2020年の米大統領選挙においてドナルド・トランプ前大統領陣営が委託した報告書は、その結果に影響を与える広範な選挙不正の証拠がないとワシントンポストは報じた。これはトランプ陣営は、自分たちが推し進めている主張が虚偽であることを知っていたということであり、司法省がトランプに対して行っている調査の助けになる可能性がある。
バークレー・リサーチ・グループ(Berkeley Research Group)がトランプ陣営の依頼で実施した「プロジェクト2020」レポートでは「主要5州の最終得票数が不正であると信じる理由はない」とし、トランプ陣営の主張に反証したと報告書のコピーを元にワシントンポストは報じた。
選挙結果を変えるために死者が投票したり、2回投票したりするケースが何千件もあったというトランプ陣営の主張は反証され、報告書は死者が投票したケースはジョージア州で25件以下、ネバダ州で最大20件であることを明らかにしている。
また、広範な不正を示唆するような老人ホームでのいわゆる「票狩り」、偽の有権者の投票など陰謀論に基づくテストを行い、トランプ陣営が主張した郵便投票による広範な不正も否定された。
この報告書は公開されず、トランプ陣営はその結果を葬り去った。ワシントンポストによると、この調査結果がトランプ顧問の「不満の種」となり、2020年12月にトランプも同席したバークレーのチームとの会議は「緊張を増した」という。
トランプは、報告書によって否定された不正選挙の主張を続けた。ワシントンポストによると、報告書が否定していた「5000人近い(死者)」が投票したとトランプが示唆したジョージア州長官ブラッド・ラフェンスパーガー(共和党)との通話は、報告書が出た1日後の2021年1月に行われた。
ワシントンポストによると、1月6日の暴動と選挙を覆そうとするトランプを調査している司法省の調査官は、報告書のコピーを入手している。この調査で召喚された人物はワシントンポストに、調査官は「不正の主張を反証する、あるいは立証するすべての証拠」を求めており、トランプとその仲間が1月6日までの数日間で選挙不正について何を聞かされていたかに焦点を当てていると話した。
司法省が1月6日とトランプの選挙後の取り組みについてどの程度調査を進めているのか、また、告発があるとすればいつなのかはまだ不明だ。下院特別委員会は、トランプに対する刑事告発の可能性を公式手続きの妨害や詐欺の共謀などいくつか司法省に照会したが、司法省は最終的にどのような告発をすることも、告発しないことを決めることもできる。
トランプ陣営が、広範な選挙不正がなかったことを示すデータを委託していた証拠は、トランプが、自分が行っている不正の主張が虚偽であることを知っていながら、1月6日に議会が票数を認定するのを止めようとするなどしてとにかく主張を推し進めたというさらなる証拠として捜査当局にとって有益となりうる。
ワシントンポストによると、トランプ陣営はバークレーに報告書を依頼したこと自体を隠そうとしたようだ。報告書は正式にトランプ関連の法律事務所に依頼され、バークレーの子会社であるEast Bay Advisory(イースト・ベイ・アドバイザリー)が実施したものである。しかし「特権的で機密性の高い」報告書には、クライアントがトランプ陣営であることが明記されている。
トランプとその陣営は、結果を覆す正当な理由として、2020年の選挙に広範な不正があったと繰り返し主張したが、裁判所は結果を争う数十の訴訟を破棄し、州当局に圧力をかけて結果を変更させる取り組みも失敗に終わった。バークレーの報告書は、選挙後に発表された、広範な不正行為がなかったとし、ジョー・バイデン大統領の勝利を肯定する他の多くの監査や分析に沿ったものである。また、下院特別委員会の調査によると、トランプは側近や家族から自分の主張を裏づける証拠がないと繰り返し言われていたことが判明しており、トランプが主張していた不正行為が虚偽であることを知っていたことを示唆する証拠が増えている。
CNN/SSRSの新しい世論調査によると、不正選挙を証明する証拠があろうとなかろうと、多くの共和党員がとにかく選挙が盗まれたと主張するのを止めることはできないことがわかった。世論調査によると、共和党員の63%がバイデンが正規に当選していないと考えているが、その中でそれを証明する「確かな証拠」があると考えるのは52%に過ぎず、48%は「疑惑のみ」と考えている。
証拠があると考える共和党員の割合は選挙後の2年間で急減しているが、トランプが正当に勝利したと考える割合はそれほど減っておらず、多くの共和党員が不正選挙の証拠がないことを認識しているが、それでも信じ続けていることがわかる。