中央線「昭和グルメ」を巡る 第201回 駅から近い激シブ中華「東海楼」(阿佐ヶ谷)

中央線「昭和グルメ」を巡る 第201回 駅から近い激シブ中華「東海楼」(阿佐ヶ谷)

  • マイナビニュース
  • 更新日:2023/09/19
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いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。

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今回は、阿佐ヶ谷の中華料理店「東海楼」をご紹介。

○600円で食べられる定食がユニークで楽しい

阿佐ヶ谷駅北口を出たら、三菱UFJ銀行脇から斜め右に入る「新進会商店街」へ。以前ご紹介した喫茶店「gion」や和菓子屋さんの「うさぎや」を通り過ぎ、さらに進むと左側に、レトロな茶色いレンガが印象的な建物が現れます。レンガの一部に赤いガムテープが貼られているのは、おそらく破損した箇所を覆い隠すためでしょう。シブいぜ。

左側に目をやれば、シャッターの柱は立ったまま。少し前は右側に金魚が泳ぐ大きな水槽もあったのですけれど、いつの間にかなくなっちゃいましたね。しかしまぁそんなわけでいろいろ激シブなのが、駅から数分という好立地にありながら、華やかさに背を向けるかのように独自路線を貫く「東海楼」という中華屋さんです。

ここには数年前、友人と一緒にお邪魔したことがあります。そのときは夕方だったこともあって、ビールを軽く1杯、いや2杯、いや3杯……つまりはたくさん飲んだわけですね。で、餃子などの一品料理をいくつか頼んだはずなのですけれど、そんな状態だったから詳しいことまで覚えていなくてですね。そのため、次はお昼に伺って、改めてラーメンなどをいただきたいものだと思っていたのです。

そして先日、図書館帰りに通りかかったらちょうど開店直後。これはお昼をいただくにはいいタイミングだなと思い、オレンジ色をした半透明のドアを引いたのでした。

その際に気づいたんですけど、ドアのちょうど目の高さあたりには「定食」と書かれた張り紙が貼られています。見れば600円の定食が5種類と、800円のローストンカツ定食があるようで、「ごはん、みそ汁、つけもの、目玉焼き付き」だとか。へー、そういうものもあったのか。ラーメンにしようかと思ってたけど、定食も気になっちゃいますね。

そこで右側にあるカウンターの一番手前の席に座ってすぐ、向かいの厨房からお冷を差し出してくださったお母さんに「しょうが焼肉定食をください」と伝えたのでした。

店内のスペースはゆったりとしていて、左側には4人がけのテーブル席が2卓。

突き当たりには、居住スペースにつながっているのであろう大きなドアが見えます。一段上がったところにあるそのドアには2枚のガラスが入っていて、すぐ下には四角い枠もついているので、なんとなくロボットの顔みたいに見えますねえ(発想が幼稚だ)。

その右上のテレビにはお昼のニュースが映し出されており、お客さんはカウンターにひとりだけ。11時半過ぎだったので、これから忙しくなってくるのかな? などと思っていたら新しいお客さんが2人入ってきたのですけれど、そのひとりからなにやら機械音が。すぐにスイッチを切られたようなので気づいたのですが、なるほど、空冷ファンのついた作業着を着ていらっしゃったのね。

つまり工事関係のお仕事をされているのでしょうが、そういう人が入ってくるお店って信頼できるんだぞ。個人的にはそう思っているぞ。

やがて登場したしょうが焼肉定食を目にしたとき、そんな自分の予想が間違っていなかったことを実感しました。それどころか、これは予想以上かも。

まず、ドレッシングのかかったキャベツが、楕円形の白いお皿の中央にレイアウトされているというスタイルが変わってますよね。しかも、その右側のしょうが焼きには、たっぷりと胡麻がかかっています。これまた珍しいパターンだけど、おいしいに決まってます。食べる前からもう決定です。

左側、ナポリタンらしきスパゲティのソテーの上には、しっかり焼かれた目玉焼き。半熟とかではなく、固めに焼かれたやつ。きっと、昔からこのスタイルなのでしょうね。

そして、白いお皿に盛りつけられたごはん、わかめと豆腐のみそ汁、お新香というラインナップ。

しょうが焼きは胡麻の風味がほどよいアクセントになっており、味は濃いめ。だから、ごはんとの相性が抜群ですね。なお、しょうが焼きのタレはドレッシングのかかったキャベツの千切り下部にも侵食しているのですけれど、それがまた不思議とごはんに合っちゃうから不思議。

それらにくらべればやや薄味のオールドスクールな目玉焼きも、ちょうどいい箸休めになります。しかもね、驚かされたのはスパゲティのソテーですよ。上述のとおりナポリタンだと信じて疑わなかったのですが、食べてみればほのかにカレーの風味がするのです。これは予想外だし、やっぱりおかずになっちゃうぞ。

いやー、食べているだけでいちいち楽しい定食である。ぶっちゃけ、これで600円とはかなりお安いのではないでしょうか? 仮にもう少し高かったとしても、不満は感じないと思うなー。

こうなると、他にもいろいろ食べてみたくなっちゃいますね。定食でいえばローストンカツとか、あとはラーメンとかチャーハンとかさ。ここは、定期的に通う必要がある隠れた名店かもしれません。

●東海楼
住所: 東京都杉並区阿佐谷北1-4-2
営業時間: 11:30~15:00、17:00~21:00
定休日: 火、水

印南敦史 作家、書評家。1962年東京生まれ。音楽ライター、音楽雑誌編集長を経て独立。現在は書評家として月間50本以上の書評を執筆。ベストセラー『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社、のちPHP研究所より文庫化)を筆頭に、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『読書する家族のつくりかた 親子で本好きになる25のゲームメソッド』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)、『読書に学んだライフハック――「仕事」「生活」「心」人生の質を高める25の習慣』(サンガ)、『それはきっと必要ない: 年間500本書評を書く人の「捨てる」技術』(誠文堂新光社)、『音楽の記憶 僕をつくったポップ・ミュージックの話』(自由国民社)、『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)ほか著書多数。最新刊は『先延ばしをなくす朝の習慣』(秀和システム)。 この著者の記事一覧はこちら

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