癌と診断された44歳女性の「友人の励まし」がうるさいという悩みに、鴻上尚史が感動した理由

癌と診断された44歳女性の「友人の励まし」がうるさいという悩みに、鴻上尚史が感動した理由

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  • 更新日:2021/07/20
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鴻上尚史さん(撮影/写真部・小山幸佑)

癌と診断された自分への、友人の励ましがうるさいと悩む44歳女性。「悲壮感漂わせてほしいのかな?とさえ思う」と吐露する相談者に、鴻上尚史がまず伝えたこと。

【写真】白血病が奪った美貌と才能

【相談111】癌と診断されました。楽しく過ごしているのに、「強い気持ちを持って」などという友人の言葉がうるさいです(44歳 女性 大食いパンダ)

昨年、予後不良の癌と診断され、年明けから抗がん剤をして髪が全部抜け、仕事をしながら手術や放射線と治療が続いている状況の、2人の子持ちの母です。ですが、とにかく体力があり楽しい事が大好きな性格なので、カツラをかぶって子供を連れてお出掛けしまくっています。予後不良でも今は元気いっぱいなので、癌と判明する前と同じように楽しく過ごしています。「自分が死ぬわけがない」と思っているわけではなく、むしろ3年後には私はいない可能性が高いと思っているのですが、根っからの楽天家で家族全員がこんな感じです。

悩みというのは友人関係です。私の性格をあまり理解していない友達は、私が絶望して日々不安を抱えて過ごしていると考えるようで、「絶対治るから希望を捨てないで」「強い気持ちを持って」と、正直うるさいです。のんきに過ごしていると伝えても、強がっていると判断されます。悲壮感漂わせてほしいのかな?とさえ思えてきます。その友達はきっと「自分が癌なら、こういうふうに言われたい」と考えて励ましてくれているのでしょうし、実際私の考えは特殊なのかも知れません。

でもいつまでも元気でいられる保証もないので、もっと私自身を見て理解してほしいです。どのようにすれば私の気持ちが伝わるのでしょうか……?

【鴻上さんの答え】

大食いパンダさん。僕は大食いパンダさんの相談を読んで感動しました。もし、僕が癌だと宣告されたら、大食いパンダさんのように生きていけるんだろうかと考えました。

大食いパンダさんは、「根っからの楽天家」と書かれていますが、つまりは、「嘆いてもしょうがないことと、嘆く意味があることを区別しよう」と思っているんじゃないかと感じます。

僕は自分のことを「ぶさいく村出身」と言っていますが、嘆いてはいません。容姿とか身長とかは、「嘆いてもしょうがないこと」だと僕は思っています。

例えば、身長が低い男性でも、そのことをいつも嘆いている人と一言も口にしない人がいます。

会って酒を飲むたびに、「どうせ自分は背が低いから」と言い、「もてなかった」とか「もてるはずがない」と繰り返す人と、背については自分からは何も言わず、自分の好きな映画や本、テレビの話をたくさんする人がいます。

どちらの人の方が、周りに人が集まり、一緒に飲みたいと思うかは明らかだろうと思います。

でも、酒の席で「パートナーとの関係がうまくいかない」と思わず言ってしまうのは、「嘆く意味のあること」だと僕は思っています。

「じつはこんなことがあって」とか「こんなことを言われて」とか嘆くと、周りが「それはこういうことなんじゃないの?」とか「こういうふうにすればいいんじゃないの」といろいろと言ってくれます。

それは、未来を変える可能性のある言葉です。

「どうにもならない過去」ではなく、「これからの未来」に向けた言葉だと思います。

大食いパンダさんが、「予後不良の癌」になっても、前向きの生活を続けられるのは、「嘆いてもしょうがない」ことは嘆かないと思っているからじゃないかと思います。

「どうして癌になってしまったのか」――これは嘆いてもしょうがないことだと思います。

このことを嘆かないのは、大食いパンダさんが「楽しい事が大好きな性格」だからでしょう。「嘆いてもしょうがないこと」を嘆くと、マイナスの気持ちにしかなりません。嘆いても嘆いても、何も変わりませんから、残るのはネガティブな気持ちだけです。

そんな気持ちになるぐらいなら、「嘆く意味があること」を嘆こう。「嘆く意味のあること」を嘆くことは、前向きの生活をするということです。

そんな大食いパンダさんに、思わず、「絶対治るから希望を捨てないで」「強い気持ちを持って」と声をかけてくれる友達は「嘆いてもしょうがないことを嘆いてしまう人」じゃないかと思います。

こういう人には、「嘆いてもしょうがない」という発想はないでしょう。「嘆くことは嘆くこと」という発想です。嘆くことを嘆くのは当然のことなんだ、ということです。

大食いパンダさんは、「その友達はきっと『自分が癌なら、こういうふうに言われたい』と考えて励ましてくれている」と書かれていますが、僕はそうは思いません。

ただ友人達は、「嘆くことは嘆くこと」と思って口にしているだけのような気がします。こういうタイプの人達は、根が優しくて良い人ですが、「心配してもしょうがないことを心配する人」でもあります。「心配することは心配して当然のこと」だからです。

さて、大食いパンダさん。

ということで、僕はこういう友達は、どんな言い方をしても「嘆くことを嘆くことが人間として当然のこと」「心配することを心配するのは当然のこと」という発想をしてしまうんじゃないかと思います。

大食いパンダさんがどんなに陽気に事情を説明しても「無理をしている」「心配かけないように嘘をついている」と考えるんじゃないかと思うのです。

なのでね、一番いい方法は、この「ほがらか人生相談」の回答を読んでもらうことじゃないかと思います。

この回答を見せながら「ほら。世の中には私と同じ考え方をしている人がいる。私も、この人と全く同じ考え方なの」と言えば、「わざわざ、この回答を見つけ出して、私に見せるということは、ひょっとしたら、本当にこの人と同じ気持ちなのかしら」と思ってもらえる可能性があるということです。

それでも、まったく信用しないで「いいえ。無理している。希望を捨てないで」と言われたら、こういう友人の言葉は「嘆いてもしょうがないこと」と割り切って、前向きに楽しいことを探していくことをお勧めします。

最後にもう一度言わせて下さい。大食いパンダさんの相談、本当に感動しました。

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