日経平均はこのまま上がり続けるのか? プロが教える「年末相場」のシナリオ

日経平均はこのまま上がり続けるのか? プロが教える「年末相場」のシナリオ

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/11/22
No image

相場に影響を与えるイベントを総ざらい

米国大統領選挙が終わり、世界一の経済大国に関する政治の方向性が決着した。選挙に関連する不透明要因が解消したことにより、日経平均株価は11月12日にかけて8連騰を記録した。

年末にかけての株式市場を見る上で、(1)定期的なサイクルのイベントと、(2)その他のイベントについて、整理してみよう。

No image

photo by iStock

(1)定期的なイベントとしては3つ、1.企業の決算発表、2.(主要国の)金融政策発表、3.月末月初の主要経済統計、である。それぞれ、業績拡大、金利低下、景気拡大は一般的に株価の上昇材料となり、逆は下落材料となる。

1.企業の決算発表については、2020年7-9月期の決算が10月半ばから11月半ばにかけて発表されるなど、サイクルとして四半期が終了した翌月の中旬からが山場となる。よって次に材料視されるのは来年1月以降であろう。

2.金融政策については、12月中旬に、日米欧で政策会合がある。ユーロ圏ではECB(欧州中央銀行)が12月10日に金融政策を発表する。

市場では金融緩和の実施が予想されており、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)を通じた国債を中心とする債券購入を、現行の1兆3,500億ユーロから増額した上で、2021年6月までの利用期間を延長することが主軸になると予想されている。

米国のFRB(米連邦準備理事会)は、これまで金融政策の指針である「フォワード・ガイダンス」や経済見通しを通じて、2023年までは利上げしないことを示唆してきた。

一方、パウエルFRB議長は11月5日のFOMC(米連邦公開市場委員会)後の記者会見で、「景気支援へ、資産購入策を再検証する」と言及しており、近い将来の金融緩和に含みを持たせた。米国では新型コロナウイルスの感染拡大が加速しており、少なくとも金融緩和姿勢を続ける必要があろう。次回、金融政策の判断を行うFOMCは12月15-16日にある。

日本銀行の金融政策決定会合は12月17-18日に開催される。仮に米国よりも金融政策がタカ派的と市場で受け止められると、為替市場で円高が進むリスクがある。

その場合、輸出企業の業績悪化懸念につながるため、日本銀行は円高を誘発しないよう、金融緩和姿勢を強調し続ける必要があろう。少なくとも2.の材料は、主要国で政策金利を軸に、金利低下圧力が続くとみられる。

下落の材料は見当たらない

3.月末月初の主要経済統計で重要なものは、11月末の日本の鉱工業生産指数と、12月月初の米国における雇用統計やISM製造業指数などだろう。日本の製造業の生産は中国の景気再拡大に伴い、輸出を中心に回復が続いている。

米国の経済統計は、今年の春を大底にしたV字回復局面から、回復スピードは減速してきている。また、足元で新型コロナウイルスの感染が拡大する中、様々な景気対策が期限切れとなっている。これまで比較的に良好な経済指標の発表が続いていたが、景気の鈍化を示す指標が出てくると、株式市場で嫌気される可能性がある。

ただし、周辺の指標を確認すると、米国の景気回復が途切れる可能性は小さいと判断される。

例えば、アジアから米国に向けたコンテナ輸送量は10月にかけても増勢が続いており、品目としては、巣ごもり生活で家具や家電などの需要が拡大しているようだ。年末商戦に向けた在庫積み増しも進んでいるという。

いずれにしても、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大の中で年末を迎える株式市場は、景気への不安を抱えながらも経済指標の改善が進んでおり、主要国の中央銀行による金融緩和姿勢が景気を下支えするという構図までは予見できていると言えるだろう。基本観として、株価の下落局面の始まりを示唆するものは見当たらない。

