない。この感覚は、初めから満たされていたら気づけなかったと思う。

──底まで落ちたからこそ、もう上がるしかなかったんでしょうね。

カザマタカフミ:ただ、それで保守的になるというか、つまんなくなるのはちょっと怖いですね。だから、ちゃんと尖ったまま面白い展開をしたい。とはいえ、いつまでこのメンタリティでいるのかも疑問なんで、半年後にインタビューを見返したら“は!?”みたいになってる可能性も全然ある。

──いやいや(笑)。でも、さっき言われていた“落ち込むことが多い層”がカザマさんと同じく“求めない”境地に達することができたら、それこそかなり楽になるのでは?

カザマタカフミ:そこは最近欲しいなと思っているところで、落ち込んだときに“こういうことあった”って書くんですけど、その解決策まではちゃんと書けてないから、もう一歩進んだ歌詞を書いていきたいなと。

──MVが先行公開された「たからくじ」とか、良くも悪くもフラットで、そういった前向きな空気は感じます。

カザマタカフミ:問いかける曲にしたいとは考えてました。人によっては、これを聴いて「明日から頑張ります」って言ってくれるんですけど、実は“明日から頑張らないって決める選択肢もあるんだよ”ってことを伝えたかった曲なんです。みんな頑張りすぎてるから、いわば“頑張らない勇気”ですね。まぁ、そこは受け取る人それぞれの解釈でいいんですけど。

──なるほど。“明日から”というワードで終わるとはいえ、その先は必ずしも前向きなものでなくてもいい。

カザマタカフミ:とはいえ、人間として“求める”ってことは大事だと思うんですよね。それが完全に無くなると、人でなくなってしまう。そう考えると“足りない”と“求める”って、やっぱり違うのかもしれないですね。満ち足りた上で、楽しみながら求めていけたら、人の生活としてはベストな気がする。

──十分足りているのに求める人もいれば、足りてなくても飄々と気にしない人もいますからね。

カザマタカフミ:これ言ったら“何言ってるんだ?”って呆れられるかもしれないですけど、“無い”から“有る”わけじゃないですか。“無い”からこそ“有る”っていうことに気付ける感覚……これ、伝わります?

──わかります、わかります。先ほどおっしゃっていた「初めから満たされていたら気づけなかった」感覚ですよね。そう考えると“足りない”もそんなに悲観することでもない気がするんですが、そこで不満や渇望を失ってしまうと、アーティストとしては良い曲が書けない説もありません?

カザマタカフミ:それ、自分もずーっと信じてきたんですけど、ずーっと足りなくて求めてるのに売れないんだったら、良い曲書けてないってことじゃないですか? だったら変わったほうがいい! それに、良い曲を書くために不幸せで居続けなければいけないんだとしたら、それは人間的に無理がある。不幸せになる努力なんておかしいんで。

──おっしゃる通りです。さて、アルバム発売から2日後の1月8日には恵比寿のLIQUIDROOMでレコ発ワンマンが行われますが、やはり有観客は楽しみ?

カザマタカフミ:人が前にいてくれたほうが、有り難いっていうのはありますね。配信は配信でみんなコメントを打ってくれるから、“あ、この曲聴くときこう思ってるんだ”って知れる良さはあるんですけど、ダイレクトに空気感を感じられないのは、やっぱりヴォーカルとしては寂しいなと。

(※編集部注:新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、レコ発ワンマンライブは無観客での無料配信ライブとして実施されました)

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──レコ発のタイトルが<一生夏休み>で、地方公演を経て5月27日の渋谷CLUB QUATTROで行われるファイナルには<来世も夏休み>と名付けられていますが、これは夏休みでいたいというカザマさんの願望なんでしょうか?

カザマタカフミ:いや、僕、人生は夏休みだなと思っているんですよ。もう、ずーっと休んでいるので。

──ええ! じゃあ『ニヒヒリズム』が爆発的に売れて、メチャメチャ忙しくなったらどうします?

カザマタカフミ:それは遊んでるだけなんで、仕事じゃない。僕にとってバンド活動はもちろん、バイトも含めて全ての仕事は遊びなんです。だから人生、超楽しいんですよ! 今は(笑)。

──では、仕事を遊びと捉えられる秘訣を教えていただけません? 世の大多数は仕事は辛いと感じているでしょうから。

カザマタカフミ:いや、だったら辞めればいいんじゃないですか? だって、僕みたいに適当に生きてる人が暮らせてるんだから、そんな無理して働かなくても幸せになることはできる。お金なんて無くてもなんとかなるし、生活のために最低限働くことが必要なら苦にならない仕事をすればいい。自分も今のバイト、全然苦に思ったことないんで。

──いや、潔い!

カザマタカフミ:ホント考え方次第なんですよね。例えば、今まではテレビとかに出たとしても、こんな自分に時間を割いてもらって申し訳ないという気持ちしかなかったんですよ。でも、これが一つの仕事として成り立ってみんな幸せになれると考えれば、今はホントに有り難いなと思えるんですよね。

──同じ状況でも自分の考え方一つで世界は変わる。まさに真理ですね。他に教えていただけること、伝えておきたいことってあります?

カザマタカフミ:……いや、無いかもしれない。すみません、満ち足りているので(笑)。この取材で第一興商に来ることができて、メチャメチャ嬉しかったんですよ! 俺、普段カラオケで曲作りしてて、リード曲の「愛の返金」もプリプロから全部カラオケで作ったんです。そうやって出来た曲が今度カラオケで流れるっていうんだから、どれだけ感動するかわかんない! もう、店の受付の人にバレるんじゃないかと、今からドキドキしてます。いつもマイクスタンドを持ち込んでるんで、“マイクスタンドの奴だ”っていう認識はされてるはずですから(笑)。

取材・文◎清水素子

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▲3markets[ ] /『ニヒヒリズム』

2nd Full Album『ニヒヒリズム』

2021年1月6日(水)発売
MIGE-00003 ¥2,700(税抜)
レーベル:miyatakegeinou
[収録曲]
1. 愛の返金
2. OBEYA
3. 言えなき子
4. A子
5. 君が太るべきたった一つの理由
6. 整形大賛成
7. 罰ゲーム?
8. サイゼ
9. たからくじ
10. ¥1,000,000

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◆3markets[ ] オフィシャルサイト
◆3markets[ ] カラオケ楽曲一覧

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