中国への警戒心をあらわにする米国

中国への警戒心をあらわにする米国

  • WEDGE
  • 更新日:2018/06/14
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5月30日、ホノルルの米軍基地では、米太平洋軍の司令官交代式がとり行われた。日本からは小野寺防衛大臣が式典に参加した。交代式では、マティス国防長官がスピーチを行なった。その内容の主要点を紹介する。

(iStock.com/AntAntarctic/GlobalP/Aquir)

・米太平洋軍は、地球の半分以上の面積を占める広い地域を管轄し、人口も多種多様で、ハリス提督の言葉を借りれば、ハリウッドからボリウッドまで、北極熊からペンギンまでをカバーする。

・太平洋岸に面した米国の5つの州のうちの1つであるワシントン州で育った私(マティス)は、昨日、このハワイに来る飛行機の窓から広い太平洋を眺め、アメリカ合衆国は、現在も、そして2世紀の間ずっと太平洋国家であったことを再認識した。

・米国の国家防衛戦略は、米軍のロード・マップであり、世界がどうあってほしいかではなく、世界がどうなっているかをありのままに直視し、現実を認めるものである。我々の2018年の国家防衛戦略は、この10年で初めてまさにそういうものになっている。それは、太平洋における諸問題を認め、米国のインド太平洋における継続的かつ確固たる関与を記している。

・米国のヴィジョンは、地域のほとんどの諸国に共有されている。全ての国家は、その大きさに関わらず、主権が尊重される。インド太平洋地域は、投資及び自由で公正で相互主義の貿易に開かれている。この地域は「多帯多路」を有しており、いかなる国家の略奪的経済や威圧の脅威に縛られることがあってはならない。

・米国は、引き続き、インド太平洋の安定に積極的に投資する。自由かつ開かれた、ルールに基づく国際秩序を強化し、この地域が成長し、70年以上繁栄することを可能とする。

・米国の国家防衛戦略は、対立の戦略ではなく、それは理想主義、実利主義そして協力のバランスを取ったものである。我々は、我々の国際的利益と同盟諸国・パートナー諸国の利益及び安定に合致するならば、競争相手とも協力と開かれた対話の機会を求め続ける。

・我々は常に平和を強い立場から追求する。我々は既存の同盟を強化し、域内の新たなパートナーを増やして行く。そのために、我々の戦略的ヴィジョンの礎石を打ち立てる。全ての国家の主権を尊重するという共有されたヴィジョンであり、テロ、自由貿易の阻害、災害等共通の脅威と闘うことを可能とする強固な安全保障体制を作って行く。

・インド太平洋地域の安定を維持する上で、この地域の同盟諸国、パートナー諸国との関係は、不可欠のものである。我々(米国)はパートナー諸国の側に立ち、彼らの国家主権の決定を支持する。何故なら、世界的平和に不可欠な海洋の安定を維持するには、大小全ての国家が存在することが地域にとって重要であるからだ。

・今日、インド洋と太平洋の連結性が高まっていることを認識し、我々は、米太平洋軍を米インド太平洋軍と改名する。何十年もの間、この太平洋軍は変化する状況に繰り返し適応させてきた。そして今日、このレガシーをもって、米国は西に焦点をあてる。

・ハリス提督は2015年にここで舵を取ってから、しばしば海洋の波の流れが変わる中でも、しっかりと船を進めてきた。提督は、卓越した洞察力をもって我が国(米国)が必要なことを予見し、国際法に基づき、お互いが協力する精神を共有する諸国と共通の目標を立てた。

・提督は、国家間の信頼醸成の重要な要素である外交官たちを支援しながら、我々の統合軍を準備が整った、能力もあり、決死の覚悟もあるものにしてくれた。適切に設定した目標を掲げてパートナーシップを追求した提督の積極的な努力により、この重要な地域における我々の信用性と能力は確かなものとなった。

・提督は、また、米国にとって、どんな関係も当たり前のものではないことを示してくれた。休むことなく多国間関係を向上させるために努力し、緊急テロ対抗措置でパートナー諸国と連携し、対処してくれた。

・同時に、提督は、北朝鮮に対する国連安保理の制裁を維持するために統合パトロールを実施した。また、提督は、公海は全ての国家に開かれていなければならないことを示すために、航行の自由作戦を指揮した。このような行動の成功は、ハリス提督が国際法の役割を認めたことと提督の戦略的ヴィジョンによるものである。

・今、デイヴィッドソン提督が舵を握り、国家防錆戦略の3つの柱を担うことに私(マティス)は信頼を置いている。インド太平洋軍の決死の覚悟を高め、ハリス提督が発展させた同盟諸国やパートナー諸国との関係の上に、さらに安定と国際法遵守を強化する信頼の絆を固くし、同時に、インド太平洋軍内の行動を改善して行くことである。

・デイヴィッドソン提督は、司令官承認の公聴会で、インド太平洋軍が史上最も強固で闘える軍隊となるよう全力であたることを約束してくれた。今日、米国及び広いインド太平洋地域の国々は、あなた(デイヴィッドソン司令官)を頼りにしている。

出典:Secretary of Defense James N. Mattis ‘Remarks at U.S. Indo-Pacific Command Change of Command Ceremony’ May 30, 2018

マティス国防長官の演説は、ハリー・ハリス太平洋軍前司令官に対し賛辞を送り、フィリップ・デイヴィッドソン新インド太平洋軍司令官を歓迎し鼓舞したものである。

同盟諸国(allies)、パートナー諸国(partners)、諸国(countries)という言葉は多々使用されているが、国の固有名詞が出てきたのは北朝鮮のみである。しかし、演説内容から、明らかに中国に対して警告を発していることが分かる。特に、中国が掲げる「一帯一路」構想に対して、多帯多路(many belts and many roads)という言葉を使用していることからも、それは明白である。

大小かかわらず国家主権が重要と言っているのも、大国を自負する中国に対して、インド太平洋地域の他の様々な中小諸国を仲間として、同盟国ないし友好国として受け入れる用意があることを示している。この内容は、5月2日にターンブル豪首相とマクロン仏大統領が、「大魚が小魚や小エビを食べてしまってはいけない」と言っていた比喩とも重なる。

太平洋軍がインド太平洋軍と改名した5月30日の翌日、5月31日、この改名を象徴するかのように、米海軍は、インド海軍及び海上自衛隊とともに日米印の3か国共同軍事演習「マラバール2018」をグアム沖で行った。

なお、デイヴィッドソン新司令官の政策等に関しては、上院で行われた指名承認のための公聴会が参考になる。本ウェッジのサイト上の岡崎研究所の記事でも扱っているので、参照されたい。(5月7日掲載5月8日掲載、及び5月15日掲載。)

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