次に、定期的ではない、(2)その他のイベントを確認しよう。

注目すべきは政治動向か

国内外では、様々な政治イベントがあろうが、株式市場にとって重要な視点は「企業業績に影響を与え得る材料」かどうかである。地政学的リスクについては紛争や衝突が突然生じる可能性があるものの、事前に予想することはできない。

ただし、日米欧などの「主要国間の国際秩序」を壊す、あるいは原油価格の急騰につながるようなものでない限り、検討対象から外して良いだろう。

原油価格に関係するものとしては、11月30日~12月1日にかけて、OPEC(石油輸出国機構)加盟国や関係国の会合が開かれる。現在、世界のエネルギー需要が低下する中で、OPECに加盟する産油国と、ロシアなどOPEC非加盟国を含む「OPECプラス」は、日量770万バレルの減産を行っている。

この減産量は世界の生産量の8%、日本の消費量の約2倍に当たり、言い換えるとその分増産余地がある。また、原油価格が上がれば、米国のシェールオイルの増産も見込まれる。余程のことが無い限り、原油価格の上昇は起きにくいだろう。

そうすると、主要国の政治動向がポイントとなろう。日本は12月5日まで臨時国会が開かれており、緊急性の高い新型コロナウイルスのワクチン接種関連法案などが審議される予定である。

No image

photo by gettyimages

その後、年末にかけて来年度の税制改正法案や予算案が審議される。2020年度第3次補正予算は、雇用調整助成金の特例措置やGoToキャンペーンの延長などが検討されるようだが、これらの法案は2021年入り後の1月に始まる通常国会で成立する見通しだ。
(注 21日、政府はGoToトラベル予約一時停止などを発表した)

現在、政府には予算として7兆円近くの予備費が残っている。財政支出額が増える程、景気にプラスとみられるが、どのような事業に実際いつから投入されるかは、補正予算の中身を見る必要があろう。

規模だけ増えてもすぐに使われないのであれば、即時性は落ちるが、補正予算が組まれること自体、景気を下支えするという点では株式市場のプラス材料となろう。

米国上院の選挙結果が決定的に重要

他方、2021年10月の衆議院議員の任期満了を前に、総選挙実施の思惑もあろうが、少なくとも菅政権が総選挙に打って出るには、政権の成果や選挙の名目が必要であろう。

2020年末までに成長戦略の中間取りまとめなどが行われることや、来年度の予算案の閣議決定は年末までかかることを踏まえれば、総選挙は2021年入り後となる可能性が高い。

欧州では2020年末までに英国のEU離脱に決着をつける必要がある。ただし、2016年の英国国民投票から4年超が経過している。合意なき離脱になる場合、英国周辺では多少の影響はあるだろうが、企業や国際社会は活動拠点の移転など対応を講じており、現時点でショック対応ができていないということはさすがに無いだろう。

そうなると、2020年年内の「定期的ではない(2)その他のイベント」で国際経済や国内外の株式市場で最も注目されるのは、世界一の経済規模を誇り、国際経済への影響の大きい、米国の政治情勢といえよう。ポイントは景気対策と政権移行だ。

世界で最も多くの感染者を出している米国は、これまで従業員の給与や失業保険など多岐にわたり3.2兆ドル(約340兆円)にも上る経済対策を実施してきたが、夏場以降次々に期限切れを迎えている。

No image

photo by gettyimages

大統領・議会選挙を前に、民主党・共和党双方がお互い譲らず、経済対策は合意されずにきた。規模の大きな経済対策の合意が発表されれば、株式市場の追い風になるだろう。その際、鍵を握るのは上院の議会情勢だ。

先の大統領選挙と同時に行われた議会選挙では、下院は民主党が過半数を握ったものの、上院は全100議席中、共和党が50議席、民主党が48議席を確保し、残る南部ジョージア州の2議席は2021年1月5日に行われる決選投票に持ち越された。

共和党、民主党両党が50議席で同数になると、上院議長を務めることになる民主党の副大統領が1票投じる権利を持つことになる。その場合、民主党が大統領、上院、下院の3つで優位に政権運営を行うことができる、いわゆる「トリプル・ブルー」になる。共和党は是が非でも決選投票の2議席を落とすことはできない。

そのため、ある意味「選挙は終わっていない」状態にある。年明けまで、民主党・共和党の両党合意の下における景気対策は決定されない可能性がある。現時点で、ジョージア州の決選投票の2議席は、共和党が優勢との世論調査が多い。

米国のハイテク株はどうなる?

