前年女王シフィオンテク敗れる。大会連覇が困難な理由とは

前年女王シフィオンテク敗れる。大会連覇が困難な理由とは

  • TENNIS DAILY
  • 更新日:2021/06/10
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大会第1週を完璧に乗り切ったことで、前年女王イガ・シフィオンテク(ポーランド)が優勝争いの先頭に立ったと見ていた。ベスト8に残った選手で第8シードは最も高いシードだ。前哨戦のローマを制し、4回戦の時点でマッチ10連勝。今大会では1セットも失っていない。落としたゲーム数計20も8強で最少だった。

ただ、第17シードのマリア・サカーリ(ギリシャ)は難しい相手と思われた。フィジカルに恵まれ、テクニックも多彩で攻守に隙がない。今季はWTA1000のマイアミで準決勝に進出、準々決勝では大坂なおみを破っている。今大会でも4回戦で第5シードのソフィア・ケニン(アメリカ)を6-1、6-3、67分で圧倒するなど勢いがあった。

サカーリは準々決勝でも躍動した。立ち上がりこそもたついたが、その後はラリーを支配する場面が目立った。ウィナーは26本と、強打を誇るシフィオンテクの17本を大きく上回った。エースとサービスウィナーで8ポイントを稼ぐなどサーブも好調だった。

フォアはシフィオンテクの大きな武器だが、サカーリは、あえてフォア側を中心に配球した。フォアの打ち合いでシフィオンテクは、プレースメントのうまいサカーリのダウン・ザ・ラインを警戒したはずだ。しかし、サカーリは執拗にフォアをつき、読みの外れたシフィオンテクの出足が遅れた。

テレビ解説の伊達公子さんが指摘したように「シフィオンテクに回り込みのフォアハンドを打たせなかった」こともサカーリの勝因だろう。バックハンドを狙えば、少しでも甘くなったらフォアに回り込まれる。この相手の得意パターンを封じるためにも執拗にフォア側に集め、また、そのショットの質が高かった。

第2セットに右足付け根の治療を受けたシフィオンテクは動きも悪く、サカーリがストレートで勝ってベスト4に進んだ。

記者会見でサカーリは戦術について聞かれ、「言いませんよ(笑)。私が何をしていたかなんて。どのプレーヤーもゲームプランを実行するためのやり方を持っています。私には、クレーコートでは重いフォアハンド、良いフォアハンドがあります」と煙に巻いた。

一方のシフィオンテクは相手の戦術選択を褒めた。

「マリアは私のフォアハンドをうまく攻めてきました。このフォアが今日はうまくいっていなかったんです。彼女はそれに気づいた。いい戦術を選択したと思います」

戦術について語らなかったサカーリだが、コーチのトム・ヒルの貢献について聞かれると印象的な答えを返してきた。

「彼は選手の分析に夢中になります。私たちは試合前日に対戦相手のビデオを見るようにしていますが、これは私にとって有益です。実はマイアミで始めたんです。彼はこういうことが好きだし、うまくいっています。彼はとても良い目を持っていて、いい戦術を見つけるんです」

全仏で女子の大会連覇は2007年のジュスティーヌ・エナン(ベルギー)から途絶えている。シフィオンテクもまた、連覇の夢をかなえられなかった。ノーシードから優勝した昨年と前年女王として臨んだ今大会の違いについて、彼女はこう話している。

「比べるのは難しいです。すべてが違うので、その質問はよくわかりません。今年はより多くのプレッシャーがありましたが、その中でのベスト8はいい結果だと思います。私は安定感を示すことができました。今日よりいいプレーができることはわかっています。でも、そういう日もありますよね。最も重要なのは、同じことを繰り返さないために、これを教訓にすることです」

挑戦者から挑戦を受ける立場へ。180度の転回は連覇を困難にする一つの要因だ。

今大会ではベスト8のうち6人までが四大大会初の準々決勝進出だった。これは1968年のオープン化(プロ解禁)以降で最多だ。8人のうち上位16シードに入っているのは第8シードのシフィオンテクただ一人で、ノーシードの選手も2人いた。

フランス選手権から数えて114回の歴史で、上位10シードまでに入っていない選手の優勝はわずか4回だが、そのうち2回が過去4年間に集中する。17年のエレナ・オスタペンコと20年のシフィオンテクだ。

シフィオンテクの敗退で、今大会も上位10位シード以外の選手が優勝することになる。史上5度目の珍事というわけだ。だれが勝ってもおかしくない時代を象徴する記録だ。

選手たちの力が拮抗する今、サカーリ陣営のように映像資料やデータを活用することが注目されている。映像での分析は今や常識だ。四大大会に出ているレベルなら大抵の選手の映像が手に入る。上位選手には周囲のマークも特に厳しく、映像やデータで研究し尽くされているはずだ。新しい選手が伸びてくれば、ただちに分析され、対策を立てられる。シフィオンテクも昨年の全仏初優勝からすべての陣営の研究対象となっただろう。

女子テニスではしばらく前からランキングの変動が激しく、番狂わせも多い。もちろん、実力差のない選手たちが激しく競い合っているからなのだが、データの活用が進んでいることもまた勢力拮抗の一因と言えるのではないか。

(秋山英宏)

※写真は「全仏オープン」前年女王のシフィオンテク
(Photo by Shaun Botterill/Getty Images)

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