金星はなぜ地球のような環境ではないのか? NASAが2機の探査機で調査へ

金星はなぜ地球のような環境ではないのか? NASAが2機の探査機で調査へ

  • マイナビニュース
  • 更新日:2021/06/10
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米国航空宇宙局(NASA)は2021年6月3日、金星に2つの探査ミッション「ダヴィンチ・プラス(DAVINCI+)」と「ヴェリタス(VERITAS)」を送り込むと発表した。

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それぞれの打ち上げは2028年から2030年の間の予定。NASAが金星に探査機を送り込むのは約30年ぶりで、なぜ金星は、地球の双子星と呼ばれながら、地獄のような過酷な環境になったのかという謎の解明に挑む。

NASAによる約30年ぶりの金星探査

金星は太陽系の第2惑星で、地球のすぐ内側を回っている。直径は地球の約95%、質量は地球の約82%と、大きさ・重さともに地球とよく似ており、「地球の双子星」とも呼ばれる。

しかし、その環境は地球とはまったく異なっている。たとえば金星には、二酸化炭素を主成分とする非常に分厚い大気があり、その温室効果によって、金星の表面の温度は昼も夜も最高470℃ときわめて高い。また、大気圧は地球の約90倍もあり、さらに大気中には分厚い硫酸の雲があり、そこから硫酸の雨も降るなど、まるで地獄のような環境にある。

もっとも科学者たちは、金星は最初からそのような環境だったわけではなく、もともとは地球と似たような天体として生まれ、そして地球と同じように水の海もあり、数十億年にわたって生命が存在できる可能性のある環境だったのではないかと考えている。しかし、地球だけが生命が生きられる環境になった一方、金星は地獄のような環境へと変わってしまった理由については謎に包まれている。

また、2020年9月には、金星の大気中に「ホスフィン」と呼ばれる、生物活動によって生成されるガスが存在することを示す研究成果が発表。その真偽をめぐっては議論が続いているが、金星を探査する意義が高まっている。

そこでNASAは、こうした謎の解明のため、金星に「ダヴィンチ・プラス」と「ヴェリタス」という2機の探査機を送り込むことを決めた。

この2機は、比較的小規模で低コストなミッションをシリーズ化して行うことを目的としたNASAの宇宙科学プログラム「ディスカヴァリー計画」の下で行われる。NASAは開発費として、それぞれのミッションに約5億ドルを与え、設計、開発が行われる。

それぞれのミッションは、2028年から2030年の間に打ち上げられる予定。NASAが金星に探査機を送り込むのは、1989年に打ち上げた「マゼラン(Magellan)」以来で、じつに約30年ぶりとなる。

選ばれた2つのミッション
○ダヴィンチ・プラス

ダヴィンチ・プラス(DAVINCI+、Deep Atmosphere Venus Investigation of Noble gases, Chemistry, and Imaging)は、金星のまわりを周回するオービターと、金星の大気に突入する球形の探査機からなるミッションで、金星の大気を観測することを目的としている。

オービターは、雲の動きを追跡するとともに、金星の大気の組成を測定して、大気がどのように形成され、進化したかを調べるとともに、金星に海があったかどうかも調べる。また、分厚い大気を通して宇宙に逃げる金星表面からの熱放射を観測することで、地表の組成も測定する。

球形の探査機は金星の厚い大気の中に突入し、パラシュートで降下しながら、大気の化学的性質、温度、圧力、風などを測定。金星の大気が地球と比べて高い温室効果をもつに至ったかを解明することを目指す。また、テキサス州の2倍の大きさをもつ古代の高地「アルファ・レジオ(Alpha Regio)」に向かって降下しながら高解像度の画像を撮影し、その地形や地質を調べる。

また、技術実証として、CUVIS(Compact Ultraviolet to Visible Imaging Spectrometer)という、紫外線を高解像度で観測できる機器も搭載。金星の大気中に存在する未知の紫外線吸収現象の性質を明らかにするために使用される。

