流しのサックスで活気を コロナで客離れのライブハウス主人の挑戦

流しのサックスで活気を コロナで客離れのライブハウス主人の挑戦

  • 毎日新聞
  • 更新日:2022/06/23
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飲食店を訪れてサックスを演奏する「紺屋虫」の田部俊彦さん(左)と江崎しおりさん=北九州市小倉北区で2022年6月13日午後7時18分、宮城裕也撮影

新型コロナウイルス禍で人通りが少なくなった北九州市の繁華街に、軽妙なサックスの音色が響くようになった。サックスデュエット「紺屋(こんや)虫(むし)」が5月末から始めた、飲食店を訪ねて演奏する「流し」の投げ銭ライブだ。これまでに小倉北区紺屋町を中心に10店ほどでジャズナンバーや映画音楽などを幅広く演奏し、客足が減った町を盛り上げている。

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日が暮れかかった6月中旬の午後7時過ぎ、紺屋町にある居酒屋「ねこや」に、「聖者の行進」のメロディーとともにサングラス姿の男女2人がサックスを吹きながら登場した。「紺屋虫」の田部俊彦さん(67)と江崎しおりさん(32)だ。

甘いムードを漂わせた「ムーン・リバー」のアンサンブルに、酔客たちの飲み口が進む。ジャズの定番「A列車で行こう」では、手拍子や肩を揺らして楽しむ人たちも。約1時間で10曲あまりを披露すると、投げ銭を入れる紙コップに1万円札を含む紙幣が次々と集まった。演奏と酒両方に酔う客の注文を取っていた店主の鈴木千賀さんは「コロナ禍で大変な時期もあったが、お客さんも喜んでくれてありがたい」と喜んだ。

田部さんは小倉北区を拠点に音楽活動を続けてきた。1989年にオープンしたライブハウス「ビッグバンド」(紺屋町)のオーナーとして、大編成バンドや、育成を含めたジャズ奏者の音楽活動を支えてきた。93年には世界的アーティスト、スティービー・ワンダーさんとの共演も果たすなど、奏者としても市内外のライブで活躍した。

だが新型コロナの感染拡大後、他都市のライブハウスでクラスター(感染者集団)が発生したことで、ライブハウス営業に世間の批判が起き、思うように音楽活動をできなくなった。田部さんの店も緊急事態宣言などで休業要請が出るたび休業した。周辺の飲食店も同じ状況に置かれる中で、町の人通りも、ジャズの愛好者も、コロナ禍以前からさらに少なくなったと感じていた。

「1年も続くまいと思っていたコロナ禍が2年以上続き、感染が落ち着いても客は戻ってこない。客寄せパンダになって演奏でお客さんが集まって活性化できたら」。そんな思いから、ライブハウス従業員で田部さんのジャズバンドのメンバーでもある江崎さんと「紺屋虫」を結成。旧知の店に声をかけると20店が快諾し、5月末から流しの投げ銭ライブを始めた。

ビッグバンドが休みの月~水曜に実施する投げ銭ライブは、クラブや小料理屋など、一見ジャズとは無関係に見える場所でも演奏する。江崎さんは「クラブで演奏した時は、若い世代が『普段はレコードからの音なので、生演奏を聞けて良かった』と楽しんでもらえた」と、ジャズファンの裾野が広がっていくことに手応えを感じている。

小倉北区のなじみの店での演奏が中心だが、演奏を気に入った遠方の客からも演奏を依頼されるようになった。「今年いっぱいは頑張ってジャズファンも店の客も増やしたい。負担のかからない範囲で最終的には北九州全域で演奏しまくるよ」と田部さん。音楽にも町にも新しい息吹を吹き込んでいる。【宮城裕也】

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