野生動物が拷問を受ける動画が数百億回もソーシャルメディア上で再生されている

野生動物が拷問を受ける動画が数百億回もソーシャルメディア上で再生されている

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2022/11/25
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ソーシャルメディアプラットフォームにおける動物虐待は目新しいものではないが、Facebook(フェイスブック)やYouTube(ユーチューブ)などのソーシャルメディアプラットフォーム上で、野生動物がペットとして過酷な環境で飼育されている動画が、この1年間で多数投稿されていることが、新たな報告書で明らかにされた。

Social Media Animal Cruelty Coalition(SMACC、ソーシャルメディア動物虐待防止連合)の報告書によれば、野生動物が虐待され、ペットとして飼われている様子を映した動画が、Facebook、YouTube、TikTok(ティックトック)、Instagram(インスタグラム)などのソーシャルメディア上で百億回以上も再生されているという。たとえば2021年9月から2022年9月の間に、マカクザル、トラ、ライオンなど絶滅の危機に瀕した野生動物が人間に肉体的・精神的に苦しめられる様子をとらえた動画は840本見つかり、その再生数は合計118億回に及んでいる。

この報告書は、Animals for Asia Coalition(アジア動物連合)やWorld Animal Protection(世界動物保護協会)を含む、世界的な13の動物保護団体の連合によって作成されたが、その中では人間が野生動物を「叩く、殴る、噛む、揺する、打ち倒す」といったやり方で肉体的にも精神的にも苦しめている不穏な映像が報告されている。映像の多くでは、こうした野生動物がペットとして飼われている様子を映しているが、それ自体が虐待であり傷つける行為だ。収集された動画のうち、約60%がFacebook、約25%がYouTubeで発見されている。動画を集めた50人のボランティアグループも当該動画をプラットフォームに報告したが、SMACCが2022年10月にデータを分析するまでに、削除された動画はなかった。

Meta(メタ、Facebookの親会社)の広報担当者であるジェン・ライディングスはこの報告書に対し、同社はコンテンツを検討し、違反するコンテンツには対策を講じると述べている。Metaの禁止する暴力的で生々しいコンテンツに関するポリシーには、動物に対する露骨な身体的危害や虐待も含まれている。しかし、コンテンツの監視をコミュニティからの報告、テクノロジー、および人間のレビュアーに依存している同社は、野生動物をペットとして表示するコンテンツに関するポリシーを持っていない。

TikTokは、野生動物の違法取引や動物虐待を助長するコンテンツを禁止する自社のコミュニティガイドラインを引用して反応している。またYouTubeのスポークスマンであるジャック・マロンは、YouTubeのポリシーは動物に故意に身体的危害を加えるようなコンテンツを禁止しているという。「フォーブスから提示された動画は当社のポリシーに違反していませんが、当社はコミュニティガイドラインに違反するコンテンツの削除に取り組んでいます」とマロンは電子メールで答えた。

それらの動画のうちの64%は、マカクザルの赤ちゃんやスローロリスなど、国際自然保護連合が定義する絶滅危惧種が登場する動画だった。

ソーシャルメディア大手の関心が低く、野生動物をペットとして所有することの有害な心理的影響についての教育が不足しているために、こうした動画は何十億回も共有され、ソーシャルメディア企業のアルゴリズムがその流通をさらに促進している。視聴者はこうしたコンテンツを「かわいい」と思いがちだが、こうした動画が他の視聴者に野生動物を(合法・非合法にかかわらず)購入し、ペットとして飼うことを促していることが調査で明らかになっている。

特に、SMACCの報告書では、ペットとしてのスローロリスの需要増加にソーシャルメディアが一役買っていることが判明している。報告書には国際動物救助協会(International Animal Rescue)のアラン・ナイト会長の言葉として「他の野生動物と同様、これらの絶滅の危機に瀕した霊長類は、家庭のペットとしての生活にはまったく適さないのです」との引用がなされている。「ロリスは売られる前に、爪切りやワイヤーカッターで歯を切り取られて、無防備にさせられるという苦痛を受けるのです」