また、2021年1月20日正午までは現職のトランプ大統領の任期となる。トランプ大統領は敗北宣言を行っていない。共和党自体、大統領選挙が直後に明確に決着がついているのであれば、ジョージア州の決選投票に向けて選挙態勢を仕切りなおすことができるが、決選投票日が近づくほど民主党に有利な決定はしづらくなる。

No image

photo by gettyimages

そのため、バイデン次期大統領への政権移行がスムーズに行われない可能性がある。バイデン次期大統領は、政権移行チームを組織し、人事に関する情報も徐々に明らかになるであろう。最終的に閣僚人事は上院の承認を得る必要がある。バイデン次期大統領は民主党内で一定の勢力を持つリベラル派に配慮する必要がある。

彼(彼女)らは、富裕層や大企業への課税強化や金融規制の強化、データを独占するテクノロジー企業への規制強化を主張し、民主党内で大統領候補者を選定する予備選挙で、バイデン候補(当時)に対して一定の得票を得ていた。

極端な政策を主張する人物が閣僚として候補に挙がった場合、上院で共和党の勢力が優勢であれば、承認過程でもめる可能性がある。そのため、上院の議会情勢が不透明な現状で、問題になりそうな人事は選択されないかもしれない。

一方で、注意が必要なのは、このように米国で政権移行がスムーズに行われない中で、「主要国間の国際秩序」の大勢を担う米国の意思決定にチャレンジするような動きが生じることだ。

例えばミサイル実験や民主主義を抑圧する行動に出る国や地域があるかもしれない。仮にそのような事態が起きると、市場が国際政治の不透明さを懸念して株価の変動が大きくなる可能性があろう。

ただし、株価の最終的な決定要素は企業業績であるから、そのイベントが通商摩擦やビジネス活動の抑制にならない限り、短期的な振れにとどまるとみられる。

全てを踏まえても、株価には追い風か

最後に、株価の根幹となる企業業績についてみてみよう。

7-9月期の決算発表が概ね一巡し、企業業績の上方修正が相次いでいる。下図は代表的な約300社の日本企業を対象としたラッセル野村Large Capベースにおいて、業績修正を行った企業のうち、上方修正した企業の割合から下方修正した企業の割合を引いたものである。つまり、ゼロを超えていると上方修正が優位であることを示している。

今年2月以降、新型コロナウイルスの感染拡大により下方修正が優位であったものが、ようやく上方修正優位に転換しつつある。基本的に、株価には追い風の局面である。

世界の企業は新型コロナウイルスの感染拡大という大きな試練の中で、企業業績の回復を目指し、あるいはその問題をチャンスと見て成長に向けたビジネス活動を展開するなど、柔軟に対応している。

No image

拡大画像表示

(注)2021.3期の業績、2022.3期の業績に関するアナリストの業績修正に関する指標。3の倍数月の月初以降、その四半期が終わるまでの期間中のアナリストの(上方修正件数―下方修正件数)/(修正件数の合計)の比率であり、分母の修正件数の合計が少ない3の倍数月の月初の10日間は除いている。(出所)野村證券

大統領選挙が終わり、直後の株価ラリーは一巡した。その後、主要国では金融緩和による下支えがある中で、景気回復や企業業績が回復を続けていることから、株価の趨勢は上昇傾向にある。

一方で、未だ政権移行を巡って不透明な材料は残っている。そのような材料が浮上して株価が調整する局面があったとしても、来年以降に響く長期的な問題でなければ、良い投資タイミングとして判断されるのではないだろうか。

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加