ダヴィンチ・プラスの成果は、金星そのものだけでなく、太陽系の他の惑星、さらには太陽系外惑星における地球型惑星の形成の理解を推し進める可能性も秘めているという。

計画はNASAゴダード宇宙飛行センターが主導する。なお、同計画は前回のディスカヴァリー計画でも最終候補に残るも、落選。今回は、名前の“and Imaging Plus”にも現れているように、新たにマッピング・カメラを追加してのリベンジとなった。

○ヴェリタス

ヴェリタス(VERITAS、Venus Emissivity, Radio Science, InSAR, Topography, and Spectroscopy)は、金星周回軌道から合成開口レーダー(SAR)を使い、金星全体の地形の三次元地図を作成するとともに、金星でもプレート・テクトニクスが起きているのか、そして火山活動があるのかといったことを調べる。

また、金星の表面から放射される赤外線を利用し、地質や、活火山が大気中に水蒸気を放出しているかどうかも調べる。

これにより、金星の地質学的な歴史を明らかにし、地球とは異なる発展を遂げた理由を解明することを目指している。

探査機にはまた、JPLが開発した「深宇宙原子時計2(Deep Space Atomic Clock-2)」という機器も搭載。超高精度の時計によって、将来的に宇宙機の自律的な運用を可能にしたり、電波による科学的観測を強化したりすることを目指した技術実証を行う。

計画はNASAジェット推進研究所(JPL)が主導する。また、ドイツ航空宇宙センター(DLR)は赤外線マッパーを提供し、イタリア宇宙庁(ASI)とフランス国立宇宙研究センター(CNES)はレーダーなどに協力するなど、国際共同ミッションでもある。ダヴィンチ・プラスと同じく、同計画も前回のディスカヴァリー計画で落選した経緯をもつ。

両探査機がほぼ同時期に打ち上げられることで、それぞれが相互補完的な役割を果たし、金星の地下から地表、大気、地場に至るまで、網羅的に調べることができると期待されている。また、欧州が2014年まで運用していた金星探査機「ヴィーナス・エクスプレス」や、日本の探査機「あかつき」、NASAが今年末に打ち上げる予定の「ジェイムズ・ウェブ宇宙望遠鏡」など、他の科学プログラムとの相乗効果も期待できるとしている。

NASAのトーマス・ザブーケン(Thomas Zurbuchen)科学局長は「NASAが30年以上訪れていない金星を集中的に探査することで、惑星科学プログラムが活性化されます。金星探査の新たな10年が始まろうとしています。NASAがこれまでつちかってきた最先端の技術を使い、地球に似た惑星といわれながらも、なぜ金星はこれほど灼熱の環境になったのかを理解することができるでしょう、そして、私たちの目標はさらに大きく、太陽系内における惑星の進化や生命の居住可能性を理解するだけでなく、太陽系外惑星の研究にもつながるのです」と語る。

また、ディスカヴァリー計画の科学者を務めるトム・ワグナー(Tom Wagner)氏は「金星について、私たちは驚くほど何も知りません。しかし、ダヴィンチ・プラスとヴェリタスから得られる研究成果を組み合わせることで、金星の雲や地表の火山、そして核に至るまで、多くのことを知ることができるでしょう。それはまるで、金星という惑星を再発見するようなものになるでしょう」と語っている。

○参考文献

・NASA Selects 2 Missions to Study ‘Lost Habitable’ World of Venus | NASA
・NASA to Explore Fate of Earth’s Mysterious Twin with Goddard DAVINCI+ | NASA
・VERITAS: Exploring the Deep Truths of Venus

鳥嶋真也 とりしましんや

著者プロフィール 宇宙開発評論家、宇宙開発史家。宇宙作家クラブ会員。 宇宙開発や天文学における最新ニュースから歴史まで、宇宙にまつわる様々な物事を対象に、取材や研究、記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 この著者の記事一覧はこちら

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