研究者でありSMACCの主任コーディネーターであるニコラ・オブライエンは、意図的な身体的虐待や拷問はすぐにわかるが、野生動物をからかったり、怖がらせたり、人間のように着飾らせたりといった心理的虐待は、もっと微妙で気づかないことが多いのだという。たとえば、Facebookにアップされたある動画では、誰かがマカクザルをバルコニーにぶら下げている様子が映されていた。また他の動画では、ペットのマカクザルの子どもが何度も海に投げ込まれ、泳いで人間のもとに戻ってくる様子も描かれている。Facebookで2600万回再生されている人気動画では、飼い主に脅されて怖くて飛び跳ねるマカクザルの姿が映し出されている。

「一見ペットのトラにミルクを与えている愛情深い飼い主のように見えても、相手にしているのは、実はこれまでも、これからも苦しむ絶滅危惧種なのです」とオブライエンはいう。「これらの動物を入手することは、危険でしばしば違法な世界的取引を支え、動物福祉と絶滅危惧種の保護を脅かしているのです」

報告書によれば、野生動物は、ソーシャルメディアプラットフォームや、Snapchat(スナップチャット)やWhatsApp(ワッツアップ)などのエンド・ツー・エンドの暗号化通信プラットフォームで、しばしば広告され売買されているとのことだ。密売業者は、Facebookなどのソーシャルメディア上のプライベートグループを使って、野生動物を違法に販売している。財産・環境研究センター(Property and Environment Research Center)のキャサリン・セムサー研究員は「世界第4位の違法経済である野生動物不正売買は、ソーシャルメディアなどのデジタル空間へ早くから軸足を移していました」と語る。法執行機関の厳しい取り締まりやソーシャルメディアのガイドライン違反にもかかわらず、野生動物の不正売買はソーシャルメディアの光の当たらない片隅で行われ続けていると彼女はいう。

「これまでのところ、ソーシャルメディア企業と法執行機関の間に、野生動物の不正売買問題に取り組むための十分な関係が構築されているとは思えません」とセムサーはいう。

SNSでの動物虐待動画問題は、今に始まったことではない。SMACCは、ソーシャルメディアにおける動物虐待のさまざまな側面についての複数の報告書を発表している。その中には、動物たちを意図的に危険な状況に追い込んで、動画用に偽の救助を行う偽救助動画の傾向についての調査結果も含まれている。

SMACCによると、Metaは1年以上前から同NPOと協力しており、2022年6月には、ペットのマカクザルのように捕獲した霊長類を映し出したコンテンツにフラグを立て、モデレーターに偽の救出ビデオを識別するトレーニングを行う取り組みを開始したという。また、TikTokは2022年8月からSMACCと初期的な連携を開始している。

2021年10月、動物虐待に反対する非営利団体レディフリーシンカーの創設者であるニナ・ジャッケルは、動画に映る動物が搾取され、それを取り下げることなく利益を得ているとしてYouTubeを告訴した。2020年、にレディフリーシンカーが調査を行ったところ、動物に対する有害な行為を映した2000本ものYouTube動画が発見された。これらの動画は、そのほとんどがYouTubeのコミュニティガイドラインに違反しており、再生回数は10億回を超えていた。レディフリーシンカーは、これらの動画がYouTubeクリエイターに1500万ドル(約20億8000万円)、YouTube自体には1200万ドル(約16億6000万円)の利益をもたらしたと見積もっている。レディ・フリーシンカーがYouTubeにこの調査結果を連絡したところ、何の反応も得られなかったため、訴訟に至ったとジャッケルはいう。

ジャッケルはフォーブスに対して「捕獲した赤ちゃん猿を映しているなどの、フォロワーの多いYouTubeチャンネルを重点的に探し出し報告しています。そして、YouTubeはこれらの動画の冒頭で非常に頻繁に広告を再生していることがわかりました。このためYouTubeは間違いなくこれらの動画でお金を稼いでいる筈です」と語っている。

SMACCのオブライエンは、YouTubeやMetaなどのソーシャルメディア大手が、プラットフォーム上の動物虐待動画の大部分に責任を持ち始めて、野生動物対する露骨な身体的虐待だけでなく、より微妙で心理的な方法による有害な動画も取り下げるようになることを期待している。

「非常に辛く、苛立たしく感じるときもあります。動物虐待の動画が急速に増えている一方で、進歩は本当に遅いのです」と彼女は語る。

forbes.com 原文

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